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ナフサ供給不足「流通の目詰まり」という表現は本当に適切か?Google日本法人元社長が問う高市政権の説明責任

中東情勢の緊迫化を背景に、原油やナフサといった基礎原料の供給不安が、日本の製造業にも影響を及ぼし始めています。住宅設備メーカーによる受注停止や納期遅延といった動きが広がる中、政府はその要因を「流通の目詰まり」と説明しているが、この表現をめぐっては現場との認識のズレを指摘する声も出ています。今回のメルマガ『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中』では、著者の辻野晃一郎さんが、供給不足なのか、それとも流通の問題なのかという議論の行方を追っています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです

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「目詰まり」ってなんだ?

イラン戦争により、原油や原油に由来するナフサなどの原材料の供給に懸念が高まっていますが、高市首相は、4月5日にXに以下のような投稿をしています。


昨日の一部報道番組で、ナフサの供給について、「日本は6月には供給が確保できなくなる」との指摘がありました。 しかし、ナフサについては、既に調達済みの輸入ナフサと国内での精製2ヶ月分に加え、ポリエチレン等のナフサから作られる中間段階の化学製品(川中製品)の在庫2ヶ月分(ナフサ精製が仮にゼロであっても需要を満たす供給ができる期間)で、少なくとも国内需要4ヶ月分を確保しています。 また、足下では、国内でのナフサ精製の継続(約110万kl/月相当(2024年平均))に加え、中東以外からのナフサ輸入量も倍増すること(約90万kl/月相当)によって、昨年の平均的な国内需要量(約280万kl/月)を満たすにあたっても、前記の川中製品の在庫(ナフサ換算で約560万kl)を使う量も減らすことができ、その在庫期間は半年以上に伸びます。 加えて、現在、その川中製品の世界からの新たな調達も強化しようとしています。 したがって、当該報道にある「日本は6月には供給が確保できなくなる」という指摘は事実誤認であり、そのようなことはありません。 これからも、国民生活と経済活動に影響を生じることのないよう、安定供給の確保に全力で取り組んでまいります。

しかしその1週間後、TOTOがナフサ不足を理由に、ユニットバスやシステムバスの新規受注を停止し、LIXILも同様の理由で、ユニットバスなどの納期未定の対応を始めました。

これに対して、赤沢経産大臣などから、ナフサの供給不足問題は、「流通の目詰まり」が原因との説明がなされ、それを受けてのことなのか、TOTOは新規受注の再開に向けた準備をしている旨を同社のHPで告知しています。

● 【第3信】中東地域の情勢悪化に伴う製品供給への影響について

しかしながら、ナフサについて、「当面の必要量は足りている」と繰り返すばかりで、供給不足の原因を「流通の目詰まり」と断じる政府の説明に不信感を持つ人は少なくないと思います。私も以下のようにXに連続投稿しました。

原材料の供給不足が不安視される中、企業にしてみれば、今ある在庫をできるだけ持たせようと考えるのは当然のことです。使い切ってしまえば商売が成り立たず、細々とでも製品を作って出荷を続けなければ、社会的責任も果たせません。企業としてのやむにやまれぬ当然の対応を、「目詰まり」などと表現することはミスリードですし、企業側に責任を押し付けているかのような印象を禁じ得ません。政府としては、ナフサが足りなくなる、という前提のもとに対策を考えねばならないにも関わらず、責任逃れのような印象も受けます。

この「目詰まり」という言葉は、政府にとって都合が良い言葉のようで、昨年のコメ不足によるコメ価格高騰の際にも同じ説明をしていました。しかしながら、根本原因は生産量不足に他ならず、農水省は後から「目詰まり」ではなかったと訂正しています。
高市首相のXのアカウントでは、その後も「中東情勢の影響による供給の偏り・流通の目詰まりについて「○○分野」でお困りの事業者の皆様におかれましては下記にご連絡ください。」という同じ内容の投稿がいくつかなされており、○○の部分を書き換えて、それぞれの分野の担当省庁窓口に連絡をするように促しています。

政府には、今回の多方面にわたる原材料の供給不足の現状を正しく把握した上で、国民にはその現状をできるだけ正確に伝えると共に、本来政府がやるべき停戦に向けた外交努力や、供給先確保に向けた外交努力に全力集中して欲しいものです。(本記事は『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中 』2026年4月24日号の一部抜粋です。この他、「メインコンテンツ」や「読者の質問に答えます!」、「スタッフ“イギー”のつぶやき」など、レギュラーコーナーも充実。この機会にぜひご登録をご検討ください)

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辻野晃一郎この著者の記事一覧

辻野 晃一郎(つじの・こういちろう):福岡県生まれ新潟県育ち。84年に慶応義塾大学大学院工学研究科を修了しソニーに入社。88年にカリフォルニア工科大学大学院電気工学科を修了。VAIO、デジタルTV、ホームビデオ、パーソナルオーディオ等の事業責任者やカンパニープレジデントを歴任した後、2006年3月にソニーを退社。翌年、グーグルに入社し、グーグル日本法人代表取締役社長を務める。2010年4月にグーグルを退社しアレックス株式会社を創業。現在、同社代表取締役社長。また、2022年6月よりSMBC日興証券社外取締役。

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【著者】 辻野晃一郎 【月額】 ¥880/月(税込) 【発行周期】 毎週 金曜日 発行

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