永田町で囁かれ続けているという、今夏の衆参ダブル選挙。はたして石破首相は「大博打」とも言われる同日選に打って出るのでしょうか。今回のメルマガ『有田芳生の「酔醒漫録」』ではジャーナリストで衆議院議員の有田芳生さんが、その可能性を考察。さらに政権内部で検討されだした選挙を見込んだかのような政策について、批判的な目を向けています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:初当選議員の行方と「衆参ダブル選挙」
不信任案可決なら解散も。「衆参ダブル選挙」で自民に吹きそうな逆風
石破茂総理が自民党の初当選議員15人にそれぞれ10万円の商品券を配布したことが政治問題となった。国会でも野党の追及があったが、安倍晋三総理時代にも行われていたことが明らかになり、その原資が官房機密費ではないかと疑いが指摘された。だが、いつしか問題は沈静化してしまった。
自民党初当選議員15人に対して野党第一党の立憲民主党の初当選議員は39人だった。これが多いのかといえばそうではない。2009年8月に民主党が政権交代を果たしたときの初当選議員は143人にのぼった。この政権は3年3か月で崩壊し、2012年12月の総選挙で再び自民党政権が復活した。このとき143人の新人議員は生き残れたのか。
自治体首長選挙に出たり、辞職、引退組は14人。143人のうち12年総選挙に出たのは129人だ。民主党からではなく他党で出た議員たちもいたが、このうち落選したのは118人。民主党で出て当選した2009年初当選議員は、たった5人だった。これは驚くべき数字と現実だ。政治の世界の厳しさが象徴的に表現されている。これは過去のことではない。
2009年の政権交代は積年の自民党政治の悪政に怒った有権者の判断であった。総選挙の雰囲気が政権交代の実現を示していた。たとえば候補者が団地やマンションの前でマイクを持つと、ベランダから多くの住民が顔を出して演説を聞いている。スーパーの前でも通行人が立ちどまり候補者の話を聞いている。全国でこんな光景が見られた。
しかし背景にあったのは自民党政治に厳しい世論の「風」だった。風が強く吹けばグライダーは高く舞うことができるが、風がやめば舞い落ちる。政治家と政党、有権者の関係はそういうところがある。
3年3か月続いた民主党政権の総括は、研究者たちによる検証はあったものの、国民的レベルで行われることはなかった。したがって「悪夢の民主党政権」(安倍晋三)といったわかりやすいレッテルが、メディアの報道も通じて国民意識に入り込んでいった。
いまのコメ不足問題でも農家への個別補償政策は民主党政権の先進的成果だった。朝鮮高校の無償化からの排除は民主党政権のとくに保守政治家の責任が重いが、無償化政策そのものは正しい方向だった。政権交代選挙のスローガンは「コンクリートから人へ」。政策があり、それを表現する言葉があった。
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目前の利益を吹聴して惹きつける石破「縁日の香具師」内閣
昨年10月の総選挙で当選した与野党の初当選議員たちのなかでは、衆参同日選挙が行われて落選するのではないかとの危惧を抱いている者がいる。まだ国会にも慣れておらず、成果もないうちに他党に風が吹けばどうなるか不安なのだ。
それは党内基盤も弱く少数与党の石破茂総理も同じだ。野党は会期末に一致して内閣不信任案を提出するのか。可決されれば総辞職か解散・総選挙となる。小沢一郎氏は石破退陣を予測するが、果たして短期で政権を投げ出すだろうか。解散に打って出る可能性は十分にある。そのとき風はどの政党に吹くだろうか。
トランプ関税政策が世界を翻弄している状況にあって、日本の国民も「実利」を求めることは当然だ。そのときわかりやすい言葉で政策を訴える政党が支持率を伸ばしている。それは往々にして短期的視野で長い射程ではなく、実現可能性とは別次元のことだ。
いまや石破政権内部から消費減税や給付金(3万円から5万円)の支給まで検討されだした。「バナナのたたき売り」で目前の利益を吹聴して惹きつける縁日の香具師ではあるまい。政治家はリスクを負ってでも国の行く末に向けて、長期的視野で総合的な経済政策を打ち出さなければならない。
(本記事は有料メルマガ『有田芳生の「酔醒漫録」』2025年4月11日号の一部抜粋です。続きをお読みになりたい方は、、初月無料の定期購読にご登録の上お楽しみください。このほか、1ヶ月単位でバックナンバーもご購入いただけます)
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