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「殺す、殴る、ナイフ、ライフル」トランプが副大統領候補に指名した「元作家」の“世界的ベストセラー本”で繰り返される物騒な言葉

全世界に衝撃を与えたトランプ前大統領銃撃事件。その2日後に開幕した共和党大会に登場し健在ぶりをアピールしたトランプ氏は、副大統領候補にジェームズ・デイヴィッド・バンス上院議員を指名しました。この元作家の顔を持つバンス氏とは、一体どのような人物なのでしょうか。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では健康社会学者の河合薫さんが、世界的ベストセラーとなったバンス氏の『ヒルビリーエレジー』を「これまで読んできた本のベスト5に入る秀逸な作品」と高く評価した上で、その内容を詳しく紹介。さらに「同氏が副大統領になることで分かるかもしれないこと」を記しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:“ヒルビリー“のこれからは?

プロフィール河合薫かわいかおる
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

“ヒルビリー”のこれからは?

トランプ前米大統領か銃撃されたとの一報は、世界中を震撼させました。憶測も含めてさまざまな情報が飛び交っていますが、個人的に興味をもったのが、副大統領にバンス氏が指名されたことです。

15日に行われた米共和党全国大会で、大統領候補に正式決定したトランプ前大統領が指名したジェームズ・デイヴィッド・バンス上院議員(オハイオ州)は「なぜ、ラストベルトがトランプ現象の震源地になったか?」がわかる本として、世界的ベストセラーになった『ヒルビリーエレジー』の著者であり、バンス自身、ラストベルトオハイオ州の鉄鋼業の街で貧しい子供時代をすごしました。バンスは元弁護士で、いわばアメリカンドリームを実現した「1人」です。政治家バンスに対しては「リトルトランプ」との評価もありますが、『ヒルビリーエレジー』は私が読んだ本のベスト5に入る秀逸な作品です。

人の生きる力がどう引き出されるのか?「私」を取り囲む生活世界=半径3メートル世界の人たちと、なぜ質のいい関係が必要なのか?「世界は最終的に微笑んでくれる」という確信は、どのように作られるのか?正論が通じない世界、数字では見えない人の心、幼少期の経験が与える影響、信頼とは何か?愛情とは何か?

こういった私がこれまで書き続けてきたことが、繰り返し自問してきたことのすべてがバンスの視点で描かれているのが、『ヒルビリーエレジー』であり、バンスが歩んできた人生そのものなのです。

バンスはスコティッシュ・アイリッシュの家系に属し、親戚はみな労働者階級です。いわく「貧困は伝統だ」と。男らしさの文化が根付き、家族や地域への深い愛情がある一方で、男たちはみな乱暴で、よそ者が大嫌い。本には刺激的なエピソードが多数綴られています。

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人を殺しそうになったことのあるおばあちゃん、ヴァンスが子供の頃に、「耳を切り取って犬に食べさせるぞ!!!」とナイフをもって追いかけ回した恐ろしいおじさん、建築用木材の会社を起こして経済的には成功したけど、自分の母親の悪口をいったお客をトラックから引きづり下ろして、気絶するまで殴りつけたもう1人のおじさん…などなど。

本著には「殺す、殴る、ナイフ、ライフル…」と物騒な言葉が繰り返されているのですが、どこか暖かい。実際、殺しかけても本当に殺した人はいないし、逮捕された人もいない。なによりもバンス自身が、彼らのことが大好きだと言い切っている。半径3メートルの生活世界に、最後は必ず微笑んでくれると確信できる子供時代をすごしたからこそ、今の「私」があると教えてくれます。

こういったバンスの経験が、どのような政策につながるのか?トランプ前大統領とバンスの政策は具体的にどう違うのか?そして、何が同じなのか?同じだとすれば、その主張の真意は何なのか?

『ヒルビリーエレジー』でラストベルトがトランプ現象の震源地になった理由がわかるように、アメリカ人がトランプ前大統領の支持を続ける理由が、バンスが副大統領になるとわかるかもしれません。

みなさんのご意見、お聞かせください。お待ちしています。

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