時代によって刻々と変化する健康常識。かつては推奨されていた「栄養指導」が、実際は健康を害していたという事実が少なからずあることも判明しています。今回のメルマガ『糖尿病・ダイエットに!ドクター江部の糖質オフ!健康ライフ』では糖尿病専門医で糖質制限食の提唱者でもある江部康二さんが、1977年の米国栄養ガイドラインがアメリカ人にもたらした「健康被害」を紹介。大失敗に終わったこの栄養指導の内容を解説しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:脂肪悪玉説の歴史的背景
脂肪悪玉説の歴史的背景
1950年代にアメリカミネソタ大学のアンセル・キーズ博士が、「バター、チーズ、赤身肉に多く含まれる飽和脂肪酸は、血液中のコレステロール値を上昇させ、その結果、狭心症や心筋梗塞など冠動脈疾患の原因になる」という仮説を主張しました。これが脂肪悪玉説の始まりと言われています。
アンセル・キーズ博士の仮説に従って、米国では、炭水化物摂取比率を増やし、脂肪摂取比率を減らす栄養指導が行われました。
1977年の米国栄養ガイドラインでは、「脂質を減らし、炭水化物を増やせ」となりましたが、その結果、
- 脂質摂取率は30年間減り続けた:1971年36.9%⇒2000年32.8%
- 炭水化物摂取率は30年間増え続けた:1971年42.4%⇒2000年49.0%
- 目標達成したのに、肥満は30年で倍増
- 目標達成したのに、糖尿病はわずか10年で2.5倍増
脂質摂取比率が減って、炭水化物(糖質+食物線維)摂取比率が増えて、目標達成したはずなのに肥満倍増、糖尿病激増で、結果は大失敗です。
食物線維は体重を増加させないし、血糖値も上昇させないので、真犯人は糖質の頻回・過剰摂取の可能性が大なのです。
- ADAは、2007年まで糖尿病の食事療法において糖質制限食は推奨しないとしていた
- 2008年、「食事療法に関する声明2008」において、「減量が望まれる糖尿病患者には低カロリー食、もしくは低炭水化物食によるダイエットが推奨される」と、1年の期限付きで、糖質制限食の有効性を認める見解を記載
- 2011年、肥満を伴う糖尿病患者に2年間の期限付きで糖質制限食の有効性を容認
- 2013年10月、「食事療法に関する声明2013」において期限や限定なしで、糖質制限食を容認
- 2019年4月、コンセンサス・リコメンデーションにおいて、「糖質制限食は最も研究されている食事パターンの一つである」と明言し、一推しで推奨しました
- 2020年4月、「栄養療法」地中海式、低炭水化物、およびベジタリアン食事パターンは、いずれも研究で良好な結果が示されている健康的な食事パターンの例である。個別の食事計画は、個人の好み、ニーズ、および目標に焦点を当てるべきである。糖尿病患者の全体的な炭水化物摂取量を減らすことは、血糖値を改善するために最も多くのエビデンスが示されているので、個人のニーズや好みに応じた様々な食事パターンに適用することができる
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