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障害年金は「初診日」がすべて。在職中と退職後ではここまで違う支給額

大きな病気やケガにより働くことが困難なった方への助けとして「障害年金」があります。しかし、この障害年金の請求にはいくつか条件があることを知っておかなくてはなりません。今回のメルマガ『事例と仕組みから学ぶ公的年金講座』では、著者で年金アドバイザーのhirokiさんが障害年金は「初診日」が受給額に大きく影響するということについて詳しく解説しています。

初診日が在職中にあるか、退職後にあるかで全く障害年金額が異なる事例

1.初診日は年金額をも左右する。

長い人生において、大きな病気や怪我を負って働く事が困難になるリスクは誰にでもあります。

そのような万が一の事態になった時に非常に大きな力になるものの一つに公的年金が存在します。

公的年金というと老齢の人が貰うというイメージですが、そのような病気や怪我で働く事が困難になって収入が得られにくくなった時に障害年金という年金があります。

老齢だけでなく、病気や怪我で長い事治療が必要になってしまうとか、あるいは死亡するというのはいつ起こるのかは誰も予想できません。

なお、老齢に関してはいつまで長生きするかわからないので、どれだけ長生きしても年金を支給して保障しますねという事ですね。

よってそのようないつ起こるのかはわからないけど、起こってしまうと生活が非常に苦しくなりかねない時をカバーするために公的年金はあります。

そういうのは今までも言ってきた事なので早速本題に入りたいと思いますが、障害年金というのはその病気や怪我でいつ病院に行ったかという事で随分違う結果になります。

いつ病院に行ったかどうかで、年金額にも相当な違いが出る事があります。

特に在職中に病院に行ったか、それともそうではなかったというところが大きかったりします。

障害年金を請求できるかどうかを考えた時にいくつか条件があります。

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その条件の中でまず一番重要なのは「初診日」です。

単純にその病気で初めて病院にかかったのはいつなのかというものではありますが、この初診日で大きく障害年金が異なる事があります。

どうして異なるのでしょうか。

それは初診日に加入していた時の年金制度での年金支給を行うからです。

初診日に国民年金のみだった人は障害基礎年金のみの支給となり、支給額は2級であれば831,700円(昭和31年4月1日以前生まれの人は829,300円)となります。

18歳年度末未満の子がいれば子の加算金239,300円が加算されます。

三人目以降は79,800円となります(令和7年度価額)。

逆に初診日に厚生年金加入中だった人は障害厚生年金の支給になります。

障害厚生年金は過去の標準報酬月額や標準賞与額に比例した年金額になるので人それぞれですが、2級以上であれば上記の障害基礎年金に加えて報酬に比例した年金が支給される事になります。

65歳未満の生計維持している配偶者がいれば配偶者加給年金239,300円も加算されます(2級以上の場合)。

なお、障害基礎年金は2級以上の場合にしか貰えませんが、障害厚生年金は3級までの年金が用意されているので有利な給付を受け取る事ができます。

ゆえにできれば初診日は厚生年金加入中にあった方が有利になります。

もちろん初診日を操作する事は基本的にはできませんが、気をつけるべき時があります。

それが会社を退職する時です。

病気になっているのに在職中に病院に行くのか、行かないのかで後で障害年金を請求する時に大きな違いが出てきますので、できれば辞める前に病院に行ってほしいというのがあります。

そのへんの違いを考えてみましょう。

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2.退職後に病院に行った。

◯昭和48年7月4日生まれのA夫さん(令和7年は52歳)

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20歳になる平成5年7月から平成8年3月までの33ヶ月間は大学生として国民年金に強制加入でしたが、払うのが難しかったので学生免除を利用しようとしました(免除が通れば老齢基礎年金の3分の1に反映)。

ところがお父さんの所得が高かったので免除が利用できずに、納付しないと未納になりました。

よってお父さんが国民年金保険料を支払ってくれました。

このように世帯主の所得で免除が通るかどうかが分かれたので、平成12年4月以降は本人の所得で免除するかどうかを審査する学生納付特例免除が創設されました(将来の老齢基礎年金には反映しない)。

平成8年4月から平成29年6月までの255ヶ月間は厚生年金に加入しました。

なお、平成8年4月から平成15年3月までの84ヶ月間の平均標準報酬月額は35万円とし、平成15年4月から平成29年6月までの171ヶ月間の平均標準報酬額は50万円とします。

さて、A夫さんは平成27年中に体調を崩す事が多くなり、欠勤が目立つようになってきました。

しかしながら個人的には気合いが足りていないんだろうと思っており、そのまま病院には行かずに仕事を続けました。

欠勤や早退が目立つ事で徐々に会社に申し訳なくなり、平成29年になって退職を意識するようになりました。

家族としてはどうもA夫さんの調子がおかしいと思っていても、A夫さんは頑なに病院に行く事を拒みながら、平成29年6月末をもって退職しました。

退職後も寝込む事が続き、家族の付き添いもあって平成29年7月20日(初診日)に心療内科に通院する事になりました。

なお、退職後の平成29年7月から令和元年6月までの24ヶ月間は国民年金の退職特例免除だったとします(将来の老齢基礎年金の2分の1に反映)。

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A夫さんは通院をする事になったのですが、徐々に引きこもりが強くなり症状が悪化していきました。

その後、病名はうつ病と診断され通院を続ける事になります。

仕事を辞めた事で経済的にも厳しくなっていき、妻のパートだけではなかなか支えられなくなり、何か社会保障は無いか調べる事に。

そこで障害年金を見つけて、請求をしてみようと思いました。

条件がいくつかありました。

ーーーー
・初診日→平成29年7月20日

・保険料納付要件→初診日の前々月までに国民年金被保険者期間がある場合は、その3分の1を超える未納があってはいけない。それを満たさなくても初診日の前々月までの直近1年間に未納がなければそれでもいい。

・障害認定日→初診日から1年6ヶ月経っている事、または1年6ヶ月経つ前に症状が固定した場合はその日。

A夫さんの場合は平成31年1月20日が障害認定日。

この日以降、障害年金の請求が可能となります。

・診断書→医師に書いてもらう診断書が等級に該当する事。
ーーーー

A夫さんの記録を見てみると、初診日と障害認定日は満たしていましたが、保険料納付要件が気になりました。

平成5年7月から平成29年5月までの287ヶ月のうち、191.333ヶ月以上の納付期間または免除期間がなければなりませんが未納がないので満たしていますね。

初診日は退職特例免除期間中なので国民年金のみの加入中の時ですから、支給される年金は障害基礎年金のみとなります。過去の厚年期間は一切反映しません。

診断書は障害認定日から3ヶ月以内の診断書を提出します。その結果、2級が認定されました。

なお、家族は65歳未満の生計維持している妻と、18歳年度末未満の子3人とします。

・障害基礎年金2級→831,700円(令和7年度定額)+子の加算金239,300円×2人+79,800円=1,390,100円(月額115,841円)

・令和元年10月から始まった障害年金生活者支援給付金→月額5,450円(令和7年度基準額)

妻に対する加給年金はありません。

よって、A夫さんはこれからは上記の障害基礎年金を受給していく事になります。

ちなみに、一生貰えるわけではなく、今後症状が改善していけば年金は全額停止になっていきます。

状態を審査するために1~5年間隔で診断書を提出していく事になりますが、A夫さんは3年ごと(更新の時に年数が変更になる事もあります)に診断書を提出していく事になりました。

A夫さんは令和4年7月(誕生月)に1度、更新の診断書を提出して、次に令和7年7月に更新の診断書を提出しました。

このようにA夫さんは初診日が国民年金のみの時だったので、受給できる障害年金は障害基礎年金のみとなりました。

なお、子の加算金は子が18歳年度末を迎えるごとに減っていき、最終的には障害基礎年金2級831,700円と給付金のみとなります。

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3.在職中に初診日があった。

◯昭和50年3月6日生まれのB子さん(令和7年は50歳)

18歳年度末の翌月である平成5年4月から平成10年6月までの63ヶ月間は厚生年金に加入しました。
この間の平均標準報酬月額は25万円とします(20歳になるのは平成7年3月からなのでここから老齢基礎年金に反映)。

退職して平成10年7月から平成11年2月までの8ヶ月は退職特例免除(将来の老齢基礎年金の3分の1に反映)。

平成11年3月からはサラリーマンの男性と婚姻し、平成15年3月までの49ヶ月間は国民年金第3号被保険者。

平成15年4月からは収入が130万円を超える見込みになったので、国民年金第3号被保険者から外れてしまいました。

平成15年4月から平成20年10月までの66ヶ月間は未納。

平成20年11月からまた在職し、令和6年3月までの185ヶ月は厚生年金に加入する。この間の平均標準報酬額を40万円とします。

退職して令和6年4月から令和7年中までは国民年金保険料滞納中。


さて、B子さんは令和5年に入ってから精神的に健康を損ない、最初の事例のA夫さんの時のように欠勤などが目立つようになりました。

心配した同僚が一度病院に行った方が良いのではないかとアドバイスして、B子さんは一度病院の方に行ってみる事にしました(うつ病とします)。

初診日は令和5年4月8日とします。

3ヶ月ほど通ったんですが、病院の先生からは一旦休職した方がいいと言われたので、令和5年8月4日から休職に入りました。

4.健康保険からの傷病手当金。

休むと収入が気になったのですが、B子さんは健康保険に加入しているので、休んでる最中は健康保険から傷病手当金が支給される事になりました。

傷病手当金は最大で通算して1年6ヶ月間支給されます。

どのくらい傷病手当金が支給されるのか計算してみましょうーーー(『事例と仕組みから学ぶ公的年金講座』2025年5月21日号より一部抜粋。続きはご登録の上お楽しみください)

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年金アドバイザーhirokiこの著者の記事一覧

佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
このメルマガを読んでいれば年金制度の全体の流れが掴めると同時に、事例による年金計算や考え方、年金の歴史や背景なども盛り込みますので気軽に楽しみながら読んでいただけたらと思います。

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【著者】 年金アドバイザーhiroki 【月額】 ¥770/月(税込) 初月有料 【発行周期】 毎週 水曜日 発行予定

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