女性には多い生理痛。月に一回痛みを感じるのはつらいですよね。今回のメルマガ『糖尿病・ダイエットに!ドクター江部の糖質オフ!健康ライフ』で著者の糖尿病専門医の江部康二先生のもとに送られたのは、糖質制限により生理痛が軽減したという報告と更年期は乗り切れるか?という質問でした。
糖質制限で生理痛が軽減
Question
糖質制限開始から10ヶ月以上経ち、色々と良い変化が出てきました。
長年排卵痛で苦しんでいて、婦人科でもらった鎮痛剤も効かなくなっていたのですが、糖質制限開始から3ヶ月をすぎた頃から痛みが軽くなり、月によっては痛みのない時もあるようになりました。
生理痛もあったので、月の3分の1の不調な状態がほぼなくなり、体調が軽くなりました。
糖質制限が女性ホルモンにも影響があると知り、女性特有の疾患が改善されたのも糖質制限のおかげなのかなと感じています。
更年期で仕事もままならないほど体調を崩すような方を多々見ていますので、自分がなったらどうしようと不安になっていました。
糖質制限を続けることで、女性ホルモンに良い影響があり、更年期を乗り切れるかもしれないと思ったら、気が楽になるのですが、期待できますでしょうか?
江部先生からの回答
まずは女性ホルモンと血糖値と生理について考察してみます。
女性ホルモンは、インスリンにも影響を与えています。
エストロゲンはインスリンの効きを良くし、プロゲステロンは効きを悪くすると考えられています
従って、月経中と月経が終了してしばらく(エストロゲンが上昇する卵胞期)は、血糖値は低めになりますが、排卵後月経前までの2週間程度(プロゲステロンが上昇する黄体期)は血糖値が上昇しやすくなります。
1型糖尿病では生理前に血糖値が上昇することが多いようで、早朝空腹時血糖値は、60mg/dlも上昇することがあり、2型に比べ差が顕著です。
1型糖尿病女性を対象に調査した研究では、70%の人が月経前に血糖が上がり、約半数の人が月経初日に血糖が下がったとの報告があります。
つまり、1型でも個人差があるということです。
2型糖尿病でも、理論的には生理前に血糖上昇傾向があるはずですが、1型ほど顕著ではありません。
個人差はありますが、インスリン分泌能が充分残っている2型糖尿病なら、黄体期にも血糖値上昇が少ないようです。
この記事の著者・江部康二さんのメルマガ
次に更年期障害と糖質制限食について、考えてみましょう。
更年期障害の症状には自律神経症状として「動悸」「発汗」、精神症状として「イライラ」「そわそわ」などがあります。
これらの症状は、糖質摂取による「血糖値の乱高下」により、更年期でなくても生じます。
そして更年期の人が普通に糖質を摂取すると、「ホルモンバランスの乱れ」による症状と「血糖値の乱高下」による症状が、ダブルで生じるので、いわゆる更年期障害の症状が、きつく出やすいと思われます。
血糖値の乱高下は酸化ストレスの大きなリスクとなりますので、それがないだけでも、更年期障害の症状はマイルドになると思います。
酸化ストレスは、がん、動脈硬化、老化、糖尿病合併症、アルツハイマー病、メタボリックシンドローム、パーキンソン病、狭心症、心筋梗塞、慢性炎症などに関与することが明らかとなっています。
それが、最小限になることは、更年期障害予防だけではなく、生きていく上で大きなアドバンテージとなります。
これからも、美味しく楽しく末長く糖質制限食実践で、健康ライフを送って頂ければ幸いです。
今回の記事は、「糖尿病と女性のライフサポートネットワーク」田中佳代準教授の記事(☆)を参考にさせて頂きました。
(☆)糖尿病と女性のライフサポートネットワーク 代表 田中 佳代(久留米大学医学部看護学科母性看護学准教授)
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