マンション暮らしの高齢者で心配なことといえば、遺産相続として「マンションをどうするか」ということがひとつあげられると思います。今回のメルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では、一級建築士及びマンション管理士の廣田信子さんが、マンションの区分所有者である高齢者の方々が相続をどのように考えているかについて詳しく紹介しています。
自分の死後、マンションをどうしたいか考える
こんにちは! 廣田信子です。
自分の死後のことを考えるのは、その後の生き方にも影響します。
今、マンションの区分所有者は、70歳位で、終活セミナー等をきっかけに、ご夫婦で話し合う機会を持つ方が増えています。
お一人になる前に考える機会を持つのは、とてもいいことだと思います。
相続に関しては自分自身が苦労した方も多く、自分たちはしっかり相続を考えたいと思っている方が多いようです。
私の身近でも、そういった話を聞く機会が多いです。
子供が複数いれば、それなりにたいへんなのです。
最近聞いた知人の話ですが、母親が一人暮らしで、知人は自宅が近くて何かと面倒を見ています。住まいが遠く、離婚して一人で子育てしている姉がいます。
親は、姉のことが心配で、マンションは姉に残したい。妹(知人)の方は経済的に安泰だからいいだろうと考えていることを知ってショックを受けます。
親のことですから心情的に受け入れられないのです。
母親の心とは違ってこのままでは、姉妹で争いになってしまいそうです。
令和3年の統計によると、遺産分割事件で扱う財産額は、1千万以下が33%を占めているのです。
兄弟間のちょっとした行き違い、各々が親に話した内容が、どんどん大きくなるのです。
子供のいない方は、兄弟、甥や姪にと思っても、それも相続放棄等があり、うまくいかないケースが増えています。
その場合、管理組合は相続人調査をし、相続人がいないことが判明したら、家庭裁判所に相続財産清算人の選定を申し立てて、その後の処理を行わなければなりません。
その費用は管理組合が裁判所に前納します。
長い時間をかけ、未収金の精算と、弁護士等専門家に依頼した費用を受け取り、あとの現金は国に収めることになります。
ところが、借金が多い等でうまくいかないことも少なくありません。
管理組合はたいへんな手間がかかるのですが、それをしないと、新たな組合員が決まらず、管理費等の未収が続き、その部屋は放置状態になってしまうのです。
ただ、亡くなられた区分所有者の方が、相続人がいないような状況で、本当はどうしたかっただろうということが気になります。
30年後は、一人暮らしの5割以上が高齢者になります。その方々の思いをどうするかです。
そんな中、先日のフォーラムで、弁護士を任意後見人に決めて、自分の死後はマンションを売却して、その中から200万円を管理組合に寄付すると遺言を残した高齢者の報告がありました。他の遺産も関係施設に寄付する事か述べられています。
それを聞いてホッとしました。自分の遺産を自分が思うように役立てもらいたいと言う故人の遺志が活かせているからです。
来年は、一人暮らしの区分所有者が自分の住まいをどうしたいかを自分自身で考え、それを実現する手続きをする。
そうしてすっきりした気持ちで、その後の人生を楽しめることを伝えられたらな…と思っています。
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