『ザ!世界仰天ニュース』13日放送分が話題だ。安倍晋三元首相銃撃事件を特集し、旧統一教会との関係にまで踏み込んだ“攻めた内容”だったが、TVerでは一時配信中止に。その後、配信が再開された“改変バージョン”が様々な憶測を呼んでいる。
安倍元首相と旧統一教会の闇に斬り込んだ『ザ!世界仰天ニュース』
日本テレビ系のドキュメントバラエティ番組『ザ!世界仰天ニュース』が、13日の放送で安倍晋三元首相銃撃事件を詳しく取り上げた。
番組では、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の霊感商法によって家庭崩壊の憂き目に遭った山上徹也被告が、教団と安倍元首相の“ただならぬ関係”に気づき、韓鶴子総裁のかわりに安倍元首相を復讐のターゲットに定めて凶行に及ぶまでの経緯が、再現ドラマで紹介された。
SNSでは放送中から、教団関係者とおぼしき一団が番組へのクレームを多数投稿。いっぽうで、ゲストのヒロミ(59)による“教団擁護”発言に、一般視聴者から疑問の声が相次ぐ一幕も。
さらに、公式動画配信サービスTVerでの配信がとつぜん停止された結果、様々な憶測が乱れ飛ぶ騒動となった。現在は、TVerでの番組配信が再開されているが、これはいくつかのシーンが削除された“アナザーバージョン”となっている。
これに関して、テレビ制作関係者がいう。
「13日放送の『世界仰天ニュース』は、安倍元首相と旧統一教会の闇にかなり深くまで踏み込んだ良番組でした。銃撃事件直後の国内メディアの不自然な報道姿勢に触れていない、再現ドラマでのSPの防弾カバン展開がやや早すぎるなど、細かいツッコミどころはもちろんあります。でも、これはあくまでゴールデンタイムの地上波バラエティ番組ですからね。その制約の中で、老若男女の視聴者に真相を伝えようとする強い意気込みが感じられましたし、細かい工夫の数々にも感心しました」(テレビ制作関係者)
足りない部分もたしかにあった。たとえば、霊感商法の被害を増やしかねない団体名称変更の問題。番組は、2015年に「世界基督教統一神霊協会(いわゆる統一教会)」から「世界平和統一家庭連合」に変わったことには触れたものの、なぜ国はとつぜん名称変更を認めたのか?という核心部分はスルーした。
だが、細かいことを言いはじめたらキリがない。この番組はあくまで万人向けのバラエティ、入口になりさえすればいいという判断があったのだろう。そのうえで業界関係者から見ても“攻めた内容”だったというこの番組。いったいどんなタブーに触れたのだろうか?
“攻めた内容”の番組で、浮きまくっていたヒロミのコメント
同番組では、安倍元首相の祖父である岸信介氏と旧統一教会の教祖文鮮明が“反共産主義”の利害一致から関係を深め、その後長年にわたって教団は自民党と協力関係にあったことを紹介。選挙において“統一教会票”の差配が行われていた事実など、かなり踏み込んで解説した。
また、霊感商法を正当化し、この世の金品はすべて神である教祖に返されるべきだとする「万物復帰」という教義の危険性も、図解を用いて詳しく取り上げた。
ヒロミの“問題発言”があったのは、その霊感商法パートだ。司会の中居正広(51)と、次のようなやりとりがあった。
中居:「こういう宗教によって、本当に助かってる、団体もあって、人たちもいるんですよね」
※テロップ:「【宗教】本当に助かってる人たちもいる」ヒロミ:「それは間違いなくいると思う。それは間違いなくいると思うし、今でもまあそのね統一教会でも、べつに、あのーそう思ってる人もたくさんいるんだろうし」
※テロップ:「間違いなくいると思う/教団に救われている人もいる」
発言内容とテロップをみると、中居が宗教全般の社会的役割に言及したのに対し、ヒロミは旧統一教会という特定の宗教法人に“肩入れ”している印象を受ける。同団体の霊感商法の問題点を紹介するという構成上、これを不適切に感じる視聴者がいたのは無理もないことだろう。
ただ、これが本当に単なる“失言”だったかというと、それは違うかもしれない。
ヒロミ炎上は想定内? なにわ男子の“薄っすいトーク”にも一定の役割
ヒロミ炎上について、先のテレビ制作関係者が指摘する。
「番組では、地上波テレビでは現在もめったにお目にかかることがない事実を、ごく当たり前のように淡々と取り上げていて制作側の気概を感じました。さらに霊感商法パートでは、たまたま旧統一教会の集まりに参加した女子高校生が、自由恋愛は罪であり、神の決めた相手と結婚しなければ地獄に落ちると洗脳されていく様子をドラマで再現。これも非常に良かったと思います。年頃の女性がイケメン恋人と別れ、青春を失い、やがて自ら加害者側になっていくプロセスは、何と言っても若者世代の視聴者に刺さりますからね。制作サイドは当然、これらを意図的に狙ってやっているわけで、そんな彼らがヒロミさんの発言部分だけ事前に問題に気づかないなんてことは、まず絶対にあり得ない。個人的には、ヒロミさんの炎上騒ぎは制作側の想定内だったと思っていますよ」(前同)
この日のゲストにはヒロミのほか、ビズリーチのCMでお馴染みの吉谷彩子(32)や、なにわ男子・大西流星(23)も出演。頻繁に話の流れをぶったぎるゲスト陣の“薄っすいトーク”は同番組の名物とも言えるものだが、「幅広い視聴者層にリーチするには欠かせない仕掛け」(前同)だという。
また、そもそもヒロミといえば、旧統一教会と関係が深い自民党議員の萩生田光一氏と“八王子つながり”の間柄。制作サイドがそれを知らないわけはないとも。
すると、“攻めた内容”の番組に一定の中立性を持たせるため、あえてヒロミを利用して意図的に“教団擁護”の要素を残したか。あるいは、そうしろと上からの圧力があったのか――
その意図は不明ながら、視聴者は今回のヒロミ騒動によって、銃撃事件直後に相次いだ芸能人や有識者による不自然な“旧統一教会擁護”を追体験できたのは間違いないだろう。
すべては意図的か?TVer版「サイレント修正の謎」を読み解く
さて、13日に日テレ系で放送された同番組はTVerでの配信が一時停止され、その後、配信が再開された。ただし現在、TVerで視聴できる番組は、テレビ放送版に改変を加えた“アナザーバージョン”となっている。
この改変箇所は複数あり、TVer版で「権利上の都合で配信できない」旨が明示されている箇所と、こっそり“サイレント修正”された箇所があるが、問題は後者だという。
実際に両方のバージョンを見比べたネットメディア編集デスクが指摘する。
「番組内の再現ドラマで、旧統一教会と韓鶴子総裁への復讐を決意し、銃や弾丸を製造していた山上被告が、事件の10ヶ月前、2021年9月にネット上で“ある動画”を発見するんです。これは、教団の関連団体である天宙平和連合(UPF)主催の集会に、ドナルド・トランプ氏や安倍元首相がビデオメッセージを寄せたもので、ネットでは以前から存在が知られていました。今回の番組では、それが地上波テレビで大々的に報じられたという点に大きな意義があったのですが、再公開されたTVer版からは、安倍元首相のメッセージ部分がごっそりと削除されてしまいました」(ネットメディア編集デスク)
動画内の安倍元首相:「ご出席の皆様、日本国前内閣総理大臣の安倍晋三です。朝鮮半島の平和的統一に向けて努力されてきた、韓鶴子総裁をはじめ皆様に敬意を表します」
ナレーション:「これを見た山上被告は、ターゲットを安倍元総理に変えたという」
山上被告の供述:「宗教団体の代表らが設立したNGOの集会に寄せられた、安倍元総理のメッセージを見たころ、殺害を決意しました」
テレビでは上記の内容が放送されたが、再公開されたTVer版では太字部分が削除された。関係団体からのクレームに対応したものと考えられるが、この箇所は他と違って「権利上の都合で配信できない」旨が表示されていない。前後が上手く繋がるよう編集されてはいるが、全体の流れとしてやや不自然な印象になっている。
先のテレビ制作関係者が指摘する。
「『権利上の都合で配信できません』の注意書きは、別に入れ忘れたわけではないと思いますよ。あくまで想像になりますが、この箇所だけ、あえて注意書きを入れないようにすれば、きっと番組を支持する視聴者たちは気づいてくれる、と制作サイドは考えたのではないでしょうか?どうでもよさそうな他の箇所にはキッチリと注意書きが入っていますし、意図的なものに感じられます」(テレビ制作関係者)
一昔前まで陰謀論扱いされることも少なくなかった事実を白日の下に晒した同番組。TVer版の“サイレント修正”は、実はテレビマンたちの反骨心の表れなのだろうか。
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image by: ザ!世界仰天ニュース(日本テレビ)