パキスタンの調停失敗から一転、トランプ氏が突如発表した停戦の3週間延長。しかし、イラン政府内では強硬派の革命防衛隊が実権を握り、交渉は事実上決裂状態にあります。ホルムズ海峡封鎖、ヒズボラへの大規模攻撃命令、湾岸諸国インフラ破壊の脅威——中東情勢は予断を許さない局面を迎えています。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では、著者の津田慶治さんが、イラン戦争の最新動向と台湾有事における日本の立ち位置、そして秋に到来が確実視される世界的食糧危機について、緊迫した分析を展開します。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです
イラン戦争はどうなるのか?
パキスタンの調停が最終的に失敗して、再度戦争が始まると思いきやトランプ氏が無期限の停戦延長を行う。これで、今後の戦争がどうなるのかを検討しよう。
トランプ氏は、アラグチ外相がホルムズ海峡を開放すると述べたのに対して、米国はホルムズ海峡の逆封鎖を解かないとした。これにより、イラン側も封鎖を継続している。
23日には停戦期限を迎えたが、トランプ氏は停戦を3週間延期するとした。交渉のためのイランの提案を待つという。
イラン強硬派が実権掌握、交渉拒否
しかし、イラン政府内で、穏健派のガリバフ国会議長が交渉団から辞任して、実質的に強硬派の革命防衛隊の司令官アフマド・ヴァヒディ少将が実権を握って、米国との交渉を拒否している。最高指導者モジタバ・ハメネイ師も革命防衛隊に意思決定を委ねているという。ということで、停戦交渉自体が開かれないようである。
イランは、ホルムズ海峡を通じて、中国に原油が売れないことになり、5億ドル/日の収入がなくなったというが、鉄道貨物として原油を運べるはずであるが、タンカーに比べるとその取扱量は少なくなる。一帯一路構想で中国とイランを結ぶ鉄道網が整備されている。このため、生活必需品の輸入も可能である。イランは別にロシアとの間でカスピ海ルートもある。
米国の逆封鎖で拿捕するのは、イランとイラクからの原油タンカーとイランとイラクに行くコンテナ船であり、その他の船は米国サイドでは通れる。ということで、ホルムズ海峡での通行料を取り、船を通して、その収入で戦争経費を得る方法があり、イランは、それを実行することになる。このため、ケララ島近くの水域外に機雷を敷設して、通れないようにした。
湾岸諸国インフラ攻撃の脅威
サウジは、紅海側ヤンプーに原油をパイプラインで送り、そこで引き渡しているので、大きな減収になっていない。UAEもインド洋沿いのファライラへパイプラインで原油を送り、大きな減収になっていない。
しかし、停戦が終了したら、イランは、まず、このパイプラインを攻撃すると公言している。また、イエメンのフーシ派により、バブ・アル・マンデブ海峡も封鎖すると脅している。
また、ホルムズ海峡近くを通る海底ケーブルを切断するとした。このケーブルを切断させると、ドバイなどの湾岸都市はクレジットや銀行のATMなどの金融機能がなくなり、観光客はいられなくなる。
また、サウジやクウェート、カタール、バーレーンなどの石油施設や淡水化施設なども破壊するという。
このため、UAEを除く湾岸諸国は、米国に自国の基地からの攻撃をしないでほしいし、今後は米国との安全保障協定を破棄するという。
サウジはパキスタンと安全保障協定で1700人のパキスタン軍をサウジに入れた。また、米国にイランとの戦争を終結してほしいと要求している。イランは米国がイランを破壊する分、米軍を置く周辺国のインフラに対して、攻撃すると述べている。
そして、イランは、アラグチ外相をパキスタンのイスラマバードに訪問させた。トランプ氏も、イランが会談を要請してきたとして、クシュナー氏とウィトコフ氏をイスラマバードに送った。
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トランプ氏の合意条件とイランの新提案
トランプ氏のイランとの合意条件は以下通りで、
- イラン凍結資産の数十億ドル(最大200億ドル)の解放
- 濃縮に関する日没条項(5~15年)
- 高度濃縮ウラニウムの確保を必ずしも行わない可能性
- イランの弾道ミサイルに関するものは一切なし という内容であり、イランの主張の多くを認めた内容であるし、オバマ元大統領がイランと合意した内容に近い。トランプ氏の負けでゲームから降りたいようだ。
しかし、イランは、交渉開始の前提条件として、米国のホルムズ海峡の封鎖を解除することを条件としている。イランはトランプ氏の足元を見ているが、トランプ氏は封鎖を解除しないことで、交渉は成立しなかった。トランプ氏は25日、イランとの戦闘終結に向けた交渉団の派遣を取りやめたと表明した。
そして、逆に米国はイラン港湾封鎖を拡大して、インド洋、太平洋でもイランに向かう船やイラン出航の船を拿捕するというが、それではインド、ロシア、中国との直接的な海軍戦争のリスクを孕むことになる。アラビア海をすり抜ける封鎖対象の船があるためで、米艦船10隻程度では全体を見れないことによる。航行信号をオフにするので、対象船の発見も難しい。
一方、この交渉取りやめを聞いたネタニヤフ首相は、ヒズボラに対する大規模な攻撃の開始を命じた。停戦が終了し、戦争再開になる。
しかし、アラグチ外相がパキスタンに手渡した新提案は、 1.米国の非侵略保証で、米国(および同盟国)からのイランに対する将来の攻撃に対する法的拘束力のある約束で、国連安全保障理事会によって確認されるもの! 2.ホルムズ海峡のイラン支配で、イランが完全な支配を維持し、通過の規制や船舶への通行料徴収を含む可能性がある(主要な経済的・戦略的要請)。 3.イランの核活動に対する10年間の制限、ただしイランのウラン濃縮権の承認で、イランの核濃縮活動(イランによると民生目的)の正式な承認で、イランは核兵器の製造をしないことを約束。 4/5.すべての一次および二次制裁の解除で、イランに対する直接的な米国制裁、およびイランと取引する第三者に対する制裁の撤廃。 6/7.国連安全保障理事会およびIAEAのイランに対する決議の終了(その核プログラムおよびその他の問題に関連するもの)。 8. イランに対する戦争被害の賠償/補償(インフラ、軍事など)。 9. 地域からの米軍撤退(中東の基地からの戦闘部隊)。 10.すべての前線での敵対行為の停止で、地域戦争の終結で、イランの同盟国/代理勢力(レバノンのヒズボラなど)に対するもの、およびより広範な「抵抗の枢軸」グループを含む。 と、あまりトランプ氏の提案と違わない。違いは、ホルムズ海峡の支配権の有無、賠償の有無ぐらいである。トランプ氏の現状の状態からすると容認可能にも見える。
トランプ氏は、この提案を見て、交渉が可能と判断したようである。ということで、イランのアラグチ外相は明日パキスタンに戻るという。
核攻撃計画と暗殺作戦の行方
しかし、交渉できずに戦争再開では、トランプ氏はイランのアフマド・ヴァヒディ将軍が含む革命防衛隊幹部の暗殺を検討している。このため、ヴァヒディ将軍は、バンカーバスター爆弾にも耐える深い地下司令部に移った。一方、イスラエルは停戦継続に反対で、すぐにでも攻撃できる準備をしている。
ネタニヤフ首相は、トランプ氏に電話して、レバノンとイランでの攻撃を認めてほしいと要求していた。ガッツ国防相は「イランを石器時代に戻す」と述べて、核攻撃を仄めかしている。
トランプ氏は、核攻撃を計画したが、ケイン参謀長に拒否されてできないし、国会議員などの罷免活動も活発化することで、できないことになり、代わりにイスラエルが行う可能性が出てきた。
また、イランの高濃度核物質を奪うために、イラン山岳地帯に数百人の米軍を送る計画も、想定被害が大きく、トランプ氏は国内の支持率が下がると拒否したようである。
また、トランプ氏は、湾岸諸国からは戦争を止めてと要求され、イスラエルからは早く戦争を再開して欲しいと要望されている。
米軍は大量の兵器を中東に送り、いつでも戦争再開ができる体制を整えた。この状況を見て、中国などの多くの国では、自国民に対してイランから出国するようにと警告が出ている。特に中国の警告は、前回も攻撃が始まる1日前であったことを考えると、戦争の再開も近い可能性がある。
しかし、トランプ氏が取りえる最良の選択は、停戦の継続か、交渉の妥結しかない。そして、ペトロ人民元化を少なくとも防止し、サウジなどの湾岸諸国にペトロダラー制の存続を交渉することだ。そして、戦争資源を台湾周辺に持っていくことである。嘘をついて米国を戦争に引き込んだイスラエルには我慢を強いることである。
※4月26日朝9時現在の状況であり、非常に早く事態が動くので、X等で事態の推移を追いかけてください。
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日本の状況—食糧危機への備え
米国は、イラン戦争でミサイルなどを大量に消費したことで、中国の台湾侵攻を押さえるのに必要な爆弾が不足して、作戦の変更を行うという。中国への防御地点を下げて、海上封鎖などにして、大きな反攻をしないようである。その分、日本が前面に出る必要があることになる。
中国は、イランで自国防空システムが無価値であったことや、対艦ミサイルで空母を撃沈できると宣伝していたが、それも無価値であったし、中国版イージス艦は簡単に沈没したし、F-35と同じ性能と豪語していたJ-20も簡単に撃墜されたことが判明して、攻撃に対して抑制的な態度になっている。これらを開発した責任者はすべて、粛清された。中国製兵器はガラクタであることが証明されている。
このため、台湾侵攻を行うかどうかは定かではないが、日本は、その時の対応を検討する必要がある。米国は早期にイラン戦争を止めて、戦争資源を早く台湾周辺に持ってくる必要がある。
現時点、国民は安価なガソリンがあることで、まだ楽観的である。高市首相は、米国が輸入禁止したカナダ肥料を手配して日本の農業に必要な肥料の手配ができていると声明を出しているが、米国も豪州もブラジルも肥料不足になり、作付けが減少している。
特に米国は、カナダからの肥料輸入を制限した上に、中東産肥料も手に入らずに、二重の不足の原因になっている。このため、肥料価格が高騰して、米国農家は作付けを減らしている。この米国産農産物が減少すると、次には牛肉、豚肉の不足が起きることになる。食糧不足の連鎖が起きることになる。
ということで、現時点でも、秋口には、世界的な食糧不足になることが確実になってきている。食糧不足にもなることを想定した事態に、どう備えるかを議論する必要がある。備えあれば、憂いなしだ。
ということで、食糧備蓄が国でも個人でも必要になっていると思える。
さあ、どうなりますか?
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