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安倍長期政権の生みの親。“昔の名前”で立憲民主党の代表選にノコノコ出てきた野田佳彦「7つの大罪」

野党第一党の顔を選ぶにも関わらず、自民党の総裁選に比して明らかに注目度で劣る立憲民主党の代表戦。そんな選挙にかつて旧民主党を率いた野田佳彦氏が出馬を決意し、8月中に正式表明すると伝えられています。この動きに「冗談もいい加減にしてほしい」とするのは、ジャーナリストの高野孟さん。高野さんは今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』でそう指摘せざるを得ない理由を解説するとともに、次期衆院選での政権交代を「夢のまた夢」と断言しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:野田佳彦元首相が立候補?/冗談もいい加減にして下さいよ立憲民主党

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

冗談もいい加減にしてくれ。立憲民主党の代表戦に野田佳彦が立候補のビックリ仰天

自民党総裁選が何やら賑々しくなってきたので、同時期に代表選を行う立憲民主党としても報道の谷間に埋没しないよう頑張ろうという気持ちになるのは当然だが、そこでいかにも“本命”ヅラをして野田佳彦元首相が出て来たのにはビックリ仰天した。

何よりもまず、野田自身がこれまで繰り返し「『昔の名前で出ています』ではいけない。私は『昔の名前』すぎる」と言って出馬を否定してきたのではなかったか。「昔の名前すぎる」という自己認識は正しかったのに、何故それを覆したのかきちんと説明すべきである。

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汚物に塗れた野田佳彦という「昔の名前」

しかも、私に言わせればその「昔の名前」は汚物に塗れている。2016年9月に蓮舫が民進党の代表となり野田を幹事長に選んだ時に、私は「日刊ゲンダイ」のコラムで野田が犯した「7つの大罪」を列記し、彼が安倍長期政権の生みの親であるばかりか、安倍がやった禍々しいことの多くを準備していたことを指摘した。以下、そのコラムを再録する。

「野田佳彦幹事長」には驚いた。旧民主党OBの何人かと話をすると、みな「安倍政権下で起きている悪いことのほとんどは、野田政権時代に始まった。そのことを蓮舫新代表は知らないとでも言うのだろうか」と怒っている。その通りである。

第1に、安保法制。野田政権の国家戦略会議フロンティア分科会は12年7月、憲法解釈を変えて集団的自衛権を行使を認めるべきだと提言し、それを「能動的な平和主義」と名付けた。それと連動して自民党もほぼ同時期に「国家安全保障基本法(概要)」を発表して政権交代後に備えた。

第2に、武器輸出。藤村修官房長官は11年12月、佐藤・三木両内閣以来の武器輸出3原則を見直して「包括的な例外協定」案を発表した。それを受けて安倍は14年4月、同3原則を廃止した。

第3に、オスプレイ配備。米国の言いなりで受け入れ、12年10月に沖縄に配備を強行させた。

第4に、尖閣国有化。12年9月、中国への根回しを欠いたまま尖閣諸島の国有化に踏み切り、日中関係が一気暗転、安倍政権の扇情的な「中国脅威論」キャンペーンに絶好の材料を提供した。

第5に、原発再稼働。野田内閣は12年6月、3・11後初めて大飯原発3、4号機の再稼働を決定し、7月から運転させた。また同時に、再稼働の「新安全基準」を定め、それを担う「原子力規制委員会」を設置する法案を成立させた。同委員会は12年9月に発足し、せっせと再稼働推進に取り組み始めた。それを受けて安倍は、全面的な原発復活・輸出路線に突き進んだ。

第6に、TPP。最初に「参加を検討する」と言ったのは菅直人首相だが、野田は11年11月「参加のため関係国と協議に入る」と表明、12年に入り各国に政府代表団を派遣し始めた。それを引き継いで安倍は13年3月、TPPに正式に参加表明、甘利明特命大臣を任命しして交渉を
まとめさせた。

第7に、消費増税。野田内閣は12年2月に「社会保障・税一体改革」大綱を閣議決定し、8月に「14年に8%、15年に10%」とする消費税法改正案を成立させた。これをめぐる安倍との駆け引きの中で、やれば負けると分かっている解散・総選挙を打って、同志173人を落選させ、安倍に政権をプレゼントした。その野田が蓮舫の傀儡師になって、一体どのように自民党と対決して政権を奪い返すというのだろうか。見えているのは「自公民大連立」という悪夢の予兆だけである。

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党として出来ていない「政権を獲りに行く」という基本姿勢

野田が代表出馬を決めた理由の1つは、早ければ今秋、遅くとも来年10月までに行われる次期衆院選が「政権交代」を実現する絶好の機会であり、そうだとすると野党第一党の党首はある程度年齢が行っていて首相経験も持ち安定感のある野田が相応しいという「待望論」が党内にあるというのだが、本当か。

まず第1に、誰が代表になるにしても、それ以前に、党として「政権を獲りに行く」という基本姿勢が出来ていない。

今の衆議院定数は465人で、そのうち289人が小選挙区で、残りの176人が比例代表で選ばれる。過半数は233で、もし同党だけで過半数を得て単独政権を目指すのであれば最低でも233人の候補者を立て、しかし全員当選などあり得ないので、250を超え限りなく289全区で立てるくらいの勢いが必要だが、今年5月現在で確定している同党の立候補予定者は179人で、今秋までに「200人を目指す」という方針である。

単独で無理なら連立政権狙いとなる。左に翼を伸ばして共産、社民、れいわなどと組むか、右に寄って維新、国民民主と組むかが大きな分岐だが、数が勝負の連立では右に寄るのが有利に決まっている。とすると、立憲民主党内きっての保守派である野田の出番だというのが、例えば小沢一郎が野田を推している理由だろう。

衆院の議席配分の現状はこうなっている。

次期衆院選で仮に自民党が55議席減の大敗を喫し、公明も2議席減だとすると、自民202+公明30=232で過半数割れ。その分がそっくり立憲+維新+国民+有志の方に回って来たとしても155+57=212、共産とれいわの13が首班指名でこちらの側に加わったとしても225でまだ届かず、ということは自民・公明にもっと大きく負けて貰わないと政権交代は実現しない。立憲の候補者が180人程度しかおらず、しかも維新・国民などと候補者一本化など選挙協力の合意がほとんど出来ていない現状では「夢のまた夢」みたいなことなのである。

従って、野田を代表に選んで維新・国民との連立政権を目指すという方策は、ほとんど冗談であって、小沢を含めてそのように考える人が多いのだとすると、立憲の劣化はかなり酷いということになる。

では枝野幸男だとどうなるのか。これはまた次の機会に考えることにしよう。

(メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2024年8月26日号より一部抜粋・文中敬称略。ご興味をお持ちの方はご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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