全世界が注目する米大統領選で、圧倒的勝利を飾ったトランプ氏。今後の外交を巡っては各方面から早くもさまざまな懸念が噴出していますが、識者はどう見ているのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田さんが、トランプ新政権が国際社会にもたらすのは安定なのか、もしくはこれまで以上の混乱なのかを分析。さらに日本が迫られることになる「大きな決断」について解説しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:トランプ大統領のアメリカが世界にもたらすのは、安定か混乱か?
安定か混乱か。返り咲きトランプが世界にもたらすもの
「みんな忘れがちだが、これまで戦争をしてきたのは常に民主党政権であり、共和党政権下では、ジョージ・W・ブッシュ大統領を除いては、戦争を引き起こしていない。ブッシュ政権については、同時多発テロ事件があり、それに対する報復なしには国を一つにまとめることが出来なかったのでまだ理解できる。皆が恐れるトランプ前政権時にも、口撃は多方面に加えていたが、実際に武力行使に至ったのはシリアへの60数発のトマホークミサイルでの攻撃のみで、彼は戦争を引き起こしてはいないことを記憶しておくべきだ」
「確かにトランプ氏が何を考え、どのような行動を取るかは予測不可能だが、彼はとことん戦争嫌いな人物ゆえに、安全保障面でこれ以上の混乱を引き起こす引き金を引くとは考えづらいので、紛争の調停という観点ではいろいろと動きやすくなると考える」
トランプ氏が第47代アメリカ合衆国大統領に返り咲くことが確定した後、調停グループの皆さんと話しをした際に出てきた分析です。
確かに第2次世界大戦は民主党のルーズベルト政権時に戦われ、日本への原爆投下は同じく民主党政権のトルーマン大統領が行いました。その後、ベトナム戦争は民主党政権のケネディー・ジョンソン政権が引き起こし、共和党政権のニクソン大統領が撤退を決定しています。
そして例外があったとすれば、先述のようにブッシュ政権時にGlobal War on Terrorの一環でアフガニスタンへの空爆が行われ、その後、イラクのフセイン政権の打倒が行われました。20年の駐留の後、結局、民主党政権下で何も達成しないまま、現在のバイデン政権でイラクとアフガニスタンからの米軍の撤退が決定されますが、実はそのレールを退いたのは第1期トランプ政権であったと言えます。
ただの偶然で片づけてはいけない傾向だと思われますが、いかがでしょうか?
ウクライナ戦争はロシアに有利な条件でまとめられるのか
大統領に返り咲くトランプ氏の公約の一つに【ロシアとウクライナの戦争は、自分が当選した暁には24時間以内に解決できる】というものがありましたが、実際には来年1月に正式に大統領に就任してからの作業になると考えるのが自然かと思います。
多くのメディアで「トランプ氏が次期大統領に就任することで、アメリカ政府からウクライナへの支援がキャンセルされるかもしれない。それ以上に、トランプ氏はプーチン大統領と近しいため、その24時間以内の戦争終結は、ロシアに有利な条件でまとめられ、かつすでにロシアに奪われたウクライナ東部と、クリミア半島の支配も恒久化する可能性が高い」という懸念が取り上げられ、報じられていますが、実際にはどうでしょうか?この懸念の内容も理解はできますが、判断にはかなり注意が必要な内容であると思われます。
この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ