下野時にもプーチンに何度も警告を発してきたトランプ
もう10年も前のことですので記憶が薄れているかもしれませんが、2014年にロシアがクリミア半島を強制併合した際、当時大統領だったオバマ大統領とバイデン副大統領も、ロシア、プーチン大統領との関係改善を優先して、ロシアに不当に侵略されたウクライナにとても冷淡だったことを覚えてらっしゃるでしょうか?
それに対し2017年からのトランプ政権は、ロシアによる武力侵攻からウクライナを守るために、ウクライナに武器供与を行い、かつウクライナ志願兵の訓練を(英国と共に)行い、結果としてコーカサス地域でロシアに次ぐ軍事大国に仕上げたことは、あまり報じられていません。
その後、2022年のロシアによるウクライナ侵攻を受け、ロシアへの対抗という観点からバイデン政権は積極的な武器支援を実施していますが、それは「ウクライナが負けない程度のレベル」であり、ウクライナがロシアに勝つためのレベルには及ばないことにも注意が必要です。
つまりバイデン大統領は、これまでの政治家としてのキャリアを通じて貫いてきているロシア嫌いとロシアを信じることが出来ないという思いに基づいた行動を取っていますが、かといってロシアとの関係を断絶し、再び冷戦期のように対峙し、安全保障上の緊張を高めるところまでは考えていないと見ることもできます。
トランプ大統領の性格上、そして前政権時にオバマ政権の方針をことごとく覆したこともあり、今回もバイデン政権の方針をことごとく覆すという可能性は決して否定できませんが、方法はともかく、トランプ大統領は本気でウクライナの戦争を終わらせようと考えていると思われます。
ただ、選挙中のパフォーマンスかもしれませんが、ウクライナがロシアの侵略に対抗し、2年半以上にわたって抗戦している状況に対して、それを「負け戦」と表現したのは気になりますが、トランプ政権の国家安全保障問題の幹部に加わると思われるE.C氏によると「トランプ氏は下野している際にも何度もプーチン大統領と話し、プーチン大統領に対してこの戦争はロシアにとっても負け戦であるので、早急に矛を収める手立てを見つけないといけない、と述べ、さらには核兵器の使用を脅しとして用いることは愚の骨頂であり、やりすぎるとそれはロシアおよびプーチン大統領を破滅に導くことになる、と警告してきている。明らかにロシア寄りの采配をするとは思えないし、そのような戦略を進めることもないと考える。まずプーチン大統領とゼレンスキー大統領が戦いを休止できる口実を作ることが大事と考えている」とのことで、トランプ新政権がどのようにこの問題の解決に向かおうとしているのかを垣間見ることが出来ます。
E.C氏がどのようなポストで新政権に加わるのか、そもそも政権に加わるのかは分かりませんが、政権移行チームには加わり、国防・国家安全保障問題の戦略立案の中枢を担うことになるらしく、同時進行中の複数の紛争案件の終え方について、今後、密接に協議することになるかと思われることから、トランプ新政権はongoing conflictsの解決に高い関心があることが覗えます。
(中略)
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