マツダは中国の長安マツダが手掛けた「MAZDA 6e」を欧州市場のほかにタイにも輸出することを表明しました。日刊で中国の自動車業界情報を配信するメルマガ『CHINA CASE』では、長安マツダという合弁会社の珍しい活用法を使ったマツダの独特な世界戦略について紹介しています。
長安マツダ「MAZDA 6e」をタイに輸出。マツダの独特な世界戦略
マツダと、マツダセールス・タイランド(Mazda Sales Thailand)は2025年2月14日、タイ・バンコクで、グローバル電動車「MAZDA 6e」を2025年に正式にタイ市場へ導入すると発表した。
これは、1月10日にベルギー・ブリュッセルモーターショーでの初公開を経て、今夏に欧州市場で正式販売を開始することを発表したのに続く動きであり、タイは「MAZDA 6e」が世界市場に進出する第二の拠点となる。
「MAZDA 6e」は欧州と同様、中国江蘇省南京市の長安マツダ工場で製造され、タイに輸出される。
長安マツダBEV
長安マツダによれば、長安マツダが手掛ける初のグローバル電動フラッグシップセダンである「MAZDA 6e」は、マツダの100年にわたる自動車製造の精髄と、長安汽車の先進的な電動化技術を融合。
さらに、卓越したスマート機能と「人馬一体」のドライビング体験を通じて、タイ市場、さらには東南アジア(ASEAN)全域の消費者に新たな電動モビリティの選択肢を提供する、としている。
タイ生産拠点投資
マツダはこれに加えて、50億バーツ(約200億円)を投資して、タイの生産拠点であるオートアライアンス(タイランド)Co., Ltd.を年間10万台の新型小型SUV生産ハブとして整備する。
また、タイにおける今後のラインナップとして、2027年までに「バッテリーEV2車種、プラグインハイブリッドモデル1車種、ハイブリッドモデル2車種の計5車種を導入する」とした。
バッテリーEV2車種のうち、1車種が「MAZDA 6e」だと考えられる。
また、マツダにBEV生産体制が整っているところと言えば、長安マツダの南京工場のみのため、もう1車種のバッテリーEVも長安マツダが主体となって企画される可能性が高い。
タイ自動車市場は低迷
タイの自動車市場は近年、販売台数の減少が続いている。
2024年の新車販売台数は前年比26.2%減の57万2675台となり、特に家計債務の増加や金融機関のローン審査基準の厳格化が主な要因。
一方、電動車は急成長を遂げており、その主力はBYDや上汽MGだ。
BYDはタイでの市場シェア5%前後を確保しており、日系各社の数値と比べてまだ小さいが、相応の存在感を示し始めている。
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長安マツダはBEV専業か
ただし、マツダとしてはタイのみを想定しているのではなく、例えば年間10万台の生産を見込む新型小型SUVは、日本やASEAN各国への輸出も想定されている。
また、長安マツダの発表にもある通り、「MAZDA 6e」はタイを皮切りにASEANへの波及も検討されている。
ともかく、マツダが長安マツダをBEVの主力と位置付けたグローバル戦略が着々と進んでいることは間違いない。
今から見れば、このために中国撤退を否定、長安マツダを死守してきた、ともいえるかもしれない。
こうした中国合弁の活用方法は日系はもとより、他の外資でもあまり見られない。マツダのこの独特な手法の成否は不明だが、生き残りをかけた模索ではあるのだろう。
MAZDA EZ-6は苦戦中
ちなみに、「MAZDA 6e」のベースとなった中国専用車「MAZDA EZ-6」は初月、2000台を超える工場出荷台数を記録したが、その後低迷。
また、中国ではBEVとREEVが設定されており、REEVの方がよく売れている。
「MAZDA EZ-6」が中国内である程度存在感を示していかないと、マツダのグローバル戦略における長安マツダBEV専業化も微妙になる可能性がある。
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出典: https://mp.weixin.qq.com/s/zYNPGbBvIaPoyCaOwQ_8UQ
※CHINA CASEは株式会社NMSの商標です。
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