数字が続伸したのは5月の貿易が好調だったためだが、輸出をけん引したのは高付加価値、AI、グリーン産業だった。なかでも注目されたのが船舶、EV、家電であり、それぞれ対前年比で100.1%、26.3%、17.8%という大きな伸びを示している。
地域別にみると、「対ASEAN、対ラテンアメリカ、対アフリカの輸出が好調だった」(税関総署統計分析司司長呂大良)というから、中国にとって重要な貿易パートナーが、従来の欧米中心から、明らかに新興国・発展途上へと変化していることがわかるだろう。
また「一帯一路」参加国との貿易の伸びも顕著だ。今年5月までの貿易総額は8兆3100億元で、対前年比で7.2%もの増加となった。いまや「一帯一路」参加国との貿易額は、全貿易額の47.5%を占めるまでになっている。
アメリカに続いて欧州委員会(EU)もいま、中国製品の排除に向けて不穏な動きを見せるなか、中国は「一帯一路」をフル活用して、新興国・発展途上国との関係を強め、新たな市場の開拓に動いている。
その「一帯一路」についてジョセフ・バイデン米大統領は、「いまや誰もが嫌悪し、葬られた構想。アフリカで何が起こっているか? それを見れば明らかだ」と批判した。だが、6月7日の中国外交部の定例会見で毛寧が「『一帯一路』をどう評価するのか。それについて発言権があるのは参加国の国民だけだ」と反論したように、参加国のなかで、バイデンが評したような意見を持つ国が多いかといえば、決してそうではない。
前述したように「一帯一路」参加国との貿易は、順調に伸び続けているからだ。西側メディアでは、中国と「一帯一路」参加国は「債務の罠」による加害者と被害者の関係だと報じられることが多い。だが、そうであれば声を上げるべきは被害国であって西側先進国やメディアではない──(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2024年6月9日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)
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