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「外免切替」の厳格化で「外国人の悪質な交通事故が減る」は誤り。逆走事故、右直事故が今後も増え続けるシンプルな理由

外国で取得した運転免許証を、試験一部免除のうえ日本の運転免許証に切り替えることができる「外免切替」の制度。住所確認などが甘すぎるとの批判をうけて警察庁が制度の厳格化に動き始めた。これに関して「厳格化自体は悪いことではない」と評価するいっぽう「外免切替制度の厳格化によって、外国人ドライバーによる悪質な交通事故を減らせると考えているならそれは甘い」と指摘するのは米国在住作家の冷泉彰彦氏だ。(メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』より)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:外免切り替えを厳格化しても事故は減らない理由

「外免切替」の厳格化では、外国人の交通事故はほとんど減らない

外国で取得した外国の運転免許証を、日本の運転免許証に切り替える「外免切替」の制度について、これまで「ホテルの住所でも手続きが可能」といった点が批判されてきたのはご存じの方も多いでしょう。

こうした状況を受けて警察庁は、住所確認などの厳格化に向けた検討をしているそうです。これ自体は悪いことではありません。

「道路交通に関する条約(ジュネーブ条約)」に加盟していない国の免許では、加盟国に旅行した場合に運転はできません。そこで、日本の免許に切り替えれば、条約に加盟しているおよそ100の国と地域で運転が可能となるわけです。

これを狙って日本で「外免切替」をしよう、ということになるわけですが、こんな状況が続けば、日本の免許証の信用度が下がってしまいます。ですから、厳格化は待ったなしの状況です。

ですが、近年増加している外国人によるレンタカーを借りての交通事故の問題が、この「外免切替」制度の厳格化によって改善すると考えているなら、それは甘いと思います。

短期滞在の旅行者が「外免切替」で事故を起こしているわけではない

外国人のレンタカー運転による交通事故は、「右折時」「出会い頭」「逆走」の3つが主とされています。

どれもひどいものですが、例えば「対向車を確認しないで右折し、重大な事故を起こした」とか「信号のない交差点で飛び出して衝突した」、あるいは「高速道を逆走した」といった事故は、かなり悪質性が高いケースとしてニュースにもなっています。

たしかにタチが悪いですし、さらに当て逃げや、ひき逃げの事例も増えており、まさに「凶悪犯」というニュアンスで報道されているのは周知のとおりです。

こうした事故を減らすのは、待ったなしではあると思います。ですが、「外免切替」の運用を厳格化しても、まったく問題の解決にはなりません

というのも、昨今の多くの事故は、通常の短期滞在の旅行者が「外免切替」をして起こしているわけでは「ない」からです。(次ページに続く)

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外国人の事故を減らすには「止まれ標識」「左側通行」「通報先」の3つに着目せよ

「外免切替」などという面倒なことをする人間は、日本以外の第三国での運転を前提としているケースがほとんどです。

そして、ごく普通の短期旅行者は、切り替えて作った日本の免許証ではなく、たいていは合法的な「自分の国の免許+国際免許証」の組み合わせで運転しているのです。

この合法的な「自分の国の免許+国際免許証」による運転は、日本がジュネーブ条約に入っている限りは拒否できません。また、現在のようにインバウンドがたくさん入ってくる状況では、そうした「自分の国の免許+国際免許証」での運転は増えるばかりです。

ではそのうえで、なぜ外国人による事故が起きるのでしょうか?これは非常に簡単です。

極端なことを言えば、理由は2つに集約できます。それは、

「止まれの標識が三角形(国際的には八角形が一般的)であることに加え、英語の“STOP”がないので、運転手は“止まれ”であると認識できない」

「左側通行の運転方法を、右側通行に慣れた運転手は理解しない」

ということです。

これに加えて、ひき逃げ、当て逃げが横行する理由も単純です。それは、

「外国語による事故通報の方法が分からない」

からです。(次ページに続く)

わが国が国際条約を遵守しながら、外国人への規制を強化する方法

当て逃げ、ひき逃げを含む外国人の交通事故を減らすには、前述の3つの問題を改善する必要があります。

そのために、例えば、

「条約上は外国免許+国際免許でも運転可能だが、日本独自の施策として止まれのサインの認識、左側通行の特性に関するクイック講習をオンライン受講しないと、レンタカーが借りられなくなるようにする

といった対応が考えられます。

これにプラスして、各国語に対応した事故通報の電話番号を設定しオンライン講習の際に周知徹底し、さらに、レンタカーのチェックアウト(貸出)の際に、電話番号(またショート・メッセージのIDなど)の通知を交付するのです。

こうした取り組みを警視庁、レンタカー会社、自動車保険会社の3者が協力して徹底すること、何よりもこれが必要です。

繰り返し申し上げますが、外国人観光客によるレンタカー事故は、「外免切替」とはほぼ関係がありません。

止まれ標識の問題」「左側通行」「事故のホットライン」の3つの問題が主要であり、まずは徹底してこの3つを対策するのが急務なのです。

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2025年5月20日号「外免切り替えを厳格化しても事故は減らない理由」の抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。今週のメインコラム「日本経済の静かな破綻を回避する」もすぐに読めます。

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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