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自民パー券疑惑で急浮上した「日本青年会議所」の深い闇。なぜ“元会頭”の池田代議士が逮捕されたのか?

自民党のパー券裏金疑惑を巡る初の逮捕者となった、池田佳隆元文部科学副大臣。安倍派の中堅議員に過ぎない彼は、なぜ販売ノルマをはるかに上回るパー券を売りさばくことが可能だったのでしょうか。今回のメルマガ『ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)』では著者の伊東さんがその理由を、池田氏が日本青年会議所の会頭を務めていた過去に注目し解説。さらに2021年公開のドキュメンタリー映画に、「自民党パー券の闇」が映し出されていた事実を取り上げています。

日本青年会議所の存在。パー券裏金問題で逮捕された池田佳隆議員のバック

自民党安倍派(清和政策研究会)の政治資金パーティーにおける一連の問題で、東京地検特捜部は7日、政治資金規正法違反の疑いで衆院議員池田佳隆容疑者(57)=比例東海=と政策秘書の柿沼和宏容疑者(45)を逮捕した。

一連の裏金疑惑の問題で、逮捕者が出るのは初めて。

池田・柿沼両容疑者の逮捕容疑は、共謀により2018年~22年、派閥から計4,826万円の還流を受けたのに、その額を除いた虚偽の収入を池田氏の資金管理団体である「池田黎明会」の政治資金収支報告書に記入した疑い。

安倍派の裏金は5年間で6億円近くに上っていた可能性があるが、所属議員99人の中でとくに池田容疑者側は高額だった(*1)。また、特捜部は逮捕の理由を、

「具体的な罪証隠滅の恐れが大きいと判断した」(*2)

と説明する。

関係者によると、捜索の押収物の解析の過程で、池田氏の事務所がデータや資料を故意に破壊、破棄するなどした疑いが浮上。

さらに証拠隠滅の行為には池田氏の指示があり、捜索後もそれが継続しているのではないかと特捜部は判断(*3)、逮捕に踏み切った。

直近5年で9人もが逮捕。カネにだらしない自民党

岸田文雄政権発足から2年あまりで、自民党に所属した議員の逮捕や起訴は4人目。直近の5年間では9人目にのぼる。

最近逮捕や起訴された自民党議員(いずれも起訴が表面化した時点では党所属)(*4)

  • 2019年 秋元司元内閣副大臣 IR事業汚職事件で逮捕
  • 20年  河井克行元法相、河井案里元参院議員 19年参院選の買収事件で逮捕
  • 21年  吉川貫盛元農相  鶏卵汚職事件で在宅起訴
        菅原一秀元経済産業相 地元有権者に香典などを提供し略式起訴
  • 22年  薗浦健太郎元外務副大臣 政治資金パーティーの収入を過小記載し略式起訴
  • 23年  秋本真利元外務政務官  洋上風力発電事業をめぐる汚職事件で逮捕
         柿沢末途前法務副大臣  東京・江東区長選の買収事件で逮捕
  • 24年  池田佳隆元文部科学副大臣 安倍派の政治資金パーティーをめぐる事件で逮捕

NPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長は西日本新聞の取材に対し、

「政治とカネ」の問題が何度も取り沙汰されているにもかかわらず、政治資金規正法には多くの抜け穴が残されているのが現状だ。裏金をつくるために政治資金収支報告書に虚偽の記入があっても有権者は知ることができない。投票行動にもつながる情報が隠されていたとするなら、背信行為で重大な問題だ(*5)

と話す。

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池田議員がノルマを上回るパー券を売りさばけた訳

池田氏は、父親から受け継いだ化学薬品会社の社長を務めたのち、2006年には若手の企業経営者らでつくる日本青年会議所(日本JC)の会頭に就任。さらに当時官房長官であった安倍晋三氏と知り合い、政治家を志す。

12年の衆院選に愛知3区(名古屋市昭和区、緑区、天白区)で初当選。

「安倍先生を慕い尊崇の念をいだき、先生から『政治家になれ!』と檄をいただいた」(*6)

と振り返る。ただし、地盤は強いとはいえず、14、17、21年の選挙はいずれも比例復活による当選。

安倍氏を師とし、安倍派の萩生田光一・前党政調会長を「兄貴」を慕い、ともに文教畑を歩む。

とくに、前川喜平・元文部科学事務次官が18年に名古屋市立中学で行った講演内容を文科省が調査していた問題では、池田氏が市教委あての質問内容を“点検”していたことが発覚。

「政治による教育介入」(*7)

との批判を受けた。

池田氏の特徴はJC人脈をフル活用した集金力。秘書らが人脈を駆使し、企業や団体にパーティー券を広く販売。結果的に、当選回数に応じた販売ノルマをはるかに上回る売り上げとなった(*8)。

ドキュメンタリー映画で発覚していた初代デジタル相のパー券裏金疑惑

一方、政治資金パーティーの闇については、3年前にその発端が現れていた。それは、ドキュメンタリー映画『香川1区』(21年)に登場する、初代デジタル大臣・平井卓也氏の政治資金パーティーに関する場面。

その中で、「とある告発者」からの情報として、2万円×10人分のパーティー券の購入依頼で、パーティーに出席するのは3名までで、本来なら残り7名分は寄付になるという場面が流された。

一方、ジャーナリストの津田大介氏はX(旧Twitter)で、

「自民党の裏金問題、間違いなく今後炎上延焼必至なんだけど、大島新監督のドキュメンタリー映画『香川1区』で描かれた自民党の金ぐるみ選挙戦のパーフェクトな『答え合わせ』という感が強い」(12月2日)

とポストしていた。

「香川1区」の監督である大島新監督は、FRIDAYデジタルの取材に対し、

「ある意味、すごい調査報道だと言ってくださった方もいました。私自身は調査報道の専門家ではないので、どこか共同戦線を張ってもらえないかと思って声をかけたりしたんですが、やっぱり事例が1つだということと、大した額じゃない(20万円のうちの7枚分=14万円)話なので、報道する価値をあんまり感じてもらえなかったのかな、と」(*9)

とした。

引用・参考文献

(*1)「安倍派 池田議員を逮捕」西日本新聞 2024年1月8日付朝刊 1項

(*2)西日本新聞 2024年1月8日

(*3)植松敬・横山輝「データ破壊か 逮捕へ急転」朝日新聞 2024年1月8日付朝刊 3項

(*4)西日本新聞 2024年1月8日付朝刊 2項

(*5)「政治不信払拭、政界全体で」西日本新聞 2024年1月8日付朝刊、 2項

(*6)寺沢知海・村上友里・根津弥「集金 安倍氏との関係強調」朝日新聞 2024年1月8日付朝刊 28項

(*7)寺沢知海・村上友里・根津弥 2024年1月8日

(*8)寺沢知海・村上友里・根津弥、 2024年1月8日

(:9)FRIDAY DAGITAL「裏金は『文化』!? 政治資金パーティー『裏金問題』を2年前に暴いていた…大島新監督は今何を思うか」Yahoo!ニュース、2024年1月6日

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伊東 森(いとう・しん): ジャーナリスト。物書き歴11年。精神疾患歴23年。「新しい社会をデザインする」をテーマに情報発信。 1984年1月28日生まれ。幼少期を福岡県三潴郡大木町で過ごす。小学校時代から、福岡県大川市に居住。高校時代から、福岡市へ転居。 高校時代から、うつ病を発症。うつ病のなか、高校、予備校を経て東洋大学社会学部社会学科へ2006年に入学。2010年卒業。その後、病気療養をしつつ、様々なWEB記事を執筆。大学時代の専攻は、メディア学、スポーツ社会学。2021年より、ジャーナリストとして本格的に活動。

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