自らが率いるチームが成果を上げることに強くこだわり、そのためには部下を疲弊するまでこき使うことも厭わない――。昭和平成の時代に比べ減ったとは言うものの、そのような管理職の事例は未だ耳にするものです。彼らのそうした姿勢は果たして外からの働きかけによって改められるものなのでしょうか。今回のメルマガ『『ゼロ秒思考』赤羽雄二の「成長を加速する人生相談」』では、世界的なコンサルティング会社マッキンゼーで14年間もの勤務経験を持つ、ブレークスルーパートナーズ株式会社マネージングディレクターの赤羽雄二さんが、その方法を伝授。顕著な変化が期待できる具体的手法をレクチャーしています。
中途採用で部長になりました。課長が4人です。それぞれの下には5~8人、部全体で35人です。問題は、課長が皆、上しか見ておらず、部下をコマのように動かすだけなので、皆疲弊しています。いい部分はあるので、それを殺さず進めるにはどうすべきでしょうか
Question
大手企業の設計職15年ののち、転職して中堅機械メーカーの部長になりました。課長が4人います。それぞれの下には5~8人、部全体で35人の大所帯です。
人数はいいのですが、問題は課長の姿勢です。会社の社風なのか、前任者のせいなのか、皆、部長である自分のほうばかり見て、課長として本来何をすべきか、部下をどう育成すべきか全く考えていません。部下はコマのように動かし、最大限働かせて課としての結果を出せばいい、というスタイルです。課長全員がそうなので、そのようにしつけられたのだろうと思います。
結果指向はいいことです。ただ、部下が明らかに疲弊しており、退職意向もいろいろ聞こえてきています。このままではだめなのでうまく方向転換したいのですが、どう進めるとよいと思われますか。
赤羽さんからの回答
ご相談どうもありがとうございます。結果指向が強い部下が4人いるのは素晴らしいことで、彼らのKPIに「部下育成」を加えて、フォローすればよいと思います。
今は、売上や案件数、あるいは原価低減額、獲得ユーザー数など、数値的なKPIだけを追う組織文化でしょうから、部下育成に関する指標を加えます。
この記事の著者・赤羽雄二さんのメルマガ
具体的には、KPIの40%を部下育成とします。10%や20%では不足で、彼らの行動は変わりません。
- アクティブリスニングの実施
- 1on1ミーティングを隔週で実施
- 業績・成長目標合意書の実施
- 部下への業務指示・フィードバックの的確さ
それぞれ
- S(120%達成):大変よくできた
- A(100%達成):実施できた
- B(90%達成):残念だった
- C(70%達成):不十分だった
- D(50%以下):全く不十分だった
と評価すれば、定性KPIなのに数量化でき、定量KPIと合算できます。
達成度を1つの数字で示すため、定量KPI、定性KPIを合計100%となるように重み付けをします。例えば、定量KPIが3つそれぞれ20%ずつ、定性KPIが4つそれぞれ10%ずつとします。
KPIに敏感な組織ですので、部下育成が重要な評価対象だと示せば、動きが変わります。
その上で、部下育成に対する価値観の醸成を進めていきます。
具体的には、課長4人に対して1時間ほどのワークショップを月1回、3ヶ月続けます。
- 第1回:上司、部下、オブザーバーの3役でのロールプレイングとアクティブリスニング
- 第2回:週次KPI進捗確認会議の進め方、課題解決のしかた
- 第3回:部下育成のしかた、業績・成長目標合意書
毎回、詳しく説明し、ロールプレイングをしたり、A4メモやアイデアメモを書いて説明しあったり、これまでのやり方との違いを話しあったりすれば納得度が高まります。
その後もフォローを続けることで、タスク実行しか関心のなかった4人の課長に部下を育成する重要性とその具体的なやり方を伝え、見本を示し、成功体験を得ていただくことができます。
そうすれば、顕著な変化が起きると思います。ぜひやってみてください。口頭で数回指摘をする程度では人は変わりません。
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