日本を蹴散らした韓国と台湾の地位を今度は中国が?「世界の下請け」で力を付けたメーカーが「上流」を目指した結果

 

中国の製造業をさらに強化する「国から民間へ」というシフト

さて、そうした中でも中国は官民挙げて製造業の高度化を推進してきた。途中、「中国製造2025」を打ち出し、政策的推進力とすることを目指した。

しかし「2035年までに製造強国の中位、2049年にはトップレベルになる」という具体的な目標を立てたことが中国をライバル視し、同時に中国からの輸入増(対中貿易赤字拡大)を警戒した国々の反発を招き、ほどなくこの政策はトーンダウンを余儀なくされた。

もっとも、かといって中国が製造業の高度化を諦めたわけではなく、間もなく「新しい質の高い生産力(新質生産力)」というワードが打ち出された。これは2023年9月、習近平国家主席が黒竜江省を視察した際に初めて言及した言葉だ。

新質生産力とは、イノベーションが主導的役割を果たし、従来型の経済成長方式と生産力発展アプローチから脱却し、ハイテク、高効率、高い質という特徴を持ち、新たな発展理念に合致した先進的な生産力を指すとされている。

このメルマガでも注目すべき六大産業(量子技術、エンボディドAI、ブレイン・コンピュータ・インターフェース、6G、バイオ)については触れた。

では、その新質生産力はどうやって達成されるのか。

新質生産力を実現するための政策は、主に党の政治局会議、国務院、そして全人代という三本柱で進められているが、その一つの集大成として出されたのが10月9日に中国共産党中央と国務院が共同で出した「新質生産力を発展させるための意見」である。

長い文書なのですべてをここで紹介することはできないが、最も大きな変化は「国から民間へ」というシフトだろう。

清華大学グローバル証券市場研究院秘書長で、新質生産力の専門家として知られる遅永勝氏は、自ら執筆した記事の中でそのことに触れている。

記事の中で遅氏は、文書が〈「企業の科学技術革新主体地位を強化する」ことを明確に提起した〉ことに注目している。

具体的には、「企業研究開発準備金制度の確立」「企業研究開発費用加算控除比例の引き上げ」「国家戦略需要に合致する企業研究開発プロジェクトを手続に従い国家プロジェクトに格上げ」「能力の高い民間企業が国家重大技術の発展任務をリードし担うことの支援」「大企業による中小零細企業に対するサプライチェーンの開放」などである。

中国を見回すとアリババやファーウェイ、BYD、テンセントなど、目立つのは名前の知れた民間企業のパフォーマンスだ。しかし、一方で莫大な利益を稼ぎ出し、科学技術全般の発展に率先して貢献してきたのは国有企業であった。そして「国高民低」を意味する「国進民退」は、ここ数年の中国経済を象徴する言葉であり続けたのだ。

コロナ禍以降顕著であったこの流れは本当に変わるのだろうか。そうだとすれば、中国の製造儀容は今後さらに強化されることになるだろう。

少なくとも笛は吹かれたようだ。

(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2026年10月11日号より。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録下さい)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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