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すでに識者の間でも話題に。米トランプ新大統領が“2つの戦争”停戦で「ノーベル平和賞受賞」の実現度

4年ぶりのトランプ大統領の返り咲きを目前に、さまざまな「準備」「対策」に追われる世界各国。国際社会に大きな混乱を招くという予測が大勢を占める中、「ノーベル平和賞受賞」を予想する声も上がっているようです。今回のメルマガ『有田芳生の「酔醒漫録」』では衆議院議員でジャーナリストの有田芳生さんが、トランプ氏のノーベル平和賞受賞の条件とその可能性について考察。さらに北朝鮮による日本人拉致問題の進展に、米朝首脳会談とアメリカによる平壌の連絡事務所開設がポイントとなる理由を解説しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:アメリカが北朝鮮に連絡事務所を設置する目的─石破政権は?

石破政権はどう動く?アメリカが北朝鮮に連絡事務所を設置か

アメリカ大統領選挙の真っ最中にある朝鮮問題の専門家は「表立っては言えないが、トランプが当選すれば、朝鮮問題は確実に動き、北東アジアの情勢は大きく動く」とある小さな会合で語っていた。

トランプ大統領誕生後の2025年世界政治において、アメリカ国内の移民排斥や関税問題とは別に、ロシアによるウクライナ侵略戦争の停止、さらに米朝首脳会談の実現によって朝鮮戦争の休戦から停戦への歴史的画期の実現さえ現実的になる可能性がある。

この課題が実現すれば、ドナルド・トランプ大統領にノーベル平和賞が贈られるのではないかと識者の間でもすでに話題になっている。ジャーナリストの高野孟さんは『日刊ゲンダイ』のコラムでこう書いた(12月19日付け)。

先週、朝鮮総連の旧知の元幹部と懇談する機会があったので、来年は早々に米朝首脳会談を実現し、その場で金正恩からトランプに「朝鮮半島の和平と非核化を実現しノーベル平和賞をもらおうじゃないか」と持ちかけるべきだと提言した。

朝鮮半島の非核化が実現すればいいが、トランプ大統領は北朝鮮の核廃絶ではなく核保有を認めたうえで核管理を打ち出し、さらに朝鮮戦争の終戦宣言を行う可能性がある。沖縄返還時の核密約を行った佐藤栄作元総理さえノーベル平和賞を受賞したぐらいだから、トランプ受賞もあながちありえないことではない。

日本政府や関係者にとって、トランプ政権で北朝鮮拉致問題が進展するのかどうかに関心がある。

ここで「進展」というのは、「政府認定拉致被害者」など被害者が現れるといったレベルではなく、日朝首脳会談に向けて交渉が進むのかどうか、金正恩総書記にトランプ大統領が何を働きかけるのかという問題だ。そのためのポイントが米朝首脳会談であり、ワシントンと平壌の連絡事務所開設である。じつはこの構想はビル・クリントン政権の1994年からあった。

北朝鮮の核開発に対する措置として、クリントン政権は1994年に北朝鮮への攻撃を計画する。しかし、想定される犠牲者が韓国人・米軍をあわせて50万にも及ぶと推測されたことで、計画は中止となった。その後の経過のなかで、核抑止のための米朝枠組み合意がなされ、そこに相互の連絡事務所の開設が盛り込まれた。

さらにバラク・オバマ政権の提案で2009年にも開設がささやかれた。相手国との折衝、情報収集などの必要性があるからだ。トランプ政権になった2018年にも「部分的な関係正常化」が検討され、連絡事務所が提案された。

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「家族会」と「救う会」は連絡事務所設置を頭から否定

国交のない国同士が関係を前に進めるには、水面下交渉、実務者交渉、公式交渉などが必要だが、そのための方法として常駐の事務所(それを「連絡事務所」と呼ぶかどうかは本質的問題ではない)を置くことはプロセスとして必須だろう。

石破茂議員は総理・総裁になる前から日朝交渉を前に進めるために平壌と東京に連絡事務所を置くことを主張してきた。ところが拉致被害者「家族会」と支援組織の「救う会」は、北朝鮮側の「時間稼ぎに使われるだけで意味がない」と頭から否定している。北朝鮮に拉致された可能性を排除できない人たちを救うことを目的とした「特定失踪者会」では「なんでもやってみる意味はある」とする意見から「首脳会談を実現する目的なら構わない」とする意見もある。

石破茂総理の意見も確たるものがあるわけではなく、「水面下の交渉を続けるのは政府として無責任であり、北朝鮮当局との公式な交渉を早期に目指す。その関係づくりのための連絡事務所だ」(『西日本新聞』2020年9月8日付け)と語ったこともあれば、「国家主権の侵害である拉致問題解決のため(北朝鮮に)連絡事務所を作る。成果を一つ一つ検証する仕組みを作る」(『東京新聞』、2018年9月11日付け)と語ったこともある。「関係づくり」であり「成果を一つ一つ検証する仕組み」でもあるというのだ。

じつは日朝ストックホルム合意(2014年)を履行する経過で、平壌に連絡事務所を設置して、北朝鮮側が提出する報告書を専門家が検証していくことが検討された。安倍晋三政権のリアリズムだ。

「何かで動けば必ず変化が生まれる」。これは横田滋さんが何度も語っていたことだ。石破茂政権が日朝交渉を進めたいならば、連絡事務所構想をはじめとして、安倍晋三路線の軌道修正を行わなければならない。

(本記事は有料メルマガ『有田芳生の「酔醒漫録」』2024年12月20日号の一部抜粋です。続きをお読みになりたい方は、初月無料の定期購読にご登録の上お楽しみください。このほか、1ヶ月単位でバックナンバーもご購入いただけます)

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image by: Shealah Craighead, Public domain, via Wikimedia Commons

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ジャーナリスト、テレビコメンテーター。立憲民主党所属の元参議院議員(2期)。出版社に勤務後、フリージャーナリストとして「朝日ジャーナル」「週刊文春」など霊感商法批判、統一教会報道の記事を手掛ける。1995年から2007年まで、日本テレビ「ザ・ワイド」に12年間レギュラー出演。2010年には民主党から立候補、参議院議員となり、北朝鮮拉致問題、差別、ヘイトスピーチ問題などに取り組む。「北朝鮮 拉致問題 極秘文書から見える真実」(集英社新書)、「改訂新版 統一教会とは何か」(大月書店)など、著書多数。

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