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NHK受信料「義務化」に批判の声。支払う法的根拠はあるのか?

どうして、見もしないNHKの受信料を払わなければいけないのか、どうも納得がいかないという方も多いかと思います。しかし、なんと今度はテレビのあるなしに関わらず、かならず受信料を支払わされるかもしれません。無料メルマガ『知らなきゃ損する面白法律講座』では、自民党の小委員会が出した驚きの提言を紹介。さらに、受信料を支払わなければいけない法律的根拠について論じています。

NHK受信料義務化への検討開始?

自民党情報通信戦略調査会放送法の改正に関する小委員会は、9月24日、NHKや総務省に対して、NHKの受信契約の有無に関わらず受信料を徴収する「支払い義務化」を求める提言をまとめました。委員会は、テレビの有無に関わらず世帯ごとに料金を徴収するドイツの公共放送の例などに言及し、これらを参考にしつつ制度を検討するように求めています。NHKの受信料については、なぜ徴収されるか疑問に思っている人も少なくないようです。今回はNHKの受信料について見てみたいと思います。

NHKの受信料を支払わなければならない根拠はどこにあるのでしょうか? 放送、日本放送協会、放送事業者の規律に関する内容を定めた法律として放送法があります。その64条にNHKの放送を受信することの出来る受信設備を設置した人は、NHKと放送の受信についての契約をしなければならない、という条文があります。

NHKの放送を受信することの出来る受信設備の中には、テレビだけではなく、チューナー内蔵パソコンやワンセグ対応端末も含まれます。そして、「設置した人」とあるので、テレビ・チューナー内蔵パソコン・ワンセグ対応端末等がある場合には、NHK視聴していなくとも受信契約をしなければならず、従って受信料の支払いもしなければならないということになります。

なお、ラジオだけを設置している場合には、放送法64条ただし書きにより放送受信契約は必要ないことになっています。

しかし「見ていないのになぜ支払いが義務付けられるのか納得いかない」「受信料が高額である」等、支払いに対する不満の声も多くあがっています。NHKの受信料の支払いについては、これまでいくつか訴訟で争われています。

契約を結ぶ義務があることは否定せず、受信料については支払わなければならないというのが裁判所の判断ですが、NHKとの受信契約がいつ成立するかについては判断が分かれています。

「NHKの申し込みから、承諾に通常要する相当期間を経過した時点で受信契約は成立し、NHKは、承諾の意思表示を命じる判決を求めることなく、受信契約に基づく受信料の支払いを請求できる」(東京高判平成25年10月30日)と判断する一方で、同じ年の別の判決では「NHKの契約申し込みと、受信者承諾意思一致しなければ受信契約は成立しない」(東京高判平成25年12月18日)という異なる判断も出されており、判断が分かれている状態といえます。

この2つの判決の異なる点は、前者ではNHKが契約を申し込んで相当期間(2週間と言われています)たてば契約が成立してしまうのに対して、後者では裁判所による判決確定してやっと契約が成立する、という点にあります。

その後も簡易裁判所においては、受信料の支払いを巡る裁判がいくつも提起されているようですが、契約の成立時期についてはまだ統一した見解出ていないように思われます。

このような状況の中で、受信契約の有無にかかわらず受信料を徴収するためには放送法の改正が必要ですが、これに対しては事実上の税金化であるという批判が出されています。NHKは、受信料をめぐって上記のような裁判が多く行われているということを真摯に受け止め、義務を負わせる人々に対して説明を尽くして理解をしてもらうことが何より必要なのではないでしょうか。

image by: Wikimedia Commons

 

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