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「楽な選択」がすべてを変える危険性。習慣と経営に潜む“下位変換”のワナ

100年以上続くような企業では、トップが代替わりし、そのたびに会社が傾く可能性があります。それは、なぜなのか?自己改革小説の第一人者である喜多川泰さんは、自身のメルマガ『喜多川泰のメルマガ「Leader’s Village」』の中で、長く続いた価値を失わせる思考の癖が影響しているとしています。

習慣の上位変換者であれ

創業から100年以上続く企業のことを百年企業という。2020年の調査では、百年企業は世界に80,066社あり、そのうちの33,076社、全体の41.3%が日本にある。これは圧倒的1位なんですね。

200年企業となるとさらにその割合は圧倒的になり、全体の65%が日本の企業になる。

創業から百年以上続く会社を作ろうとすると、トップも何代も代替わりを繰り返さなければならない。このタイミングで会社が傾くことが少なくない。

僕が大好きだった洋菓子屋も、「先代がなくなって、息子さんの代になってから味が変わった」とみんなに言われていて、客足も鈍くなっている。

実際に食べてみると僕にはその味の変化がわからなかったけど、みんなはその変化がわかっているのだろうか。もしわかっていないけど、「誰かがそう言ってた」という理由だけで「味が変わった」と言っているのであれば人の評判というのは恐ろしいものだ。

「今まで続けてきたものを変える」

これはとても勇気がいることだが、時代の変化などもあり、どうしても変更を余儀なくされることがあるのもわかる。理由は様々だ。

例えば、美味しいと評判の洋菓子屋があるとする。

いろいろなものにこだわって守ってきた味だ。

ところが代が変わり、時代も変わり、それまでの製法を変えたくなった。

合理的な経営を考えて、様々な部分を見直そうと新しい社長が考える。

「先代は、毎日神棚に手を合わせていたけど、意味がないからやめよう」

「先代のときは、作業前に会社の理念を社員全員で朗唱していたけど、そういう時代じゃないからやめよう」

まずは、そういう直接製品とは関係なさそうなところから改革を進めるとする。

この二つを変えたとき、あなたは味に変化があると思うだろうか、それとも思わないだろうか。

「ある」と思う人にとっては「ある」。

「ない」と思う人にとっては「ない」のだろう。

ちなみに僕は「大いにある」と思っている。

その後、味に直接関係ありそうな部分も変えていこうとする。

「先代は、北海道の特定の酪農家にお願いして仕入れたバターしか使わなかったが、値段が高く安定供給が難しいから、生産量を増やすために中国から安いバターを仕入れて、ほんの少しだけ混ぜよう。味はほとんど変わらないから」

そうやって「ほとんど変わらない」を理由に変更を繰り返していく。

さて、その洋菓子店の味はどうなるだろうか。

先代とは「まるで違うものになる」というのは簡単に想像つくだろう。

「ほとんど変わらない」を繰り返すと「まるで違うもの」が出来上がるのだが、本人にしてみれば「ほとんど変わらないはずなのに」と思っているのだ。

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人には考え方の癖というものがある。

何かを変えなければならないとか、変えたいとなったときに、常に上位変換しようとする人と、下位変換しようとする人がいる。

下位変換というのは、「ほとんど変わらないんだったら、こっちの方が楽じゃない」という方を選ぼうとするということ。

一方で上位変換はその逆。

ほとんど変わらないかもしれないけど、そこに意味があるとわかったなら大変な方向に自らを変換する人だ。

この話でわかるように、引き継いだ会社を存続させることができるリーダーは、「何かを変えたい」と考えたときに常に上位変換を考え方の癖で持っている人だ。

逆なら会社は衰退する。

とりわけ下位変換は、「こっちの方が楽だから」という理由で選ばれることが多いが、「ほとんど変わらない」のは一つの変更であって、その思考壁のまま経営を続けていけば何もかも変わるのは時間の問題なのだ。

間違えて欲しくないのは、僕はマンガもオーディブルも否定していない。

マンガを楽しむこと、オーディブルを楽しむこと、どちらも素晴らしい経験であり、それぞれからしか得られない学びだってある。

ただ、僕が言っているのは、「本を読みましょう」それだけだ。

「漫画ではなく本を読みましょう」

「オーディブルではなく本を読みましょう」ではなく、「本を読みましょう」だ。

マンガも読めばいいし、オーディブルも聞けばいい。でもそれ以外に本も読みましょうと言っている。なぜなら本を読んで育つ心は、マンガやオーディブルといった他のものでは代用できない部分だと考えているから。

だけど、聞いている人の中には下位変換が起こる人がいる。

「本じゃなくて漫画でもいいですか?」

「本を読むのが苦痛だから、オーディブルでもいいですか?」

そうやって、本の内容を習得しても「ほとんど変わらないでしょ」って思っているからだろう。

もしそうならその人には教えてあげたい。

本を読むというのは、そこに書かれている内容を自分のものにすることだけが目的ではない。

手に入れたいものが「中身」だけなら、どんな手に入れ方であっても同じでしょって思っても無理はない。

だが、それでは本が「頭の栄養」になるのかもしれないが「心の栄養」にはならない。

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多くの人は「情報」を得ること、つまり、その本に書かれた内容を手に入れることが読書の目的だと思っている。それは読書がもたらす恩恵のほんの一部でしかない。実はそれ以上にもっと大切な目的が読書にはある。

それは内容によってではなく読書という経験によって心を育てることだ。

読んでいるときに情景を浮かべたり、読む手を止めて思想に耽ってみたり、感じたことを書き出してみたり、本を閉じて本の手触りを噛み締めたり、途中で戻って読み返してみたり、そういった思考の旅に出ているときに心は育つ。

そして自分の意思がなければ読み進めることも、情景を浮かべることもできないという書籍が持つ強制力によって、あなたの心は否応なく鍛えられる。

「よき習慣」

というのはいつだって上位変換だ。

別の言い方をすれば、よりよい未来のために、今まで以上に面倒だったり苦痛を感じたりすることや苦手なことに挑戦しなければならないことを意味する。

「大変な思いはするけれども、ちょっとでもよくなるならそっちの方がいいでしょ」と考える人でなければ、自分が考えもしなかった素晴らしい未来を経験することなどできない。

あなたが何かを変えたいと思ったとき、いつも上位変換をする人なら安心していい。

僕が、「本を読んで欲しい」と伝えたとき、「自分は今までマンガしか読んでこなかったけど、ちょっと本にも挑戦してみるか」と自然と考える人だ。

その姿勢は常にあなたを、自らを鍛えるベクトルへと運んでいくだろう。でもそれによってよき未来がやってくるのだ。

「本読むのが大切なのはわかったけど、自分はマンガしか読んだことがないから、ほとんど効果が変わらないんならそっちの方がいいなぁ」と自然と考えてしまう人は、その考え方の癖を変えた方がいい。

下位変換を繰り返しても、驚くような素晴らしい未来はやってこない。

というわけで今週の一言。

「どうせ習慣を変えるんだったら、ちょっとしんどいけどこっちの方がいいに決まってるんだから頑張ってみよう」

そういう考え方の癖を持つ人であれ。

こんな話をするとまた質問が来そう。

「先生、自分はKindleを使ってるんですけど、紙の本じゃなきゃダメですか?」とかね(笑)。

おそらく僕の答えはわかったでしょ。

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image by: Shutterstock.com

喜多川泰この著者の記事一覧

1970年生まれ。2005年「賢者の書」で作家デビュー。「君と会えたから」「手紙屋」「また必ず会おうと誰もが言った」「運転者」など数々の作品が時代を超えて愛されるロングセラーとなり、国内累計95万部を超える。その影響力は国内だけにとどまらず、韓国、中国、台湾、ベトナム、タイ、ロシアなど世界各国で翻訳出版されている。人の心や世の中を独自の視点で観察し、「喜多川ワールド」と呼ばれる独特の言葉で表現するその文章は、読む人の心を暖かくし、価値観や人生を大きく変えると小学生から80代まで幅広い層に支持されている。

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【著者】 喜多川泰 【月額】 ¥880/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎週 金曜日

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