『週刊文春』により、次々と性加害疑惑や後輩芸人等を「女衒」として使う手口が暴かれているダウンタウンの松本人志。前回掲載の記事で、松本が文藝春秋を相手に起こした訴訟において彼に勝ち目のない1つ目の理由を、吉本興業という会社の体質を紐解きつつ明かしたジャーナリストでの上杉隆さんですが、今回もメルマガ『上杉隆の「ニッポンの問題点」』で2つ目の決定的理由を詳しく解説しています。
【関連】ジャニーズと“同じ轍”は踏まず。吉本興業が松本人志を「文春に差し出す」ワケ
なぜ松本人志は『週刊文春』に裁判で勝つことが不可能なのか
文春砲の直撃を食らった松本人志氏だが、芸能活動を休止して裁判に注力する方針を示した。果たして、彼の選択は功を奏するか。かつて文藝春秋や週刊文春取材班と取材し、多くの記事を書いてきたジャーナリストの上杉隆が解説する。
ちなみに、上杉は、週刊文春の顧問弁護士である喜田村洋一氏とは25年来の知己で、現在も顧問契約関係にある。また、松本人志の個人弁護士の田村政弘氏とは、2009年から始まった週刊朝日誌上での東京地検追及の取材時、並びに検察取材のまとめ『暴走検察』(朝日新聞出版)での取材対象であった。その上杉が松本人志が文春に勝てない3つの決定的な理由を示した。今回は連載2回目(次回が最終回)。
【関連】松本人志に「そんな弁護士で大丈夫か?」心配の声なぜ。“ヤメ検”代理人を雇い文春と全面対決も…「民主主義を揺るがしたあの大事件」が再注目
もはや容認も黙認されない「性文化」
二つ目の理由は、社会情勢の変化と法制度の改正だ。かつては容認、もしくは黙認されていた「性文化」が、#me too 運動やキャンセルカルチャーなどをみるように、時代の変化とともに許されなくなっている。根底に流れていた男尊女卑の「常識」は「性犯罪」となり、時代についていけないメディアや著名人が結果としてターゲットになっている。
世界においても、エプスタイン事件やローマ法王庁のように性犯罪に対しては厳しい目が注がれ(これら事例は児童虐待であるが)、それがいかなる権力者であれ、有名人であれ、犯罪は許されるべきではないという風潮が強くなっている。日本においても同様だ。著名人の不法・脱法行為への許容範囲は年々狭まっている。長年、黙殺されてきたジャニー喜多川氏の児童虐待だけではなく、今回の松本人志氏のパワハラ事案も、そうした流れにあるといっていいだろう。
松本人志氏の関わる文藝春秋との訴訟において、法律の観点から注目されるのは、2023年7月に施行された不同意性交等罪の改正だ。この改正は、性犯罪に対する法律の適用範囲を拡大し、より厳格な対応を可能にした。ポイントを簡単にまとめると以下のようになる。
不同意性交等罪
定義:2023年の刑法改正により新設された。被害者が同意する意思を形成、表明、または全うすることが困難な状態での性交等を行う行為。
刑罰:5年以上の有期懲役。
不同意わいせつ罪
定義:同じく2023年の刑法改正で新設された。被害者が同意の意思を形成、表明することが困難な状況でのわいせつ行為。
刑罰:6ヶ月以上の有期懲役または100万円以下の罰金、あるいはこれらの併科。
改正の影響
以前の法律:これまでは「強制性交等罪」と「準強制性交等罪」があり、状況に応じて適用されてきた。同様に、「強制わいせつ罪」と「準強制わいせつ罪」も存在していた。
改正後:これらの犯罪は統合され、「不同意性交等罪」(刑法177条)と「不同意わいせつ罪」(刑法176条)に置き換えられた。
これらの法改正は、被害者の同意の有無に基づく性犯罪の扱いを明確にし、性的自決権の保護を強化することを目的としている。不同意性交等罪は以前の「強制性交等罪」と「準強制性交等罪」を統合し、不同意わいせつ罪は「強制わいせつ罪」と「準強制わいせつ罪」を統合した。これにより、性犯罪に関する法体系がより現代的な価値観に合わせて更新されたことになる。
この記事の著者・上杉隆さんのメルマガ
松本サイドが『週刊文春』に出されると致命傷となる記事
さらに、今回の松本氏のケースを、公訴時効をいったん無視して考えたとして、その適用を考えれば、以下の点が照射される。
暴行や脅迫の使用、心身の障害を生じさせる行為、アルコールや薬物の摂取、意識が明瞭でない状態を利用した性行為に加えて、以下のような要件を含むようになった。
- 同意しない意思を形成し、表明し、またはその余裕がないこと。
- 予想外の事態に直面させて恐怖や驚愕を引き起こすこと。
- 虐待による心理的反応を引き起こすこと。
- 経済的または社会的な地位に基づく影響力によって不利益を憂慮させること。
4.はまさしく、松本氏のケースに当てはまるだろう。
松本氏の件はこの法律が成立する前なので「セーフ」だという意見があるのもわかる。確かに、法律は遡って適用されないから、それは妥当な反論だ。
しかし、だからといって、圧倒的な影響力のある人物の振る舞いとして厳しい目が注がれていることが緩和されることはないだろう。まさしくキャンセルカルチャーの事例ともいえるが、松本氏の場合は、常習性をもって組織的に繰り返されてきたという点が大きい。
現時点では、1年半前の改正後(2023年7月)の事案は報じられていないが、仮に、週刊文春編集部がその事実を掴んでおり、裁判で提出した場合には、松本氏は今以上に――(本記事は有料メルマガ『上杉隆の「ニッポンの問題点」』2024年2月6日号の一部抜粋です。続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)
初月無料購読でこの続きがすぐ読める!
image by : 松本人志 吉本興業公式サイト