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A woman in mourning clothes staring at a calculator and passbook.

年金受給中の自分の配偶者が亡くなった時、私はいくら貰えるの?

自分が亡くなった時の「遺族への年金受給の金額」と同様に興味を持たれているのが、「配偶者が亡くなった場合の年金受給額」です。今回は人気メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』の著者で年金アドバイザーのhirokiさんが、年金受給をしている人が死亡した場合、どのくらい遺族年金が受け取れるのかについて詳しく解説しています。

年金受給者の死亡時はどのくらい遺族年金が受給できるのか

遺族年金受給者の人はどの年代も受給する可能性のある年金ですが、相対的に高齢者の人が受給するケースが多く目にします。

高齢になると亡くなられる場合も増えてくるので当然ではありますが、特に受給者は女性の方が圧倒的に多いです。

もちろん男性でも遺族年金の受給者になれるのですが、やはり女性の方が長生きするパターンが一般的だからですね。

それに年齢も妻の方が年下であったりしますからね。

なので遺族年金は女性が受給してるものというイメージがあります。

まあ、遺族年金は男性が受給するにはちょっと女性より厳しいという面があるのも原因ではありますが…^^;

さて、60代以上になると自分がこれからどのくらい老齢の年金を貰えるのかという事に関心が強くなりますが、それと同時に関心を持たれるのが「もし配偶者が亡くなった場合はどのくらいの遺族年金が受け取れるのか」という点です。

はやり遺族年金も重要な老後資金としての役割があるので、ある程度把握しておた方がいいです。

よって今回は、老齢の年金を受給中の人が亡くなった場合の遺族年金について考えていきたいと思います。高齢の人が受給する遺族年金はほとんどが遺族厚生年金なので、亡くなった方の厚生年金記録でその金額は人それぞれバラバラになります。

なお、遺族厚生年金は亡くなった人の年金の4分の3が貰えると言われますが、どこの4分の3なのか?というのを間違うと後で言われてたのと違う!という事にもなりかねないので、その辺も注意しましょう。

1.年金受給者の死亡

◯昭和19年5月17日生まれのA男さん(令和6年に80歳になる人)

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20歳になる昭和39年5月から昭和42年8月までの40ヶ月間は国民年金保険料は全額免除としました(老齢基礎年金の3分の1に反映)。

昭和42年9月から昭和63年10月までの254ヶ月間は厚生年金に加入して働きました。この間の平均給与(平均標準報酬月額。賞与は含まない)は50万円とします。

昭和63年11月から平成8年3月までの89ヶ月間は海外に居住したため国民年金には強制加入とはならずに任意加入となりました。任意加入しなかったため、89ヶ月はカラ期間として受給資格期間には組み込みますが年金額には反映しません。

帰国して平成8年4月から60歳前月の平成16年4月までの97ヶ月間は国民年金保険料を未納。

A男さんの年齢であれば60歳から老齢厚生年金が受給できる人ですが、まず60歳時点で年金受給資格があるかを確認しましょう。

※A男さんの平成16年5月16日時点の年金記録。

・厚年期間→254ヶ月(20歳から60歳までの間の期間は老齢基礎年金に反映)

・国民年金全額免除(平成21年3月までの期間は将来の老齢基礎年金の3分の1)→40ヶ月

・未納期間→97ヶ月

・カラ期間→89ヶ月

よって全体の年金記録は254ヶ月+40ヶ月+89ヶ月=383ヶ月となり、300ヶ月以上(平成29年8月1日以降は120ヶ月以上)を満たすのでこの当時A男さんは受給資格がありました。

厚生年金受給開始年齢(日本年金機構)

ちなみに300ヶ月以上なくても、厚年(共済期間合わせてもいい)期間のみで240ヶ月以上あるのでそれでも満たしています(昭和27年4月1日以前生まれの人の場合の被用者年金短縮特例という。昭和31年4月2日以降生まれの人は原則300ヶ月必要。今は120ヶ月で貰えます)。

そのため、A男さんは60歳から老齢厚生年金を受給し、65歳になると老齢厚生年金と老齢基礎年金を受給していました。

65歳前は省略して、65歳から現在まで受給してる年金を計算してみます。

・老齢厚生年金(報酬比例部分)→50万円×7.334(生年月日による乗率)÷1000×254ヶ月=931,418円

・老齢厚生年金(差額加算)→1,652円(68歳以上の人の定額単価)×1.065(生年月日による乗率)×254ヶ月ー792,600円÷480ヶ月×254ヶ月=446,883円ー419,418円=27,465円

・老齢基礎年金→792,600円÷480ヶ月×(厚年254ヶ月+全額免除40ヶ月÷3)=792,600円÷480ヶ月×267.333ヶ月(小数点3位まで)=441,433円.6162円≒441,434円(1円未満四捨五入。他の年金も同じ端数処理)

なお、A男さんには昭和35年10月6日生まれ63歳の妻B子さん(年収100万円)が居ましたので、配偶者加給年金397,500円も付いていました(妻が65歳になるまで)。子は3人いましたが全員成人し独立。

よって、A男さんの令和5年12月現在の年金総額は老齢厚生年金(報酬比例部分931,418円+差額加算27,465円)+加給年金397,500円+老齢基礎年金441,434円=1,797,817円(月額149,818円)

2.遺族厚生年金は死亡者の厚年期間が240ヶ月あるかどうかで大きく変わる。

さて、A男さんは令和6年2月11日に病気により死亡したとします。

この時に妻B子さんにはいくらの遺族厚生年金が支給されるでしょうか。ちなみに遺族厚生年金は配偶者、子、父母、祖父母の順で最優先順位者が請求して受給します。

上の順位者が死亡者と生計維持関係がなかった場合は下の順位者が受給者となる事もあります。

B子さんの生年月日により62歳(令和4年10月5日受給権発生)からB子さん自身の老齢厚生年金年額30万円を受給していたとします。

まず、死亡時点で生計維持されていたかどうかを見ますが、生計維持というのは遺族厚生年金を請求しようとするB子さんの前年収入が850万円未満(または所得が655.5万円未満)を満たし、住民票が一緒のような場合をいいます。

別居でも合理的理由のある場合は大丈夫です。

条件を満たしているので、B子さんはA男さんの254ヶ月分の老齢厚生年金(報酬比例部分)931,418円の4分の3である698,564円となります(単純計算ではありますが…)。

あと、A男さんは厚生年金全体で240ヶ月以上あり、A男さん死亡時に妻が40歳以上65歳未満の場合は遺族厚生年金に中高齢寡婦加算596,300円(令和5年度価額)も加算されます。

よって、A男さん死亡時である令和6年2月11日受給権発生でその翌月分から遺族厚生年金698,564円+中高齢寡婦加算596,300円=1,294,864円(月額107,905円)を受給します。

この時にB子さんは62歳から自身の老齢厚生年金30万円を受給していましたので、遺族厚生年金総額1,294,864円との選択となります。

両方は貰えないので有利なほうを選択となります。

※注意
今回はA男さんの厚年期間が240ヶ月以上あったので中高齢寡婦加算が加算されて、大きく遺族年金額が増えましたが240ヶ月無い場合は中高齢寡婦加算は原則として加算されません。

また、遺族厚生年金計算の時に、よく300ヶ月なければ300ヶ月で計算するという事がありますが、それは主に厚生年金加入中の死亡の時の計算です。

年金受給者の死亡の場合は実期間で計算します(年金受給者でも厚年加入中の死亡等の時は300ヶ月で計算する事もあります)。

なお、全体で300ヶ月以上ない人(もしくは短縮特例などもない)が死亡した場合は遺族厚生年金は支給されません。平成29年8月1日から始まった300ヶ月を120ヶ月に短縮した老齢年金受給者の死亡では遺族厚生年金は支給されません。

3.死亡者が受給できなかった年金を貰う。

遺族年金を受給する事になりましたが、まだ受給するものがあります。

それはA男さんが貰えなかった年金である未支給年金です。

死亡は令和6年2月11日ですが、年金は死亡した月分まで年金が貰えます。

しかしながら2月分というのは次の支払い定期である4月15日に支払われるものなので、A男さんは受給せずに死亡されてます。

さらに、2月11日死亡なので2月15日に受け取るはずだった12月分と1月分も受給できてません(口座が凍結などしてないならA男さんの口座にそのまま入ってしまいます)。

死亡後の年金はすべて未支給年金となり、一定の遺族が請求してその遺族が受け取ります。

なお、2月15日にA男さんの口座に入ってる場合はそのまま請求しなくても良さそうですが、5年以内に未支給年金請求しないなら日本年金機構に返還しないといけません。

未支給年金は死亡月までにA男さんが受け取れなかった年金なので、3ヶ月分である149,818円×3=449,454円が未支給年金となります。

12月分と1月分の計299,636円はすでにA男さんの口座に入ってるなら、残り149,818円がB子さんの口座に振り込まれます。

なお、未支給年金は一時所得になるので50万円を超えると確定申告が必要な場合があるので税務署などに確認しましょう。

4.65歳からのB子さんの年金。

最後に65歳からのB子さんの年金総額ですが、B子さんは65歳から老齢厚生年金30万円(うち1万円が差額加算)と国民年金から老齢基礎年金50万円が受給できるものとします。

65歳になると中高齢寡婦加算596,300円が消滅し、遺族厚生年金は698,564円のみとなります。

中高齢寡婦加算は妻が65歳になって妻自身の老齢基礎年金を受給するまでの繋ぎの年金です。

老齢基礎年金が50万円なので中高齢寡婦加算596,300円より低いので、年金総額が下がってしまう事もあります。

さて、65歳からは遺族厚生年金が698,564円になりましたが、B子さん自身の老齢厚生年金を優先して受給します。老齢厚生年金を超えた差額分を遺族厚生年金として支給します。

つまり、698,564円ー妻の老齢厚生年金30万円=398,564円が遺族厚生年金となります。


また、65歳以上の配偶者が受給する遺族厚生年金の計算にはもう一つあって、遺族厚生年金の3分の2+配偶者自身の老齢厚生年金の2分の1を遺族厚生年金として支給する場合もあります。

この計算でやると、698,564円×3分の2+30万円(差額加算含む)×2分の1=615,709円となります。という事は先に計算した698,564円の方で貰ったほうがお得ですので、それを遺族厚生年金とします。

よって、65歳以降のB子さんの年金総額は、遺族厚生年金398,564円+老齢厚生年金30万+老齢基礎年金50万円=1,198,564円(月額99,880円)

他に、住民税非課税世帯で前年所得+年金収入(遺族年金や障害年金は除く)が878,900円以下の人にはいくらかの年金生活者支援給付金が支給される場合がありますが今回は計算を割愛します。

※追記
中高齢寡婦加算の額は596,300円ですが、この金額は老齢基礎年金額795,000円(67歳までの人)の4分の3の額になってます。

老齢基礎年金に使う国民年金被保険者期間が480ヶ月の4分の3である360ヶ月(端数の関係で361ヶ月以上必要)に満たない場合は、65歳前よりも年金総額が低くなる場合があります。

それでは今日はこの辺で!

image by: Shutterstock.com

年金アドバイザーhirokiこの著者の記事一覧

佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
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【著者】 年金アドバイザーhiroki 【発行周期】 不定期配信

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