何を頼りに事業を行うべきか…経営者の皆さんの多くが悩んでいることかもしれません。今回の無料メルマガ『戦略経営の「よもやま話」』では著者の浅井良一さんは、ドラッカーの教えを、日本の成功企業の例を挙げつつ紹介しています。
持続的な競争優位性
卓越性の追求
いったい何を頼りにして事業を行っていけばよいのか。多くの経営者は、自身の経験だけを頼りに日常として業務を繰り返します。恵まれていれば、税理士など識者の助言を受けることなどもあるでしょう。けれど、それでは“持続的な競争優位性を築く”『経営戦略』など望むべきもあらずで、故に運が尽きれば自ずから訪れる破綻を持ちます。
そうならないためには、どうするのか。代表的な解答の一つとして、ポジショニング戦略による事業展開があり。例えば、ファーストリテーリング(ユニクロ)の柳井さんは、将来性が見込めて自分が思い入れを持ってすすめる「カジュアルウェア」のポジションを取り、有能なやる気のある人材に活躍してもらい、日々変革を行います。顧客を幸せにしない、未来がない、勝てないものに資源を分散させません。
“持続的な競争優位性を築く”『経営戦略』なくしては安定的に社会貢献を実現して、差別的に利益を得ることなどできないのです。そのことについてよりよく分かるために根本から探って行きます。根本が整理されなくては、独りよがりの独善で歩むより仕方がないからで。まだるっこしいのですが、そもそもの“企業”“事業”とはから考察します。
ドラッカーは“企業”とはについて「企業とは何かを理解するには、企業の目的から考えなければならない。企業の目的は、それぞれの企業の外にある。企業は社会の機関であり、その『目的は社会にある』。企業の目的として有効な定義は一つしかない。それは“顧客を創造”することである。」。“顧客を創造”は聞きなれない言葉ですが、重要なキーワードで、そしてすべての企業に競争優位性をもたらす『経営戦略』を規定するものです。
“事業”はについて「“顧客”が事業の土台であり、事業の存在を支える。『顧客だけが需要を創出する』。社会が企業に資源を委託しているのは、顧客に財やサービスを提供させているからである。」と考察します。「対価を支払うのは誰か」それは唯一“顧客”で、顧客の“欲求を満たす効用(商品・サービス)”を提供できないのでは事業は成立しません。ために、マーケティング、イノベーションが求められることになります。
さらにドラッカーですが、成果が出ないことに悩むNPOの代表者の要望を受けて「経営ツール」としての「5つの質問」なるものを提言しました。そして「経営ツール」は、中堅企業や大企業でも使われるものとなります。この「5つの質問」は、経営者が自身の事業を行うについて、確かに成果を得るための基盤を整えられるもので、計画はこれに始まります。寄る辺ない思いや交錯する考えに対して、明確な指針をもたらしています。
<5つの質問>とは、以下のものです。
1.「われわれのミッションは何か」
2.「われわれの顧客は誰か」
3.「顧客にとっての価値は何か」
4.「われわれにとっての成果は何か」
5.「われわれの計画は何か」
まずは組織(企業)の「ミッションは何か」を考えろと教えるのです。そりゃあそうで、そもそもが自身が果たすべき“使命や役割そして存在意義”が分からないでは、効果的に成果を実現することに焦点を絞れません。人びとが時代が求める精神を、まずは「われわれのミッション」として事業の軸にできるかどうかで、今実行する活動に意味と利益を決めます。とは言え、よく知るように「われわれのミッション」などを考えません。けれども、一方でより多くの成果を上げている企業は、当たり前として「ミッション」を金科玉条として、これを核に経営します。
ではということで、ミッションを規定しなければならないのですがどのようなものであるべきか、またドラッカーに聞きます。「ミッションは“行動本位”たるべきものである。さもなければ単なる意図に終わる、ミッションとは“組織に働く者全員が自らの貢献を知りうる”ようにするものでなければならない」が指針です。
※ちなみに、以下のように多様なものがあります。
トヨタ:「わたしたちは、幸せを量産する」
ソニー:「テクノロジーの力で未来のエンタテインメントをクリエイターと共創する」
ユニクロ:「本当に良い服、今までにない新しい価値を持つ服を創造し、世界中のあらゆる人々に、良い服を着る喜び、幸せ、満足を提供します」
ホンダ:「人間尊重(自立、平等、信頼)」「三つの喜び(買う喜び、売る喜び、創る喜び)」と多様な表現があり“行動の質”を方向付けます。
そして、そのミッションによって大いに羽ばたくための要件なのですが、それこそが、ドラッカーの「優先順位(勇気にかかわる)の原則」です。世界的なIT企業が、世界に出てきたのは、全てこれに則ってのことです。
第1: 過去ではなく未来を選ぶ。
第2: 問題ではなく機会に焦点を合わせる。
第3: 時流に乗るのではなく独自性をもつ。
第4: 無難で容易なものではなく、変革をもたらすものに焦点を合わせる。
※尖がった他が持っていない、できない魅力こそが頂点の位地を与えます。
そのような要件の満たして“卓越性を追求する”のです。卓越性を追求する者とそうでない者とでは、機会と成果の確率が開きます。
ドラッカーは、さらに実現のための要件を加えます。「いくつかの習慣的な姿勢と、基本的な方法を身につけているかどうかの問題である。成果をあげることは習得できるし、習得しなければならない。」とし、このように“成そうとする者”にとっての心得、姿勢を求めます。「“自らの強み”を知り、“得意とする仕事の仕方”を知り、“自らにとって価値のあるもの”を知ればよい。これに加えて、“何に貢献すべきか”を明らかにし、”何に集中すべきか”を定め、“目線を上げればよい”」。ということで、あなたの目線はどこにどの高さにあるかが重要なのです。
さらに、親切に「卓越性を追求するとき、仕事の質が一変するだけでなく、自分という人間が大きく成長する」と“訪れるもの”までを予告します。(メルマガ『戦略経営の「よもやま話」』より一部抜粋)
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