中国のホンダが新型EVを発表し、宣伝を強化しています。しかし、日刊で中国の自動車業界情報を配信するメルマガ『CHINA CASE』では、少し「嫌な予兆」を検知したとか。不発に終わってしまうかもしれないという懸念を持っている理由とは。
ホンダ中国、新EVシリーズ「イエ」PV、宣伝を強化も増す不安
ホンダ中国は2024年12月20日、公式SNSで、新たに中国市場へ投入する新型EVシリーズ「イエ」の初弾「S7」「P7」のPVを発表した。
東風ホンダが「S7」、広汽ホンダが「P7」となり、姉妹車となる。2024年4月に発表され、2024年末から2025年初頭からの販売が示されていた。
今回のPVは主に外観デザイン面のもので、それなりにきれいに作られ、「格好良い」とは思わせる内容ではある。
しかし、少し嫌な予兆もあって、その視線で見てみると、このイエも不発に終わる可能性がある。
日産との経営統合が話題になっているが、中国での失速に歯止めがかからない状況であれば、それも揺れ動く可能性がある。
複雑なホンダEV
そもそもホンダのEVシリーズは複雑だ。
グローバル展開を想定する「e:」シリーズ、中国展開に力を入れるこの「イエ」、そして東風ホンダの「霊悉」がある。
「e:」シリーズは東風ホンダ、広汽ホンダでそれぞれ2車種展開しているが、中国では完全に不発であり、埋没している。
期待の霊悉も不発?
「霊悉」は販売数ヶ月、価格に競争力があり、ホンダブランドとセダンBEVがマッチすればあるいは、と思われたが、スタートダッシュは完全に失敗の模様。
「e:」シリーズはグローバル展開の、完全に日本主導のものであるから、それが現在の中国市場で歯が立たないのはある意味想定内。
しかし「霊悉」はどちらかというと東風主導、東風の徐々に売れ始めている各種技術を取り入れ、その価格からも中国コスパを活用している状況はうかがえる。
それが伸びないのであれば、ホンダBEVは中国において相当に厳しい。
「イエ」もどちらかと言えば日本主導のきらいがあり、価格としてそもそも戦えない可能性がある。まずは売れる可能性がまだある「霊悉」に注目すべきかもしれない。
競合はModel Y
とはいえ、「イエ」の初弾「S7」「P7」は中型SU BEV。
このカテゴリはテスラ「Model Y」の独壇場であり、中国勢が相次いで「Model Y」キラーならんとラインナップを掲げる激戦区。
「Model Y」が24.99万元(約500万円)~なので、中国勢の「Model Y」キラー候補のほぼすべてと言っていいが、これを下回るエントリー価格となっている。
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イエの価格分析
「S7」「P7」もまずはそれに見習うのが最低条件になるだろう。
さらに言えば、どちらかと言えば、中型SUVとはいえ、「S7」「P7」はやや小さめ。
エントリーは10万元台も見据えなければならないかもしれず、日本主導EVシリーズでそれが可能なのか、疑問だ。
特徴はどうする?
その上で、どう特徴を見せられるか、が課題となる。
例えば中国勢の「Model Y」キラーの一つ、蔚来(NIO)の第二ブランド「楽道」の初弾「L60(ONVO)」は、唯一無二のバッテリー交換がある。
バッテリーの充電時間や充電渋滞、バッテリーの劣化、つまり航続距離心配無用で、バッテリーのサブスクBaaSであれば、車両本体価格は15万元程度となる。
また、吉利(Geely)のハイエンドブランド「ZEEKR」も同様に「7X」を出しているが、Geely最新のスマートドライブを搭載している。
ADASではあるが、実質的に自動運転も可能なほどのものであり、これを強みとして打ち出している。
中国若手の研究開発?
中国勢はもちろん、自国の市場ニーズを熟知してそれに対応するような製品を出し続けている。
製品力だけで言えば明らかに「Model Y」よりもいいものなのだが、どうしても「Model Y」に勝てない、という、極めて難しいのが中国中型SU BEV市場だ。
「イエ」は中国若手が研究開発に加わっている、というのを売りにはしているが、日本側の足かせがない場合、それは有効に発揮される類のもの。
今から見れば、やはりシリーズを連発しているのも悪手だ。新しいものの知名度が定着するのにはやはり膨大な時間がかかる。
出典: https://mp.weixin.qq.com/s/67-8iPyxKGK7OZWunXWDsQ
※CHINA CASEは株式会社NMSの商標です。
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