与野党を問わずほとんどの政治家にとって、今国会は「自民党パーティー券、裏金追及国会」だったようです。2024年1月29日の参議院予算委員会でも「政治資金等に関する集中審議」が行われ、能登半島地震の被災者救済や被災地復興はそっちのけ状態。しかし、そんな中でも「政治資金等」の「等」に短い持ち時間のすべてを割き、被災地の声を国会に届けた政治家がいました。「れいわ新選組」の山本太郎代表は、岸田総理に何を質問したのか?そして岸田総理はそれにどう答えたのか?いつ自分が被災者になってもおかしくない災害大国・日本の国民が知るべき質疑の内容を、『きっこのメルマガ』著者で人気ブロガーのきっこさんが紹介します。
「被災地・被災者そっちのけ」の与野党国会議員たち
今国会は、自民党の派閥パーティーによる裏金問題という突発事故が発生したため、1月29日に「政治資金等に関する集中審議」を行ない、翌30日に岸田文雄首相が施政方針演説を行なうというレアな日程となりました。
あたしとしては、何よりも能登半島地震の被災者救済と被災地復興を最優先してほしいと思っていたので、「おいおい……」と思いながら29日の国会中継を聞いていました。
何しろ「政治資金等に関する集中審議」ですから、野党はそれぞれの思惑から岸田自民党を攻撃し、連立を組む公明党からも厳しい質疑が続きました。
防戦一方の岸田首相は、いつもの調子で「検討する」「議論する」と逃げまくり、ひらき直りとも取れる答弁まで飛び出しました。
でも、あたしとしては「被災地がこんなに大変な時に、この国の国会議員たちは何をやってんだろう?」という絶望的な気持ちで聞いていました。
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山本太郎だけが「国民目線」で働いていた
すると、最後に登場した「れいわ新選組」の山本太郎代表が、裏金問題など完全にスルーして、短い持ち時間のすべてを「被災地への緊急対策」のために質疑してくれたのです。
それも、徹底的に調査し、資料を準備し、とても分かりやすく、被災者の立場、国民の立場に立った素晴らしい質疑でした。
そして、岸田首相という政治家がどれほど無能で無策で無責任か、それを証明してくれたのです。
あたしは感動しました。これこそが「国民の代表である国会議員の姿」だと思いました。あまりにも感動したので、その質疑の内容を一字一句、文字起こししました。ぜひ最後までお読みください。
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「テレビ・ラジオをご覧の皆さん、これは他人事じゃないんですよ」山本太郎の国会質疑(2024.1.29)
山本太郎代表:れいわ新選組の代表、山本太郎です。資料1、能登半島地震後、総理は「被災者の皆さんが1日も早く元の生活を取り戻せるよう先頭に立つ」とご発言。総理、この言葉に嘘はないか、イエスかノーかでお答えください。
岸田文雄首相:当然、嘘はありません。
山本代表:岸田政権下での主な自然災害は11件、激甚災害は9件。これらの災害においても、総理は被災者が1日も早く元の生活を取り戻せるようこれまでやって来た、ということでよろしいですか?
岸田首相:政府として対応すべきことを検討し、実施につとめてまいりました。
山本代表:岸田政権下で起こった自然災害では、今も生活再建できていない被災者が大勢います。資料2、能登半島は去年5月にも大規模地震に襲われ、珠洲、能登町、輪島などで住宅被害が1417棟。
資料3。昨年5月、被災直後の声「取り壊しを勧められたが自宅再建には1000万円以上、年金暮らしには無理」。
資料4。発災から約半年、昨年11月の声「自宅を建て直す目途が立たず、どうしようもない」と頭を抱える被災者。業者不足、資金不足などの理由で、家の修理や再建が進まぬまま、仮設住宅で元日、再度被災された方々もいる。
能登半島以外でも、各地の被災者が住宅再建を断念。地元を離れることを余儀なくされてます。
資料5・6。2022年8月、青森豪雨災害、青森県で800棟を超える住宅被害。発災から半年、2023年1月の報道「ある地区では、ほとんどの住民が住宅再建を諦めた」。
資料7・8。2023年7月、久留米豪雨災害、福岡県の住宅被害6569棟、全壊した我が家、解体の着手には半年かかる。亡き夫と一緒に選んだ土地での住宅再建を諦め、地域を離れた。
資料9・10。2023年9月、台風13号福島県、集中的な被害を受けたいわき市、住宅被害は約1800棟。豪雨から1カ月後の声「移転・新築で数千万円、現在地での再建でも1000万円かかる。この歳では借金はできない」。
資料11。総理は先週、私の質問に対して、過去の災害でも「最大限の努力をしてきた」とご答弁。ここまで紹介してきた事例は、岸田政権下で起こった災害の被災者の声なんですね。総理大臣として「最大限の努力をした」と豪語する災害対応の結果です。
テレビ・ラジオをご覧の皆さん、これは他人事じゃないんですよ。必ず来ると言われている首都圏直下、南海トラフ、次に切り捨てられるのはあなたかもしれません。
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「住宅再建のための支援金、一切出ません」山本太郎の国会質疑(2024.1.29)
山本代表:資料12。災害であなたの家が全壊、被災者再建支援法でお金が支給される。ただし被害の度合いと再建方法によって金額は変わる。住宅再建なら最大300万円、補修だけなら200万円、賃貸に移るなら150万円。
先ほどの被災地の事例では、国からの支援が少なく、経済的余裕もないから、自宅再建を諦めて地域を出ると判断した人々です、資料13。
野党が「300万円を600万円に」と法案提出、これが実現しても住宅再建は無理です。本質的な改善は後ほど提出します。
災害で家が壊れた場合、6つのカテゴリーに分類、資料14。
全壊、大規模半壊、中規模半壊、半壊、準半壊、一部損壊。金額はあくまで住宅を建て直す場合に貰える最大額。補修や賃貸に移る場合はさらに少なくなります。下の3つの被害、半壊、準半壊、一部損壊は、住宅再建のための支援金、一切出ません。資料15。
ただし災害修理法から応急費用は出る。これはトイレ・お風呂など必要最小限度の修理費用を支援するもの。半壊で最大70万6000円、準半壊34万3000円。資料16。
半壊とは、2年前の8月の北日本豪雨、自宅の1階ほぼすべて、40畳ほどが床上浸水。浸水の深さが20センチだったので半壊扱い。半壊は最大で約70万円出るんですが、それでどうにかできる話じゃないですね。一番軽い被害とされる一部損壊、ここには応急修理費用も出ない。
一部損壊とは、資料17。地震や台風などで屋根の瓦がずれる。隙間から雨漏りするとカビが大量発生する原因になる。修理費用は状況で変わるが、200万円、400万円はざら。屋根が全部吹っ飛んだレベルでない限り、多くの場合は一部損壊で、応急修理費用も出ない。
資料18。2019年の山形沖地震、そこから2年たっても屋根をブルーシートで覆ったままの家に住む80代の女性「私もおじいさんも歳で、工事費の自己負担は経済的に難しい」と言う。政府は災害によって特例として屋根の支援をしたこともありますけど、基本的には「自腹で直せ。カネがないなら屋根にブルーシート」です。
資料19、「コミニティーを守れるんだろうかという不安、この不安にも応えなければならない」、これ総理のお言葉なんですね。
しかし実際はできてません。それどころかコミュニティーを壊す状態になっちゃってますよ。
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「岸田総理、明日あなたに動かせることがあるんですよ」山本太郎の国会質疑(2024.1.29)
山本代表:資料20。総理は「被災者のために何でもやる」ともおっしゃった。だったらさっさとやってください。被災者再建支援法、被災者生活再建支援法、早急に改正してほしいんです。
総理、ケチな上限金額、これ定めないでください。全壊から一部損壊に至るまで、住宅、生活再建にかかる費用の8割、8割を国が支給する。残り2割は自治体・義援金などでカバーする。
過去の災害にもさかのぼって支援できる仕組みづくり、総理、作っていただけますか?やりますか?やりませんか?
岸田首相:ご指摘の被災者生活再建支援法を改正するというご提案につきましては、先日も答弁させていただいたように、能登半島に合った追加策、これを今、検討しております。え~、この追加策をやります。そして、もう1つの応急修理、再建支援金の期間延長でありますが……。
(後ろから「順番を間違えてますよ」の指摘)
岸田首相:すみません。
山本代表:それだけでいいですよ。
岸田首相:はい。
山本代表:もう1つ提案があります。今、もうすでにやろうとしてるって言ってるんだけど、それ小粒なんですよ。数百万円を上乗せしたって家なんて建たないんですよ。
それでみんな困ってるんですよ。いろんな被災者が、あなたが総理だった時に起こった災害の人たちが。
だから、家の修繕は金額の上限を定めるんじゃなくて、かかる額というものの多くを国が持つという約束をしないと、コミニティーが壊れていくんですよ。
そしてもう1つ、そういったものが成立・運用されるまでの間、閣議決定ですぐやれることをやってほしいんです。明日あるでしょ閣議が。
明日あなたに動かせることがあるんですよ。
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「もう考えてる?検討する?だからいつなんだよ、答えが出るのは?」山本太郎の国会質疑(2024.1.29)
山本代表:災害救助法の運用変更です。現在、援護の期間を数値や日数、いわゆる定量で決めてます。これ自治体や国でそのつど調整するという、これがまずいんですよ。
毎回、被災地、そして被災者を消耗させている。「状態・フェーズを見る、定性で」という規定に変えてほしいんですよ。
さらに支給金額の大幅増額、適用範囲の大幅な拡大、これ明日の閣議で決めていただきたい。ようは政令でできることを言ってます。やっていただけません?どうですか?
岸田首相:え~今回の災害に対して、え~今回の災害特有の事情に配慮して、追加策を考える。これは今、検討を進めてまいります。しかしそれに対して、具体的にどういった全体の対策を用意するのか、先日もパッケージを用意したわけでありますが、それぞれの対策を用意し、総合的に被災者を支援していく。こういった取り決めを進めてまいります。ご指摘の点について、明日すぐやるかどうかとのことですが、政府としましては、様々な対策を全体として地域をどれだけ盛り上げられるか、そういった観点から政策を総合的に判断いたします。
山本代表:「検討する」「考える」、いつまでやってるんですか?もう答えを出してなきゃだめなんですよ。今もすでに、前にあった災害で被災者たちが困ってるんですよ。あなたが総理の間に。
だから明日できることをやってくれって言ってるのに。もう考えてる?検討する?だからいつなんだよ、答えが出るのは?明日出せるんだよ。いかがなんですか?やってくださいよ総理だったら。
岸田首相:え~すでに先週の閣議において、復興のための生活支援パッケージ、取りまとめております。その中に支援のメニュー、これを並べております。これはすでに実行にかかっております……。
日本は本当にこのままでいいのか
ここで時間切れとなりましたが、「政治資金等に関する集中審議」において、「政治資金」に関する質疑に終始した他の議員らと、「政治資金等」の「等」に短い持ち時間をすべて割き、今、助けを求めている被災者たちの声を国会へ届けてくれた「れいわ新選組」の山本太郎代表、どちらが「国民目線」だったのか?
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その答えは一目瞭然だったと思います。
(『きっこのメルマガ』2024年2月7日号より一部抜粋・文中敬称略)
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