旧統一教会との浅からぬ関係が指摘され、裏金問題でも党の役職停止処分を受けた萩生田光一氏。そんな萩生田氏の選挙区に乗り込み、次期衆院選を「一騎打ち」状態で戦うと宣言したジャーナリストの有田芳生さんに大きな注目が集まっています。今回有田さんはメルマガ『有田芳生の「酔醒漫録」』で、総選挙に向け余念のない日々の様子を綴った日記を「酔醒漫録」のコーナーで公開。そこで、過去に警察官から聞いた衝撃的な「独り言」を明かしています。さらに石破首相が主張する「アジア版NATO」創設がいかに無理筋なものであるかについても別コーナー「評言独語」にて解説しています。
※編集部註:有田芳生さんは10月27日投票の衆院総選挙に出馬予定です。選挙期間中は弊社の規定および公職選挙法によりメルマガを発行することができません。そのため、選挙前と開票後に2回の号外を配信いたします。この機会にぜひご登録をご検討ください。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:石破茂「空想的軍事オタク」路線の蹉跌
「酔醒漫録」──9月27日~10月3日の日記(自民党総裁選の意外な結果、沖縄からの激励、総選挙のための写真撮影など)
9月27日(金)
自民党総裁選の投票日。党員による地方票の結果が入ってきた。八王子での行動を終えて新宿。紀伊国屋書店に行くと高市早苗さん関連の書籍がドーンと積んであった。高市政権になれば研究しなければならないと手に取ってレジに行こうとした。
念のためとネットで確認すると石破茂候補が決選投票で勝利したことを知る。また安倍晋三亜流政権の誕生かと覚悟していたのでホッとした。高市本をもとに戻して石破茂『保守政治家』(講談社)を買った。
石破茂『保守政治家』(講談社)
小守スポーツマッサージへ。政治家が自民党は自民党、表紙が変わっても自民党とコメントするのは分析ではない。表紙が変われば政治手法も違う。対抗する野党は闘う相手を正確に認識しなければならない。
9月28日(土)
14時から神保町で二木啓孝さんと総選挙や統一教会裁判のHPについて相談。ジムに行って身体を動かす。
9月29日(日)
午前中は西八王子へ。「田舎を知ろう、行ってみよう。オンガタマルシェ」に行った。「オンガタ」とは、東京の南西部にある地域で、4つの小さな集落からなっている。甲州街道の裏街道にあたる陣馬街道が伸びている。穏やかな川。里山が広がっていた。森ヨシヒコ市議の運転で須山たかし都議、菱山南帆子さんと歩く。いろいろな店が出ていて、ビールや八王子ラーメンを楽しむ。八王子駅前の通りでも催しがあり、秋川歌舞伎をしばし見ていた。
都心に出てジムで身体を動かして銀座「ささもと」。沖縄から私を激励に又吉健太郎さん(浦添市議)、普久原朝日さん(那覇市議)が来てくれた。立憲民主党本部の大村一郎さんも交えて懇談。衆議院選挙が10月27日投開票との情報が流れている。「11月10日」を想定していたが、慌ただしい動きだ。
9月30日(月)
午後からZoomで統一教会控訴審判決(11月29日)に向けての弁護団会議。控訴審で一審判決が覆ることはないだろう。統一教会に訴えられて勝訴しても終わりでいいのか。反撃訴訟をするかどうかを検討している。
駅の近くの「AOKI」に行ってスラックスを買う。総選挙に向けた着替え用だ。池袋「東武」で食材を買う。
10月1日(火)
国会へ。総選挙に向けて参議院議員に協力のお願い。ジムに行って身体を動かす。
10月2日(水)
総選挙で話すことになるかも知れない内容をノートに筆記。夕方からジムで身体を動かす。銀座「ささもと」。「東京24区」の予定候補者として本部常任幹事会で承認された。ここ数日メディアからの問い合わせ多数。
2009年に板橋区(東京11区)から立候補して下村博文議員に負けたときのことを〈敗戦記 小沢一郎流「どぶいた選挙」を闘って〉(『闘争記』教育史料出版会、2010年)に書き下ろした。パラパラと見ていたら、当時の民主党都議から嫌がらせを受けていたことを記録していた。のちに民主党を除名になるのだが、私が上田耕一郎さんと親しかったことなどを理由に、実際には自民党を支援していたのだ。
警視庁公安部からある警察署長になった警察官と鶯谷で飲んだことを思い出した。「有田さん。いまから言うことは独り言ですからね」と言って署長が口にした言葉には驚いた。「選挙事務所は盗聴されていますよ」。「独り言ですからね」と2度繰り返したことはいまでも鮮明に覚えている。
結局事務所を調べることはしなかった。隠すことなどなかったからだ。いまなら調べて、もし盗聴器が発見されたなら、「被疑者不詳」で告発しただろう。八王子でもすでに経験しているが、小選挙区の選挙はいろいろなことが起きる。
八王子。総選挙のための事務所がまだ決まりません。
「テナント募集中」の物件にスタッフが問い合わせても「決まりました」。
そんなのばかり。面白いねえ。 pic.twitter.com/AuFHA7dFIg— 有田芳生 (@aritayoshifu) October 5, 2024
参議院選挙の全国比例区は自由に思うままに行動できたので、いま思えば牧歌的なものだった。
この記事の著者・有田芳生さんのメルマガ
裏金・統一教会問題の象徴である萩生田議員の東京24区に「刺客」として立つ
10月3日(木)
岩本町のスタジオで島崎ろでぃーさんたちと選挙用の写真撮影。終わってからしばらく行けなくなるジムに行った。Xに衆院選について投稿。
① 裏金・統一教会問題の象徴である萩生田光一議員の東京24区(八王子)に「刺客」として挑戦します。ここは10年前から安保法制に反対する市民を主体に野党が協力関係を持続してきた土地です。事実上の一騎討ちの構図で不正義に毅然と、愉快に、悠々と闘います。全国からの応援をお願いします。 pic.twitter.com/bAYW3D9JNW
— 有田芳生 (@aritayoshifu) October 2, 2024
(1)裏金・統一教会問題の象徴である萩生田光一議員の東京24区(八王子)に「刺客」として挑戦します。ここは10年前から安保法制に反対する市民を主体に野党が協力関係を持続してきた土地です。事実上の一騎討ちの構図で不正義に毅然と、愉快に、悠々と闘います。全国からの応援をお願いします。
② 2022年8月19日。日本テレビ「スッキリ」の特集は萩生田光一議員と統一教会だった。すべてのコメンテーターが萩生田議員の対応を批判した。私は反社会的と警察庁も認めている教団と関係を断つべしと発言。10月になり萩生田議員でなく統一教会が訴えてきた。一審勝訴、控訴審判決は11月29日だ。 https://t.co/nUxgDGSOP7
— 有田芳生 (@aritayoshifu) October 4, 2024
(2)2022年8月19日。日本テレビ「スッキリ」の特集は萩生田光一議員と統一教会だった。すべてのコメンテーターが萩生田議員の対応を批判した。私は反社会的と警察庁も認めている教団と関係を断つべしと発言。10月になり萩生田議員でなく統一教会が訴えてきた。一審勝訴、控訴審判決は11月29日だ。
③ 2022年10月15日。八王子で統一教会批判の講演をしたとき地元生まれの菱山南帆子さんから「東京24区」での立候補を打診されたが、お断りした。さらに市民連合幹部からも依頼があり、23年7月5日に立憲民主党幹部からも出馬要請があった。そして決断にいたる。不正義に対して勝つための選挙です。 https://t.co/kvdIx4qTUR pic.twitter.com/3xAAYenJXM
— 有田芳生 (@aritayoshifu) October 4, 2024
(3)2022年10月15日。八王子で統一教会批判の講演をしたとき地元生まれの菱山南帆子さんから「東京24区」での立候補を打診されたが、お断りした。さらに市民連合幹部からも依頼があり、23年7月5日に立憲民主党幹部からも出馬要請があった。そして決断にいたる。不正義に対して勝つための選挙です。
2022年7月の参議院選挙で惨敗し、23年4月には山口4区補選に出た。誰かがやらねばならない選挙だったので依頼を受けたのだった。いままた八王子での立候補だ。「人生後期の仕事」として選択した課題に悠々と進んでいく。
「評言独語」──きわめて危ない石破政権。「空想的軍事オタク」路線の行き着く先
自民党総裁選で高市早苗候補が勝てば、推薦議員20人のうち13人が裏金議員だったこと、応援団が安倍晋三シンパであることから「安倍亜流路線」が続いた。高市政権誕生にならなかったことは日本にとってよかった。
だが石破茂政権もきわめて危ない。アメリカ保守系シンクタンクのハドソン研究所に寄せた「日本の外交政策の将来」(9月27日)は、戦後日本の構造をくつがえす内容だ。軍事は国家権力の核心である。石破茂「軍事オタク」政権は、安倍政権以上に軍事拡大路線であることを論文は示している。その骨格を検証する。
石破構想は大きく4項目から構成されている。まずは(1)アジア版NATO(北大西洋条約機構)の創設だ。NATOの役割は、集団防衛、危機管理、協調的安全保障で、加盟国の領土と国民を守ることを目的としている。1949年に12か国で創設され、現在は32か国が加盟している。集団防衛(第5条)により、加盟国に攻撃があれば、全加盟国への攻撃とみなして、国連憲章に定める個別的あるいは集団的自衛権を行使して、攻撃を受けた締約国を援助する。
日本政府は国連憲章51条の「集団的自衛権を有していることは、主権国家である以上は当然」としつつ、憲法9条のもとで許される自衛権の行使は「我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきもので、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであって、憲法上許されない」としてきた。安倍晋三議員が2004年1月26日に衆議院予算委員会で質問したとき、秋山内閣法制局長官はこう答弁している。
「集団的自衛権と申しますのは、先ほど述べましたように、我が国に対する武力攻撃が発生していないにもかかわらず外国のために実力を行使するものでありまして、ただいま申し上げました自衛権行使の第一要件、すなわち、我が国に対する武力攻撃が発生していないものでございます。したがいまして、従来、集団的自衛権について、自衛のための必要最小限度の範囲を超えるものという説明をしている局面がございますが、それはこの第一要件を満たしていないという趣旨で申し上げている」
日本に対する武力行使を排除する自衛権の行使は合憲であり、そうではない自衛権の行使は違憲だというのが政府の立場だった。安倍晋三政権が閣議決定で集団的自衛権の限定的行使を容認したが、それは「解釈改憲」であって合憲ではなく違憲である。
石破茂総理もそれは理解しているのだろう。シンクタンクへの論文では、「安保3文書」や防衛予算の国内総生産(GDP)比2%への増加は、閣議決定や個別の法律にすぎないから危機対応のためには「国家安全保障基本法」の制定が必要で、それに続けて「自民党の悲願である憲法改正を行う」としている。憲法を変えなければ集団的自衛権の行使はできないからだ。
アジア版NATO以外でも空想的な世界を広げていく石破構想
もっとも石破茂構想は、論文が公表されてから内外で批判が起きている。アジア版NATOの具体的なパートナーは、アメリカ、カナダ、オーストラリア、フィリピン、インド、フランス、イギリス、韓国だという。石破論文は日米同盟を中核にして「将来的にアジア版NATOに発展させることが可能だ」とする。だが、すでに述べたように相互防衛の仕組みだから、(1)日本の自衛権の定義では加われない、(2)交戦権を認めない憲法9条との整合性もない。外務省幹部が「構想は現実的でない。相手国のために戦って自国民が犠牲になる恐れがあるという覚悟を持たないといけない。東南アジアは乗ってこない」(『日本経済新聞』9月30日付け)とコメントしたのが真っ当な見解だ。
インドのジャイシャンカル外相は、10月1日にワシントンのカーネギー国際平和財団で開かれたイベントで、日本と異なりインドは他国と条約による同盟関係を結んだことがないとし、石破構想について「われわれはそのような戦略的な枠組みは考えていない」「われわれには異なる歴史があり、異なるアプローチの方法がある」と語った(ロイター、10月1日)。
アメリカのNSC(国家安全保障会議)関係者も「混乱を招く」としてきたが、ランド研究所のジェフリー・ホーナン国家安全保障研究部日本部長は明確に否定コメントを語った。「非現実的だ。NATOが歴史的に機能したのは加盟国が(ソ連・ロシア)脅威に共通認識を持っていたからで、現在のインド太平洋地域にはそれがない」。現実性のない石破構想は、したがってアジア版NATO以外でも空想的な世界を広げていく。
アジア版NATO構想では「核共有」についてこう書いているーーー(本記事は有料メルマガ『有田芳生の「酔醒漫録」』2024年10月4日号の一部抜粋です。続きをお読みになりたい方は、初月無料の定期購読にご登録の上お楽しみください。このほか、1ヶ月単位でバックナンバーもご購入いただけます)
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