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中国で「新車販売数」水増しに悪用か?急増する「ゼロキロ中古車」の“正体”

中国の自動車市場で、販売実績を装う新古車の存在が深刻な問題となりつつあります。日刊で中国の自動車業界情報を配信するメルマガ『CHINA CASE』では、一部では新車販売台数の1割近くが架空販売である可能性も指摘されているこの新古車問題について詳しく語っています。

中国で新古車問題が爆発、新車販売の約10%が架空登録の可能性

中国では近年、ほぼ走行距離のない登録済未使用車、いわゆる「零公里二手車(ゼロキロ中古車=新古車)」が急増している。

表面上は「お得な中古車」として受け取られがちだが、実際には販売統計の水増し、価格体系の破壊、在庫過多など、構造的なひずみをもたらしている。

どこもかしこも販売増を喧伝しなければ生きていけない巻きの中国自動車業界の今を、まさに象徴する出来事で、中国当局も規制に動き始めている。

零公里二手車とは?

零公里二手車とは、走行距離が100km以下の登録済車両であり、形式的には中古車とされながらも物理的には新車に近い。

こうした車両が新車価格よりも5万~10万元(約100~200万円)安く再流通している実態がある。

もともとは平行輸入車などに多く見られた手法だが、ここ数年で状況が変わった。

新エネルギー車(NEV)の急速な普及や生産能力の過剰化、販売ノルマの圧力、政府補助金制度の刺激などが重なり、一部の完成車メーカーは、実際に販売できていない車両を一旦自社やディーラー名義で登録し、「販売済み」として販売統計にカウント。

その後、在庫として抱えられた車両が中古車市場に流出する。

目先の目標目当て

このスキームにより、メーカーは短期的には販売目標を達成し、売上の前倒し計上や資金回収が可能となる。

しかし長期的には市場全体に大きな歪みをもたらす。

まず、新車市場の価格体系が崩れ、正規ディーラーの在庫圧力や粗利の低下を引き起こす。

また、車両の実際の使用状況と登録データが乖離することで、業界全体の「実需」が見えづらくなり、次年度の生産計画や投資判断に誤りをもたらすリスクがある。

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中国新古車販売の実態

中国汽車流通協会などによると、中古車全体における新古車の存在感が急増している。

2023年のある地域では、中古車取引全体のうち、5~15%が新古車であったという報告もある。

特に広東・江蘇・河南・山東などの大都市圏で比率が高いとされている。

特定地域では中古車販売のの3台に1台が新古車というディーラーも報告されている。

「EVの墓場」の源流?

以上などの情報をもとに推定すると、2025年現在、中国の新車販売台数のうち約6~12%がこの新古車として即中古市場に流通している可能性がある。

3000万台規模の年間販売に対して、およそ200~300万台が「見せかけの販売」として登録・計上された後に、中古車として再放出されている計算になる。

最悪の場合、これらの車両は売り手も買い手もつかず、未稼働のまま物流拠点や屋外駐車場に放置される「実態不明の在庫」となる懸念すらある。

いわば「EVの墓場」の源流をなしている可能性もある。

中国当局の動き

こうした問題に対し、中国商務部(日本の経産省に相当)は2025年5月27日、業界団体とOEMを招集して新古車に関する緊急会議を開催。

今後は、登録=販売とする統計の見直し、実際にユーザーへ納車された実績に基づく新たな販売指標の導入、ディーラーへの過剰ノルマ是正など、制度面からの是正が検討されている。

一方、中国共産党機関紙『人民日報』も、NEV業界における「無制限な価格競争」を批判し、「価格戦には未来がない」と断言。内需だけに依存した非効率な販売モデルからの脱却が求められている。

数字の錬金術

結局のところ、中国の新古車とは、一見すると「お得」でありながら、実際には在庫と統計、制度の隙間を突いた“数字の錬金術”に他ならない。

このまま見過ごせば、市場の健全性を損ない、消費者の信頼をも裏切る結果となりかねない。

本来の役割に立ち返るなら、新古車は平行輸出など海外市場での活用や、特定用途での限定流通にとどめ、国内市場では「実需に基づく販売」を徹底することが、業界の持続可能性を担保する唯一の道である。

出典: https://auto.gasgoo.com/news/202506/4I70426358C108.shtml

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image by: Tricky_Shark / Shutterstock.com

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