11月3日の米中間選挙まで、残り2カ月半となりました。共和党が下院の多数派を失う公算は次第に大きくなり、下手をすると上院までも、という見方が広がっています。そもそも中間選挙は与党に不利で、過去22回のうち20回は与党が議席を減らしてきました。加えて関税戦争もイラン攻撃も行き詰まり、MAGA派の外縁からは離脱者が出始めています。メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』では、ジャーナリストの高野孟さんが、最新の議席予測とトランプ大統領の心身をめぐる懸念を読み解きながら、選挙結果が捻じ曲げられかねない危うさまでを論じます。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです
プロフィール:高野孟(たかの・はじめ)
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。
米中間選挙まで2カ月半、焦点はトランプの「負け方」がどの程度で済むかに絞られてきた!
11月3日の米中間選挙まで残すところ2カ月半、正確には8月17日から数えて78日間となった。多くの予測は、共和党が下院で多数派の座を明け渡す公算が次第に大きくなっている上、下手をすると上院でもそうなる可能性がないではないという見方で、ほぼ一致している。
現在の議席バランスは、435議席の下院では、共和党が過半数ぎりぎりの218に対し、民主党は212で、無所属1、欠員4。全議席が改選となる。米選挙分析会社「クック」の7月30日時点の予測では、共和党優勢212、民主党優勢が205で、残り18選挙区が接戦とされていて、このうち13以上を民主党が獲れば逆転する。
100議席の上院では、共和党53に対し民主党47で、うち非改選は共和党31に対し民主党34。残りの35選挙区が改選となる。同じく「クック」の予測では、共和党は非改選を合わせ優勢49、民主党は同じく優勢47で、残り4議席で接戦が続いている。共和党は4のうち2を制すれば過半数を得るが、民主党は4を全部勝たないと過半数に届かないが、その可能性は絶無ではない。
そもそも中間選挙は与党に不利
中間選挙は、大統領そのものを選ぶのではないため、熱狂の度合いが違い、2年前に大統領とその与党に投票したのに今回は投票に行かないという人もかなりいる。そのため、中間選挙では与党が苦しい戦いを強いられるのが普通で、下院では1938年以来の過去22回の中間選挙のうち20回で与党が議席を減らした。クリントン政権以降では、9・11テロ後のアフガニスタン戦争真最中の2002年11月に中間選挙を迎えたブッシュ・ジュニア政権を唯一の例外として、8回中7回で与党が負け、ネジレ議会に陥っている。
ましてやトランプ政権の場合は、共和党への忠誠度とは何の関係もない、MAGA派の人々のトランプ個人への崇拝によって成り立ってきたので、そのギャップはさらに甚だしいものとなって当然だろう。加えて、昨年春に「これでたちまち米国経済は復活する」と鳴り物入りで始めた全世界への「関税戦争」は、当たり前のことながら失敗に終わり、それで「えいやあ」とばかり始めたイランに対する戦争も、数週間で勝利すると豪語していたのもどこへやら、むしろ長期戦覚悟のイランに翻弄されて出口を見失う中、国内のガソリン代の高騰など経済状態の悪化が支持率のさらなる低下を招いている。
その結果、コアな狂信集団はしっかりと残ってはいるものの、その外縁ではMAGA派からの落ちこぼれが出始めていて、たぶんこの人たちは11月は投票に行かないことの方を選ぶだろう。
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トランプ自身の耄碌化がますます深刻
もちろん、ホワイトハウスの側近らはこの事態を重く見ていて、トランプを叱咤激励して11月に向かって全力疾走させるべく日程を強化しようとしている。しかし、CNNなどが最近特に詳しく報道している政権内部の様子を見ると、トランプ自身の心身の耄碌はますます深刻化していて、「俺は旅行は好きだ。だけど今は余り好きじゃない。俺が応援に行っても当選するかどうか分からないようなやつのところは、行かなくてもいいんじゃないか」などと言ってスタッフを困らせている。
また、8月13日付NYタイムズでは医師のジョナサン・レイナーが、トランプの主治医バーバベラ博士の発表や頻繁に公開される映像を見る限りで懸念される大統領の健康状態への疑念を7つ列記して、米軍最高司令官の責任は民間パイロット、航空管制官、スクールバスの運転手よりはるかに重いのだから、定期的な健康診断とその結果の公表を義務付けていないのはおかしいと指摘しているが、その通りだろう。
世界史上で最強の軍隊と言われる米軍を率いる責任者が、年老いているのは仕方がないとして、心身共に衰えてイザという場合にまともな対応が出来ないのかもしれないという疑念を持たれているにもかかわらず、それを客観的に判断する材料を内外に提供することを義務付けられていないというのは、まさにそれこそが最大の世界の安全保障上の脅威である。
この状況のままだと、11月が近づいて共和党の苦戦が伝えられるにつれ、トランプ陣営はこれまでよりもさらに酷い卑劣な手段によって選挙結果を捻じ曲げようとするに決まっていて、国連と国際社会は中立的な「選挙監視団」を米国に送り込むことを考えなければならないかもしれない。
全く、民主主義の御本家でボケ老人が大統領にのし上がって民主主義そのものを破壊するという馬鹿げた事態である。
(メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2026年8月17日号より一部抜粋・文中敬称略。ご興味をお持ちの方はご登録の上お楽しみください。初月無料です)
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