自国の利益のためなら手段を選ばない姿勢を貫くとも言われる中国。アメリカでは9月に入って、ニューヨーク州知事の元側近だった中国系女性とその夫が、「中国政府の代理人として彼らの利益のために活動していた」として逮捕され、世界で大きく報じられました。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では、各国の政治家やその周辺に中国の政府や犯罪組織が入り込んでいる現実を解説。その上で、「スパイ防止法」のない我が国の政界に多数のスパイが入り込んでいることはまず間違いがないとの指摘を記しています。
※ご高齢ということもあり、今年3月からメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』の「ニュース分析」コーナーの執筆をスタッフに任せて、自身は「国家論」の連載に集中していた台湾出身の評論家・黄文雄さんが、7月21日に85歳で永眠されました。今後もメルマガは黄さんの思いを継ぐスタッフにより継続されます。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:【中国】各国で相次ぐ中国スパイ事件、日本にも100%潜入
日本にも100%潜入。アメリカでも発覚した中国系米国人のスパイ活動
● 出生や通学の記録なし…「中国のスパイ」疑惑の市長事件が波紋 フィリピンの反中感情に火
中国のスパイと目されていたフィリピン前市長が、9月4日、逃亡先のインドネシアで逮捕され、フィリピンに送還されたとのことです。以前、このメルマガでも取り上げましたが、逮捕されたのはフィリピン・バンバン市のアリス・グオ市長です。
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彼女に対する疑惑は、バンバン市内のオンラインカジノ施設への強制捜査によって、明らかになりました。このオンラインカジノは詐欺グループによって経営されており、ロマンス詐欺やマネーロンダリングの温床となっていました。すでに9人の中国人が逮捕されています。
そしてその捜査の過程で、グオ前市長の関連企業の土地に詐欺グループの拠点があったことが判明、グオ前市長の事件への関与疑惑が浮上したわけです。
しかもグオ前市長は選挙で選ばれてからわずか2年以内で巨額の資産を築いたことが明らかになっており、今年5月、議会上院はグオ前市長に公聴会への出席を命じましたが、体調不良などさまざまな理由をつけて3回以上も欠席していました。
● フィリピン前市長、逃亡先のインドネシアで逮捕 中国の犯罪組織と関与か
しかも、6月には、フィリピン国家捜査局(NBI)が、グオ前市長の指紋が、13歳で中国のパスポートを使ってフィリピンに入国した女性、グオ・フア・ピンの指紋と一致し、彼女が虚偽の情報で出生証明書を申請していたことが判明したことを、フィリピン国会議員が明らかにしたことで、「中国のスパイ疑惑」も浮上したわけです。
フィリピンは今年7月12日、グオ前市長が議会の公聴会への出席を何度も拒否したため、逮捕状を出しましたが、前市長は忽然と蒸発してしまったのです。マレーシア、シンガポール、インドネシアに逃亡したと噂されていましたが、先日、潜伏先のインドネシアで逮捕されたというわけです。
フィリピンに移送されたグオ前市長は、9月9日、上院の公聴会に出頭させられましたが、「嘘をつき続けている」として上院への侮辱罪とされ、捜査が終わるまで身柄を拘束されることになりました。彼女はまた、逮捕されたときに命を狙われたと語ったが、誰に脅されたかは語らないと主張したとのことです。
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なお、「自由時報」の報道では、フィリピン議会上院の議長によると、グオ前市長の国外逃亡を手助けした人物は5冊のパスポートを所持している中国人で、「現在、台湾にいる」とのことです。
● 助菲國華裔女市長郭華萍潛逃者 傳擁5本護照、「人在台灣」
つまり、中国人の手引きによってフィリピンから海外逃亡したということであり、かなり中国または中国人との関係が密接であることは明らかです。そしてその逃亡を幇助した中国人が台湾に潜伏しているということで、台湾での捜索も焦点になってくるでしょう。
「一方的にスパイが入り放題」という状況の日本
一方、アメリカでは、ニューヨーク州知事の元側近とその夫が、中国政府の代理人として活動していたということで、9月3日に逮捕、起訴されました。起訴されたのは、ニューヨーク州のホークル知事の補佐官などを務めていたリンダ・サン被告とその夫です。
● 米ニューヨーク州知事元側近を起訴“中国の代理人として活動”
サン被告は、中国共産党と中国政府の秘密の代理人として働き、台湾当局代表がニューヨーク州の高官と会談することを妨害したり、中国共産党に有利に働くように、ニューヨーク州高官のメッセージを勝手に変更するなど、数多くの工作活動を行い、その見返りとしてかなりの報酬を得ていたとのことです。
政治家やその周辺に、中国の政府や犯罪組織が入り込んでいることが明らかになっています。中国の犯罪組織といっても、中国政府の息がかかっていることは言うまでもありません。もしそうでなければ、中国政府が自ら摘発し、発表するはずです。
現在、海外の研究者やジャーナリストが中国で取材や研究をしにくくなっている現状について、先週のメルマガでお伝えしました。
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ニューヨーク市立大学のケ・リー准教授は、以前は中国を訪れた際、現地の裁判官に直接話を聞いたり、時には法廷で裁判を傍聴したりすることができたが、現在は事実上不可能になったと話しています。
一部の中国人研究者は、「データセキュリティ法」違反を避けるため、海外の研究者とのデータ共有を中止するようになっているとも報じられています。
中国人研究者は西側諸国に自由に出入りし、さまざまなデータにアクセスできる一方で、西側研究者は中国関連のデータにアクセスできなくなっていることで、互いの知識に差が生まれていることが危惧されています。
これはつまり、グローバリズムを利用して、中国は自由に出入りできる国に入り込み、スパイ活動や浸透工作ができる状態である一方で、中国国内では情報へのアクセスを厳しく制限しているということで、諜報活動でも中国が有利な状況になっているともいえるわけです。
それでもスパイを摘発できる法律がある国では検挙も可能ですが、日本のようにスパイ防止法のない国では、一方的にスパイが入り放題という状況です。他国の状況からみても、政界に多数のスパイが入り込んでいることは、まず間違いないでしょう。
自民党総裁選の話題で持ちきりですが、こうした海外での実情を理解し、日本の安全保障問題にきちんと取り組む姿勢の候補者が次の総理にならなければ、日本はさらなる危機へと突き進むことになるでしょう。
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※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2024年9月11日号の一部抜粋です。初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込660円)。
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