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イラン介入は“大歓迎”か?イスラエルが欲しい「核施設攻撃」の口実

10月7日のハマスによるイスラエルへの大規模攻撃をきっかけに、激しい混乱が続くパレスチナのガザ地区。14日にはハマスを支持するイランが「参戦」を示唆しましたが、イスラエルはこれをどう受け止めているのでしょうか。今回のメルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では、国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、イスラエルにとってイランの参戦は「望むところなのか否か」を考察。さらにこの紛争が、第3次世界大戦勃発のトリガーになりうる理由を解説しています。

【関連】次は“イランの核施設”か。シリアの空港を空爆したイスラエルが狙う「真の標的」

イランの戦争介入は「望むところ」か。核施設攻撃の口実が欲しいイスラエル

全世界のRPE読者の皆さま、こんにちは!北野です。

皆さんご存知のように、ガザ地区を支配するイスラム組織ハマスは10月7日、イスラエルに大規模攻撃をしかけました。そして、イスラエルは今、地上作戦の準備を進めています。ハマスを壊滅させることを決意しているのでしょう。

ところで、「案の定」というか、イランが介入する可能性に言及し始めました。『テレ朝ニュース』10月15日付。

イスラエルとハマスの衝突を巡り、イランがイスラエルに対し「ガザでの攻撃が続けば介入せざるを得ない」と警告したとアメリカメディアが報じました。

 

アメリカのニュースサイト、アクシオスによりますと、イランのアブドラヒアン外相が国連の中東和平特使ウェンズランド氏と14日、レバノンのベイルートで会談しました。

 

アブドラヒアン外相は、戦火の拡大は望まないとする一方で、「イランにはレッドラインがある」「イスラエルがガザへの地上侵攻を実行に移せば対応せざるを得ない」と介入を示唆したということです。

これ、メルマガ読者さんは、驚かなかったでしょう。

そして、イスラエルにとって、イランの介入は「望むところ」なのでしょう。なぜでしょうか?

「毎度」という感じで申し訳ないですが、これまでの経緯に触れておきます。

『時事』2023年3月5日。

イランを訪問した国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は4日、ウィーンの空港で記者会見し、イラン中部フォルドゥの核施設で核兵器級に近い濃縮度83.7%のウラン粒子が検出された問題について「その水準の濃縮ウランは蓄積されていない」と述べた。

これは、「イランが核兵器保有後一歩のところまできているからではないか?」と推測できる。

何としてでも「先制攻撃」は避けたいイスラエル

『日経新聞』9月17日付。

国際原子力機関(IAEA)は16日の声明で、イランからIAEAの一部査察官の受け入れを拒否すると通告があったことを明らかにした。査察官はウラン濃縮などを検証している。グロッシ事務局長は「強く非難する」と述べ、査察に深刻な影響が出るとして再考を求めた。国際社会の懸念が一層強まるのは必至だ。

『朝日新聞DIGITAL』2023年10月9日付。

米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は8日、イスラム組織ハマスがイスラエルにしかけた大規模な攻撃はイランの関係者が準備段階から協力し、最終的なゴーサインを出したと報じた。ハマスと、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの幹部の話として伝えた。

WSJによると、イラン革命防衛隊のメンバーは8月から、パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するハマスと、イスラエルに向けた陸海空の侵攻について協議した。レバノンの首都ベイルートで革命防衛隊やハマス、ヒズボラらのメンバーによる会議が重ねられ、攻撃の詳細が計画されたという。最終決定の会合は2日にあったとしている。

これが今回の戦争に関する私の見解です。

この読みが事実だとすれば、イスラエルは、イランの核施設を攻撃し、イランの核兵器保有を止めようとするでしょう。

しかし、イスラエルがイランの核施設を攻撃するためには「口実」が必要です。「真珠湾攻撃」「ロシアのウクライナ侵攻」「今回のハマスによるイスラエル攻撃」などなどを見てもわかるように、「先制攻撃は評判が悪い」のです。

だからできれば、「イランがイスラエルを先に攻撃したので、イスラエルはやむを得ずイランを攻撃した」という形にしたいでしょう。

第3次大戦勃発か否かの歴史的瀬戸際に立たされている人類

イスラエルの同盟国アメリカの立場はどうでしょうか?

ウクライナとイスラエル、「二正面作戦」を強いられるアメリカは、イスラエル、イラン戦争を望まないでしょう。しかし、北朝鮮の失敗例もあるため、イランの核兵器保有を見逃すわけにもいかない。だから、アメリカは、まずイランと交渉します。

しかし、イランは、「アメリカと核合意を結んでも、トランプが戻ってきたらまた破棄されるかもしれない」と懸念を表明することでしょう。

どういう決断が下されるかは、アメリカ政府とイラン政府高官の判断によりますが。

といった事態も大いにあり得ます。

そして、以前の記事にも書きましたが、ウクライナ戦争、中東戦争が、習近平に影響を与える可能性がある。「ロシア、イランと戦うアメリカに、台湾を守る余裕はないだろう。今が台湾侵攻のチャンスなのではないか???」と。さらに金正恩も、「韓国を併合するチャンスなのではないか?」と考えるかもしれない。

というわけで、私たちは今、「第3次大戦勃発か否か?」の歴史的瀬戸際に立っているのです。大げさではなく。

(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』2023年10月16日号より一部抜粋)

image by: Anas-Mohammed / Shutterstock.com

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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