福岡で6年連続No.1を誇る、ちょっとヘンな自動車教習所のヒミツ

aoyama20171213
 

少子化や若者の車離れなどの影響もあり、市場規模が縮小傾向にある自動車教習所業界にあって、ユニークさが大受けし大人気となっている教習所が注目を集めています。今回の無料メルマガ『MBAが教える企業分析』では著者でMBAホルダーの青山烈士さんが、福岡県内で6年連続No.1の入校者数を誇る南福岡自動車学校の戦略・戦術を分析しています。

だれをバスに乗せるか

福岡県で6年連続No.1の入校者数を誇る人気の自動車教習所を分析します。

南福岡自動車学校(自動車教習所)

戦略ショートストーリー

福岡近隣の若者をターゲットに「ホスピタリティ精神を持って相手を楽しませる」という姿勢に支えられた「楽しく免許が取れる」等の強みで差別化しています。

社長扮する「かめライダー」が広告塔となり、注目を集めるとともに、マンツーマン教習やオリジナル学科授業などの独自の取り組みで入校者の支持を得ています。

■ 分析のポイント

だれをバスに乗せるか

2011年に江上社長が、南福岡自動車学校の社長に就任し、翌年には、先細る会社の将来を危惧して戦略の転換を図っています。具体的には、どの教習所でも行われているような教習生に滞りなく免許を取らせる姿勢からホスピタリティ精神を持って生徒を楽しませるという姿勢に転換しています。

その結果として、13年度から15年度の間に約100人の社員のうち47名が退職したそうです。短期間に社員が約半数も辞めてしまうことは、経営者にとっては大きな痛手だと思いますが、江上社長は、方針を変えることはありませんでした。この江上社長のぶれない姿勢が、南福岡自動車学校が再び成長することにつながった一つの要因だと思います。

今回、紹介したい戦略上、重要な考え方が、「だれをバスに乗せるか」ということです。企業が成長を目指す上で、戦略に合わない方が同じバスに乗っていると滞ることが多いです。戦略に合わない方が、大勢を占める場合には、より顕著です。まずうまくいきません。なぜなら、どんなに素晴らしい戦略を描いても、それを実行する人が、同じ方向を向いていなければ、戦略を具現化することは、できませんからね。特に大きな変革(戦略の転換)を実現する際には、協力者(同じ方向を向いてくれる人材)の比率を高めることが必要です。

経営者にとっては、厳しい判断となりますが、これを実現するには、戦略に合わない方は、バスから降りてもらう必要性も出てきます。恐らく、江上社長も、戦略の転換により、多くの社員が去っていくことは覚悟していたのでしょう。

変革には痛みが伴うということ、既存の社員の大半が賛成するような改革案(戦略)では、企業が変革を実現することは難しいということを理解されていたのだと思います。そもそも、多くの人が反対するくらいでないと変革とは言えないですからね。今までの延長線上では困難な局面を打破することは難しいということを、改めて感じた事例でした。

今後の南福岡自動車学校が教習所という枠を超えてどのような打ち手を打っていくのか楽しみですし、注目していきたいです。

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