日本の「存在感の深刻な低下」が目立った日中首脳会談。中国メディアは恐ろしく冷めていた

 

以前にも少し書いたが、中国の対日外交はすでに長期戦と位置付けられ、短期的な成果はそもそも期待されていない。

日本には「アメリカに従属する外交しかない」と中国は見ていて、その上、国民のおよそ9割が中国に対して悪い感情を抱いているとなれば、無理のない判断だろう。

新政権誕生のご祝儀で多少空気が変わることも期待できるが、根本的な改善が見込める状況ではない。

つまり長期的な課題であり続ける日中関係は、大きな摩擦に発展しないためのカードレールがあれば十分なのだ。その結果、相手に反論したり説得を試みるのではなく、「スルー」するという選択となるのだ。

しかも中国には日本にこだわるより重要な外交のターゲットがある。

実は、中国側のそうした思惑を説明するのに今回のASEAN首脳会議は最適な場所だったのかもしれない。ASEANは日本よりはるかに重要だからだ。

また地域の問題や対立を軸に中国とASEANの関係を位置付けようとする日本のメディアに対して、中国は問題の解決よりも関係の深化に重点を置いているというズレが鮮明になったからだ。

例えば、南シナ海問題だ。

日本では例によって南シナ海問題が最大の課題だと、中国とフィリピンの対立が大きく扱われた。

だが、実際の焦点はそこではなかった。

ASEAN首脳会議が始まる直前、シンガポールのテレビCNAが大々的に報じていたように、ASEANの人々の最大の関心事は南シナ海ではなく、パレスチナ問題になっていて、また域内の問題ではミャンマー問題が中心になっていたのだ。

イスラム教徒を多く抱える国が多いASEANの反応としてパレスチナ問題に関心が集まるのは当然だが、いまやインドネシアやマレーシア、ブルネイは明らかにアメリカとの距離を取り、中国に接近する姿勢を鮮明にするほど、この問題が影を差している。

南シナ海問題で中国と激しく対立するのはフィリピンとベトナムだが、そのベトナムは同じ時期、ルオン・クオン(ベトナム共産党書記局常務)を北京に送り込み、習近平国家主席と会談を行うという両にらみ外交を展開。フィリピンとは異なる立場を取った。

対する中国は、対立よりも──(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2024年10月13日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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