岐阜県の西部に位置する神戸(ごうど)町で、2024年に発覚した重大事態いじめ事件。失禁するまで暴力を振るわれた被害者がPTSDを発症するなど、もはや「凶悪事件」と言って差し支えない事案ですが、町教育委員会が見せた動きは信じ難いものでした。今回のメルマガ『伝説の探偵』では、現役探偵で「いじめSOS 特定非営利活動法人ユース・ガーディアン」の代表も務める阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんが、彼らの無責任極まりない対応を公開。その上で、子供ではなく町教委のメンツのみが守られている神戸町の現状を強く批判しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:失禁するまで暴力、神戸町の凶悪いじめ事件は、町教委も滅茶苦茶な対応であった
町教委の滅茶苦茶な対応。失禁するまで暴力、神戸町「凶悪いじめ」事件
岐阜県神戸町重大事態いじめ事件の報告書が未だに開示されない問題で新たな重大な問題が2つ浮上した。
「神戸町いじめ重大事態事件」の全貌
岐阜県神戸町の小学校に通う男子児童が、同級生らから川に引き込まれたり、田んぼに落とされたりする被害に遭い、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断され、神戸町教育委員会が2024年7月に保護者から申し立てを受け、第三者委員会を設けて検証していた。
2025年3月(保護者報告は4月)に第三者委員会が、男子児童が複数の同級生から暴行の被害を受けた4件の行為について「いじめ」と認めた。単なる暴力ではなく「失禁するまで暴力をふるう」など極めて悪質な暴力等が行われていたことが報じられた。
地元記者さん達も相当怒っていたが、神戸町教育委員会は、第三者委員会の調査報告書を、法律に公開しなければならないと書いていないから公開はしないとしている。
言葉では総合的に勘案した上でとしているが、学校の対応や教育委員会の対応にも相当の課題を第三者委員会は示していたという。
また、被害側にも報告書を示しておらず、報告書を書き写すことのみ許可し、数時間かけて書き写したという情報もあるのだ。
これだけでも、神戸町においては知る権利やいじめ防止対策推進法、民主主義、国民主権が通らないという異常事態が起きていると言える大事件なのだが、さらに問題が生じているというのだ。
被害者からの「学習支援要請」を突っぱねた神戸町
失禁するまで暴力を振るわれる、こうした経験をしたことがある人はあまりに少ないだろう。こうした被害を受ければ、酷いPTSDとなることは、当然だろうし、必要なケアやサポートを公的に提供する自治体側が、妨害と嫌がらせしかしなかったら、一家族はたまったものではない。
実際に、被害側は必要なケアやサポートを求めても学習の進捗や教材、テストなども学習として提供をしていないという。これだけの被害を受ければ、被害児童は登校することはできなくなってしまうが、神戸町はといえば、そうした支援体制はないという。無いから、たとえ憲法で学習権が認められていても、学習支援はしないと恥知らずにも言ってのけるというのだ。
多くの自治体では不登校等に対応するために学習支援体制を確保しようと動いているし、予算の都合でないところでは、県と連携するなどして確保しようとしているのにもかかわらず、神戸町は全く応じないというのだ。
つまり、神戸町で不登校になったら、学習は受けたくても受けられないということを意味するわけだ。確かに地域差はあるのは事実だが、支援がないからやりませんというのは、あまりに酷いだろう。
独自調査を開始して聞くこととなった「とんでもない話」
神戸町凶悪いじめ事件の被害側は、調査報告書がもらえないなど滅茶苦茶な二次被害を受けているわけだが、こうした被害から様々な調査を独自に進めることになってしまった。
そして、岐阜県でとんでもない話を聞くことになったのだ。これについては、議員さん達も同様の質問をして同様の答えを得ているから、事実に他ならない。
何を聞いたのか。
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「重大事態いじめ」を把握していない岐阜県の異常
岐阜県では、市区町村管轄で発生した重大事態いじめの報告を、市区町村からの報告がない限り把握していないというのだ。
毎年、文部科学省が「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」を発表する。これで、いじめの認知数や不登校の数、生命や酷い心身の苦痛があったとする「重大事態いじめ」の数などがわかるわけだが、文科省は各都道府県からこの数を集めるのであり、神戸町が岐阜県に報告しなければ、数に反映されないことになるのだ。
私自身、こうした報告等は当たり前に行われているものだと思っていたが、被害側とその協力者等が岐阜県から聞いた話によれば、市区町村が報告してこないケースも普通にあり、それについては把握が出来ず、強制力もないから報告しろと命じることもできないから、時期が来れば把握している数で報告することになるという。
つまり、神戸町は被害側に報告書を提供することもなく岐阜県にも報告せず、ともすればこれは文科省の白書にも反映されることはないというわけだ。被害側が県に報告するように打診しても、やっと報告すると言い出したが、被害側としては正当な調査報告書が手元にない以上、所見書を出すことも厳しい。
この記事を書いている間、神戸町は被害側の情報開示に6月12日に応じると回答があったようだ。少しホッとする反面、なぜここまで町教委が抵抗をし、被害側に妨害し続けたのか、一方で、これが当たり前にように出てきてしまうことが問題ではなかろうか。
本件を第一報等で取材をした記者によれば、学校側の問題なども強く指摘されており、町教委にとっては不都合だったのではないかという見方もあるようだ。
国(文部科学省)はいじめの増大やその内容の酷さなどから、しっかりとまずは把握する必要があるなどとして、令和5年3月10日に各教育委員会に依頼をしている。
令和5年3月10日いじめ重大事態に関する国への報告について(依頼)
令和5年4月1日より、文部科学省はこども家庭庁とともに、各学校又は学校の設置者が行ういじめ重大事態調査について、必要に応じて助言等を行い、運用改善を図る等の取組を行うこととしています。このため、各学校及び学校の設置者におかれましては、いじめ重大事態の発生に関する報告、いじめ重大事態調査の開始に関する報告、いじめ重大事態調査報告書の提出に御協力いただきますよう、よろしくお願いいたします。
● 令和5年3月10日いじめ重大事態に関する国への報告について(依頼)
ここが「依頼」ということだから、岐阜県の言うことは確かなんであろうが、これでは、胸三寸で報告しないことも容易にできてしまうということになろう。
いじめ法は議員立法であった。関わった議員から私はこういう話を聞いたことがある。
まさか当然に法律を守るはずの公務員が、当たり前のように法律を破るとは思いもしなかった。
実際は、悪用もするし、法の理念やどういう経緯でできたかなどを無視して、条文に書いていないからやらない、ガイドラインは法律じゃないと守らないなどが横行しているわけだ。もはや、自治体、行政が「いじめをなくすために」真っ当な目的のもと動いていることすら疑わなければ、こどもたちを守れない状態なのかもしれない。
神戸町で起きている今の問題を見れば、守られるのは町教委のメンツくらいで、こどもは守られないという異常事態が起きているわけだ。
いじめの被害者や重大事態被害者、その関係者は自分たちの事件が文科省の白書に反映されているか、首長報告されているかなどを調べた方がいいだろう。そして、こうしたいい加減なことが起きる現在を放置しないためにも、法改正は必須だろう。
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「いじめ法改悪」を目指しロビイングを展開する教育界
神戸町の事件では資料が多く、およそ700ページに及ぶ資料の提供がありました。
あらゆる報告をしない。頑なにしない。報道機関にも答えない。
聞く限りですが、周辺でも同様被害が起きている模様で、それぞれ調べたら、もっと類似事例が出てきそうです。
そして、日本全国から相談を受けていると、同様に報告しないケースや調査報告書を渡さないケースはかなり多く発生しています。さらに、驚くべき酷いいじめ被害が公表されているケースや学校や教育委員会の酷い隠ぺいが明らかにされているケースで、第三者委員会が再発防止のために研究して提案した内容が実施されているかなどは、実はブラックボックス化されており、検証が行われるのは数例しかないという体たらくです。
これではいじめはなくならないし、酷い被害は今後も数が増えるものと思われます。
こうなると、教育界は、いじめ防止対策推進法のいじめとなる定義の条文を緩く歪めるしかないのか、いじめ法改悪を目指す圧力とロビイングをしているというという情報ばかりが入ってきます。努力する、力を注ぐ方向が違いますよね、先生方。
実際のところ、重大事態いじめが起きた際のガイドラインは、改悪された部分が多く目立ちます。専門家がパブリックコメントをしても、それは採用されなかったという嘆きを多く聞きましたし、パブリックコメントの期間が異常に短く、そこからの反映も、すでに決まっていたとわかるくらい異常に早かったですから、一応、パブコメしとく?みたいな感じだったと思います。
まあ、利権があって、そこに群がる族議員がいて、組織交流等もあってのことだから、ある種の勢力が浸透してしまえば、こういう不正的なことも起きるんでしょう。末期症状かと思いますが、完全に終わったとなるまでは、孤軍奮闘でも満身創痍でも、目の前に、私の背後に、たくさんの傷ついた子どもたちと真っ当なその家族がいるわけですから、力を尽くしたいと思います。
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