「決着」を旗印に掲げ自民党総裁選を戦う小泉進次郎氏。改めて言うまでもなく国内外には未決着の事案が山積していますが、喫緊の課題である北朝鮮による拉致問題に決着をつけることはできるのでしょうか。今回のメルマガ『有田芳生の「酔醒漫録」』ではジャーナリストの有田芳生さんが、進次郎氏が日朝交渉に強い関心を示している理由を解説。さらに日朝関係において自民党新総裁=新総理に何が求められているかについて考察しています。
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※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:小泉進次郎が構想する金正恩総書記との首脳会談
拉致問題解決の具体的な方針はナシ。それでも進次郎が金正恩と会いたい訳
9月3日から8日まで東京都足立区にある「アリオ西新井」イベント広場で、横田滋さんが撮影した家族写真の展示展「めぐみちゃんと家族のメッセージ」が開かれた。主催者によると横田早紀江さんが会場に来る予定はなかった。ところが3日目の5日に姿を見せ、会場の写真を見たあとで取材に応じた。
これまで写真展は全国で行われてきており、そこに生前の横田滋さんや早紀江さんがいると必ず記者が集まった。こんども早紀江さんがいなければ報道されたかどうかも怪しい。早紀江さんは、問題が解決しないことへの「政府の責任」を語ったうえでこう続けた。
「思いとかそんなもの超えてね、言葉が無い。47年も放置されてる。怒りだし、放置されてることが残念でなりません」
「(自民党総裁選について)解決したいと言ってくれる方は1人でもいると思っていたが、いらっしゃらない。そういうことを聞くことが無いのが非常に残念ですね」
横田早紀江さんの思いはよくわかる。自民党総裁選だけでなく、立憲民主党代表選でも、日朝交渉と拉致問題は議論にならない。与党と野党第1党の責任者を決める党内選挙では、優先順位からして国民生活に密接に関わる物価高、社会保障、少子化対策などが重視されるのは当然だ。
沖縄立憲民主党の初代代表だった私の視点からすれば、「沖縄問題」も絶対に議論しなければならないが、どうしても横に置かれてしまう。そこに問題の重心を置くならば、候補者選考の判断のためにも、議員や関係者が質問状を出すなどの努力をすることができる。沖縄立憲民主党が4人の候補者に、辺野古移転や南西諸島の自衛隊配備問題など6項目で公開質問をして、回答を公表することを明らかにした。このように世論を形成しなければ、総裁選や代表選は「大きなテーマ」だけで消化されていってしまう。
自民党総裁選がはじまる前日の9月11日に「家族会」「救う会」が国会議員会館で会見し、横田早紀江さんはここにも出席して発言した。
「なぜ命からがらで助けを求めている人たちを放っておいても平気でいられるのか。47年どんなに頑張っても動かない」
自民党、立憲民主党の候補者に対して「避けているような形では解決は難しい。日本を守らなければという思いで頑張ってもらいたい」と注文を告げた。おそらく今後の討論で拉致問題への言及はあるだろう。とくに政権与党である自民党の総裁選では、北朝鮮と直接に交渉する立場なので、その発言は先方へのメッセージとして届く。
「進次郎首相」ならば日朝交渉の打開は可能か
たとえば『文藝春秋』(10月号)では、取材に応じた6人の候補者にインタビューしている。加藤勝信元官房長官は自民党拉致問題対策本部長だから、ただひとり拉致問題について聞かれている。加藤はまずこう語った。
「私は拉致問題担当相を務めましたが、この間、被害者の帰国が実現せず、具体的な道筋も描けていないことは、ご家族や支援者の方々に申し訳なく思っています」
問われているのは「具体的な道筋」を描き、実際に交渉することである。担当大臣時代も自民党の責任者であるにも関わらず、正直ではあるが、進むべき方向が定まらないのが現状である。加藤は「一日でも早く首脳会談を実現しなければなりません」「いろんなルートを駆使して北朝鮮側と接触していく」と安倍晋三元総理以来の「決まり文句」を繰り返すだけだ。つまりは何も言っていない。
自民党の総裁選は、9月27日まで続く。第1回の投票では決まらず、上位2者の決勝になると見られる。実際には石破茂、小泉進次郎、高市早苗と3者の闘いだ。最終的に「2、3位連合」によって新総裁が決まる。端的にいって石破か小泉だろう。いずれも日朝交渉に関心がある。
石破議員は私と話をしたときに外務省で直接に交渉をしていた人物に話を聴いて欲しいというと、名前をメモしていた。拉致議連の初代責任者であり、平壌に連絡事務所を置くなど、具体的プランを持っている。その方針に「救う会」は強く批判しているから、もし持論を進めるなら相当の抵抗があるだろう。
小泉議員は、抽象的にだが、日朝交渉に強い関心を示している。ブレーンの中心は、社会学者の古市憲寿氏だ。39歳で43歳の小泉議員と世代も近い。古市氏は小泉議員に読む本を勧めるだけでなく、各界の人脈との面談をセットしてきた。作家、写真家、ジャーナリストたちだ。
日朝交渉や拉致問題に詳しいジャーナリストに会ったときには、金正恩総書記と首脳会談をしたいと語っている。そのための道筋や拉致問題の解決について具体的な方針があるわけではないが、同世代の金総書記(40歳)との会談を実現したいとの意思は強い。2代にわたる北朝鮮トップと親(小泉純一郎)子で交渉した歴史を作りたいのだ。
北朝鮮側はこれからも「5人生存、8人死亡」の基本線は変えないだろう。よく金正恩総書記は拉致に関わっていないから、生存者を出してくるだろうとの楽観論がある。ならばなぜこの22年も生存者を出さなかったのかとの疑問もある。いずれにせよ「拉致問題の解決」とは何かを明らかにすることが新総裁=新総理の重い解題だ。石破あるいは小泉総理は、日朝交渉を打開することができるだろうか。
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※ 本記事は有料メルマガ『有田芳生の「酔醒漫録」』2024年9月13日号の一部抜粋です。続きをお読みになりたい方は、初月無料の定期購読にご登録の上お楽しみください。このほか、1ヶ月単位でバックナンバーもご購入いただけます(1ヶ月分:税込880円)。
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