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NYマラソンには、日本人が学ぶべきヒントがビッシリ詰まっている

来年2月、記念すべき10回目の開催となる東京マラソン。すでにさまざまな盛り上がりを見せていますが、『メルマガ「ニューヨークの遊び方」』では、東京マラソンをさらに素晴らしい大会にするためのお手本にすべきNYCマラソンの魅力と運営形態を、感動秘話を交えつつ紹介しています。

それぞれの思い

通常、ニューヨーク在住の市民ランナーが、確実にニューヨーク・マラソンに参加したいと思ったら、「ナイン・プラス・ワン」(9+1 Program)という資格をクリアする。これをクリアすれば、抽選ではなく、確実に走る権利をもらえる仕組みになっているのだ。

まず、「ナイン」とは、ニューヨーク・マラソンを主催するニューヨーク・ロード・ランナーズ(New York Road Runners、略してNYRR)というNPO団体が認定した、最低、9つのマラソン大会に参加するという条件。

現在、ニューヨークでは、年がら年中、数キロからハーフ・マラソンまで数多くのマラソン大会が、頻繁に開催されているのだが、その中から、NYRRが認定する大会に9回出ることが、最初の条件になる。

なお、NYRRが認定する大会は、だいたい毎月3~5つほど開催されているため、例えば、無理をせず毎月1つずつのペースでも、9ヶ月あれば、この条件をクリアできる。続けて9つの大会に参加して、一気に条件をクリアすることもできるが、その場合でも、2~3ヶ月はかかる。

「プラス・ワン」の「ワン」は、NYRRのマラソン大会の運営のために、何かしら所定のボランティア活動最低1回はするということ。

いろいろなボランティアの仕事があるが、例えば、NYRRが主催するマラソン大会の前に、事務局にゼッケンを取りにきたランナーに、ゼッケンとTシャツなどの記念グッズを手渡すなどの仕事だ。そうしたボランティア仕事をやると、この条件をクリアできる。

なお、忙しかったり、何かしらの理由でボランティアの仕事ができない方のために、1,000ドル1ドル=120円換算で12万円)支払えば、この条件をクリアすることも可能になっていて、その場合は、「ナイン・プラス・ワンケー」(9+$1K Program)が適用される。

それ以外に、抽選枠もあるがまず当たらない。海外からの参加者には、別途、旅行者枠があり、その他、障害者枠や招待選手枠や、寄付をした方向けのチャリティー枠もあって、寄付募集のため、「クラウドライズ」(crowdrise)というクラウドファンディング・サイトにニューヨーク・マラソン用の特設コーナーも設けられてたりする。

〔ご参考〕
「クラウドライズ」(crowdrise)のニューヨーク・マラソン用のコーナー

いずれにしても、一般市民が確実にニューヨーク・マラソンに参加するには、短くても2ヶ月、長ければ1年弱かかるこの方法を選ぶことになる。みんな、9つのレースを走ったり、ボランティア活動をするなど、事前にたっぷり時間と手間をかけて、準備することになるので、大会本番へ向けての思いも、自然に、強まっていく

みんな、それぞれの思いがある。

すでに出場資格をクリアしていたのに、本番のわずか2ヶ月前に脊髄を手術し、自殺することまで考えたという女性の学校の先生(今年の大会で、最後のランナーになった方)や、病気の子ども達のためのKeep A Child Alive Organization(略してKCO)というNPO団体の認知度アップ&寄付の呼びかけも兼ねて参加した人気歌手のアリシア・キースさんのエピソードをブログ上でご紹介した。

その他にも、9・11の米国同時多発テロご主人を亡くした4人の子どもを持つお母さんや、アルツハイマー病の患者の方々のために毛糸の編み物をしながら走るという男性(このジャンルのギネス記録保持者)や、9・11の米国同時多発テロで父親を亡くし、ボストン・マラソンでの爆破テロを目撃し、それでも走り続けるという男性、知的障害を持つ妹のために走るという女性など等、ニューヨーク・マラソンには、多くの方々が様々な思いを抱いて参加されており、地元紙が、そうした方々について特集した記事を掲載してたりもする。

他にも、この手の話題は、まだまだある。しかも、それぞれの思いが、奇跡のような出来事も起こしている。

例えば、脳性麻痺の弟のカイルさんと、兄のブレントさんのエピソード。

弟のカイルさんを車椅子に乗せ、兄のブレントさんがそれを押し、これまでに幾つもフルマラソンを完走してきたご兄弟が、ニューヨーク・マラソンを走っていたら、中間地点あたりで、カイルさんの車椅子の車輪が故障。

近くにあった自転車で修理しようとしたものの上手くはいかず、ブレントさんは、

「これまで、どんな時だって、一度も諦めたことなどない。こんなことで諦めてたまるか

と覚悟を決め、動かなくなった車椅子の片側の車輪を持ち上げ、マラソンを続けていたところ、たまたま近くを走っていたこの2人の兄弟とは何も関係ない、他のランナーのエイミーと、また別のランナーのキャメロンが、事情を察し、一緒に車椅子を持ち上げて、マラソンを続けてくれることに。

この兄弟は、午前9時55分のスタートから、なんと約7時間半後!! の夜7時25分に無事にゴールした。

〔ご参考〕
NYマラソン、最後にゴールしたランナーの感動秘話

人気歌手アリシア・キース(Alicia Keys)さんのNYマラソン動画

Meet 5 Badass Runners Who Are Racing In The NYC Marathon For Extraordinary Reasons

A broken wheelchair didn’t stop two brothers from finishing the New York City Marathon

無事にニューヨーク・マラソンが終わってから約1週間後、ニューヨーク在住の日本人で、ニューヨーク・マラソンに参加された方々による打ち上げ会が開かれ、そこに参加したら、皆さんからいろいろと興味深い体験談を伺うことができた。

もともと日本でフルマラソンを3時間くらいで走っていたという某日系の金融機関の駐在員さんで、ニューヨーク・マラソンに参加する予定はなかったけど、アキレス・ジャパンという障害者のランナーを支援するNPO団体が、盲目のランナーさんの補助役で走るランナーを募集していたため(日本から2名の補助役は盲目のランナーさんと一緒にくるが、ニューヨークでさらに2名の補助役を募集していた)、それに立候補して、一緒に走ることになったという方もいらっしゃった。

その駐在員さんは、当然、これまでに何度も日本国内で様々なマラソン大会に参加され、フルマラソンも走っているが、今回、盲目のランナーさんの補助役として走り、沿道の観衆の方々からの止むことのない声援に心の底から感動した、できることなら、また走りたいとお話になられていた。

そのお気持ちが、とてもよく分かる。

東京マラソンをもっと素晴らしい大会にしたいと考えている方はもちろんのこと、地方都市で、東京マラソンから何かを学んで、マラソンに限らず、地方でも市民主導の社会貢献活動をもっと広めていきたい…などと考えている方は、ニューヨーク・マラソンについて、いろいろ調べてみると良いだろう。

特に、なぜ、ニューヨーク・マラソンに、こうした様々な思いを抱いた方々が、驚くほど、多数、参加され、また、一緒に走っている他のランナーや沿道で声援をおくる観衆の方々などが、そんな方々の思いを、まるで自分のことのように理解し、中には、何も事情を語らなくても、涙まで流してくれたりするのか、その理由について、考えてみるといいだろう。

いや、それ以外の日本にお住まいの一般の方々も、ニューヨーク・マラソンについて、もう少し知っておいた方が、いいかもしれない。

なにしろ、こうした他では得られない魅力いっぱいのニューヨーク・マラソンは、近年、急速に人気が高まっている

今回の大会直前の発表によると、ニューヨーク・マラソンが、地元ニューヨーク市に及ぼす経済効果は、4億1,500百万ドル(約500億円)。また、スポンサー企業からの協賛金、参加者からの参加費、テレビの放映権、グッズ販売等々によるNYRRの売上げも、2002年の1,800万ドル(約22億円)から2014年に約7,300万ドル(約88億円)へと、わずか10年ほどの間に、なんと4倍!! にまで急増し、多くの人々の心の中で、意識改革とでも呼ぶべき、何かしらの変化が起こっているとも考えられるからだ。

 

 

メルマガ「ニューヨークの遊び方」』 より一部抜粋

著者/りばてぃ
ニューヨークの大学卒業後、現地で就職、独立。マーケティング会社ファウンダー。ニューヨーク在住。読んでハッピーになれるポジティブな情報や、その他ブログで書けないとっておきの情報満載のメルマガは読み応え抜群。
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