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【いじめ対談2】こんなタイプの親が、我が子のいじめに気づけない

前回、メルマガ『ギリギリ探偵白書』の著者でこれまで5,000件ものいじめ相談を受けた探偵・阿部泰尚さんと、『弁護士谷原誠の【仕事の流儀】』の著者・谷原誠さんに、凄惨ないじめの現場とその法律的解釈などについて語っていただいた、まぐまぐ特別対談。今回お2人は、我が子のいじめに気づくために親がすべきこと、いじめと少年法などについてお話してくださいました。

なぜ親は子のいじめに気が付かないのか

阿部:国立教育政策所というところが取っている統計なんですけど、小学校4年生から中学校3年生までで、いじめられたとか、いじめたという経験がない子どものパーセンテージが、確か13%だったと覚えているんですよ。

谷原:ということは、87%が何らかの形でいじめているか、いじめられているかってことですか。ただ、いじめに関与した子が親に言うことって、実際には少ないですよね。

阿部:少ないですね。

谷原:それに関する統計もありますよね。

阿部:はい、あれは僕らがユースガーディアンでとったものだったと思うんですけど……20%ぐらいだった気がしますね。

谷原:いじめられた子が、いじめられたことを親に相談する報告する確率が20%。ということは、80%の子供たちは、いじめられたとしても親に言わないということですよね。これは子を持つ親としては、衝撃的な結果だと思うんですけど、なぜ子どもたちは親に対していじめられたことを相談しないのでしょうか。

阿部:そうですね、これは世間的に言っちゃうと、信頼関係がどうこうとか、コミュニケーションがどうだとかという話なんですけども……。どっちかと言うと、いじめられている子供たちが、心の中で葛藤しているんですね。友達に迷惑かけたくないし、親にも迷惑かけたくないし、心配もかけたくない。そのいっぽうで、自分で解決したい、復讐したいという気持ちもあるし、悔しいという気持ちもあるわけです。それと、もしかしたら自分が悪いかもしれないと。ちょっと我慢したら、いじめのターゲットじゃなくなるかもしれないという期待感もあったりして。そうすると、徹底的に隠すって子が多くなるんですね。

谷原:なるほど。

阿部:いっぽうで、いじめをしている子たちのほうには変化がほとんどないので、周りが気付くのは大変ですし、やってる側にはいじめをしているという意識が少ないですし。で、いじめを意識している場合は、めちゃくちゃ隠すんですよ。やられている子も周りに迷惑かけたくなくて隠すし、やってる方は気付いていない、あるいは気付いた上でその事実の言い訳ができるように、いろんな工作をして隠している。結局、双方の当事者たちがものすごく隠しちゃうので、保護者が気付いたり、相談を受けたりというところまでなかなか至らないのが実体じゃないかなと。

お金を欲しがりだしたら要注意

谷原:実際、僕も幼稚園の時にいじめられていたんですけど(笑)。言わないですよね、親には。大ごとになっちゃうし、我慢しとけば終わるかもしれないし、言ったことでいじめが酷くなるかもしれないし、親に責められるかもしれないし。……まあ、言わないですよ。

阿部:そうですね、言わないですよ。

谷原:言わない。

阿部:でも、そのいっぽうで相談してくれると思っている親って、82%ぐらいいるんですよ。子供がいじめられたときに。

谷原:いじめられたら、自分には相談してくれると。

阿部:そう思う親が、82%いると言われている。

谷原:ほんと、逆ですね。

阿部:そうなんですよ。僕から見ると、保護者たちは胡坐をかいている状態だし、子供たちは閉じている状態なんで。そこの間を埋めていかないと、まずいじめの数も減らないだろうし、いじめってだんだんエスカレートしていくので、悪化するものを抑止したり止めたりすることができないじゃないかと思いますね。

みらい総合法律事務所 弁護士の谷原誠さん

谷原:今の結果を踏まえると、多くの場合に自分の子供がいじめられていても親は知る術がないですね。

阿部:そうですね。

谷原:いじめがあるのではないのかと、親が気付くことができる方法はあるんでしょうか?

阿部:いくつかテクニックはあるんですけど、やっぱりお金の問題も絡んだりしていると、いじめられている子はいろんな理由でお金を欲しがりますし。

谷原:お金を要求されていたり?

阿部:はい、そうなんですね。例えば、夏期講習があるからお金を払わなきゃならないとなったら、忙しい親だと「それいくらなの?」と言って、もう渡しちゃって終わり。他にも「参考書が欲しい」「洋服が欲しい」とか、いろんな理由を子供はつけるんですけど、本当に買っているのか、また買ってきたとして本当にその金額が掛かっているのか……。そういうチェック機能が、親たちが忙しいとつい疎かになってしまうので、その裏にあるいじめに気付きにくいと。

谷原:なるほど。

無視やLINEいじめに気づく方法

阿部:あとは……僕なんかはすぐ気付いちゃうんですけども、階段で転んだって言うのに、防御痕がないとか。小さい子だと、手でガードするのが間に合わない子もいますけど、ある程度年齢がいくと、転んだ時に手を先にケガしたりとか、ほかの部分でカバーしたりするものなんですよね。もっとも、ケガの位置とケガの理由が全然違う場合もあります。こういう、見ればわかることってもちろんありますよね。

谷原:外形的ないじめ、例えばお金を要求されているのであれば、どこかからお金を集めないといけないので、親に何かの理由をつけてお金を急にせびりだす、というようなことがありますよね。例えば殴られる、蹴られるという暴行の場合には、体に何らかの情報が残る。それもさっきと同じように、実際と違う理由を言って「これでケガした」というように言い張る、という兆候がある。他にも、例えば上履きを隠されるとか、リコーダーを捨てられるとか、物が急になくなるとか、教科書が汚れるとか、ランドセルが急にボロボロになっちゃったとか、そういう兆候があると。この辺はよく観察しましょう、という話ですよね。

阿部:そうですね。

谷原:ただ、そういうのとは逆に、無視をされるとか、LINE上でいじめられるとか、そういう、外形的な変化のないケースの場合って、何か気付ける方法はありますか?

T.I.U.総合探偵社の阿部泰尚さん

阿部:ありますね。その子の性格によって両極端な部分があるんですけども、そういういじめを受けた際に、閉じこもっちゃう子は閉じこもっちゃうんですよ。そうすると、1人になれる空間から比較的出てこなくなってきたり、そこにいる時間がすごく長くなったりするんですね。またいっぽうで、そういう様子を親とか身近な人に見せてしまうと、心配をかけるんじゃないかって勝手に本人が思い込むと、妙に明るくなったりとか、空元気になったりと。ブレはあるんですけど、やっぱり様子の変化というのが出てくる。

谷原:ほほう。

阿部:ただ、妙に明るい振る舞いをしている子と話をしてみると、明るさを装ってないと、いじめのことばかり考えちゃうというのもあるみたいだし、普通の生活ができないというのがあるみたいなんですよね。やっぱりそういう部分では、隠そうとするが故の反面行動みたいなのが、出ているのかなって。あとは携帯系、スマホ系でのいじめなんですが、普通って中学生くらいになってくると、スマホを自分の身の周りから離さないと思うんですよ。だけどいじめられている子は、そのスマホにはいろんな要求がくるし、いろんなこと書かれるので、やっぱり体から離しちゃうという様子も、結構あるんですよね。

谷原:いずれにしても、お金だとか体だとか持ち物だとかっていうのを、よく普段からお子さんのことを観察するのと同時に、精神状況ですね。様子をよく見てないと、なかなかいじめがあったことはわからない、ということになりますね。

少年院で未成年は更生できない!

まぐまぐ:阿部さんのお話を伺うと、最近では恐喝や性的なものといった、いじめの範囲を超えた「犯罪行為」も珍しくなくなったということですが、例えば、どこのラインを越えたらもう逮捕、罪に問われる、といったラインがあるんだとすれば、谷原先生に教えていただきたいです。

谷原:子供同士の場合、ちょっと叩いたりといったケンカを通じて、痛みとか相手のことを思いやる心とかを学んでいくものというのがあって、ちょっと叩いたくらいでは犯罪とは言わないんですね、基本的には。普通の社会人同士だったら、殴ったらもうそれで捕まるんですけれど。ただし、子供同士でもやっぱり一線を越える……外形的な傷ができるといった、要は骨が折れる、歯が折れるとかですね。そういう場合になると、これはもう教育の現場という一線を越えたことになるので、それは警察の問題にしていいでしょう。

まぐまぐ:なるほど。

谷原:それから、強姦なんていうのは、大人の世界なら完全に何年という実刑ですよね。子供の場合も、これは凶悪犯なので、まずは逮捕されます。ただ逮捕されるんですが、未成年の場合、裁かれるのは刑法じゃなくて少年法なんですね。

まぐまぐ:少年法だと、どう違ってくるんですか?

谷原:少年法というと、まずは家裁に行って、少年院とか保護観察とかそういう保護的なもので、更生ができると裁判所が判断すれば、家裁の範囲内で終わる。ところが集団強姦をやるぐらいになると、そこから教育したからって、そう簡単に直らないですよね。そうしたら「逆送」といって、今度は普通の刑事手続に行くんですよ。少年であっても。刑事手続になって普通の刑事裁判をやって……ただし少年法があるので、大人なら懲役10年のところを懲役4年から6年の不定期刑になると。そういう風にして、更生の状況を見ながら年数を決めて、社会に戻すという感じになってるんですね。

まぐまぐ:やはり未成年だと、刑が軽くなるんですね。

谷原:少年法によって、大人と違ってかなり更生がしやすいというふうに法律的には考えられていて、その分刑が軽くなる。ただし少年法ですべて守られるわけではなくて、学校教育から外れる明らかな犯罪、強姦や傷害そして恐喝といった、大人だったら大変なことになっちゃう犯罪の場合は、事情にもよりますけど警察問題になってもいいのかなと。ただ、普通の子供同士のケンカだったら、それは刑法の範囲ではなく学校内で扱われるべきでしょうということになると思います。

まぐまぐ:未成年は大人と違って更生がしやすいということですが、例えば最近だと本を出したりして話題になった元少年もいますけど、そういうのを見ると、とても更生しているとは思えないわけです。でも外に出てきていると……。更生していないという判断があったとしても、もう1回罪に問われるということはないんでしょうか?

少年院からグレードアップして出てくる人間も

谷原:法律的にはないですね。一度罪に問われた人は、それでもう全部終わりです。「一事不再理」と言うんですけど、一度で終わりです。今までおびただしい数の裁判がされる中で、「このぐらいのことをやった人は、このぐらいの刑期にしたほうがいいね」という公平性の問題もあるので、いきなり刑を重くはできないんですね。だから死刑にするのも、1人殺しただけでは死刑にならないとか、2人以上殺さないと死刑にならないとか、そういうのも結局、今までの過去の例との公平性みたいなのがあって、なかなかうまく機能しないんですよ、この辺は。

まぐまぐ:なるほど。

谷原:ただ法律の建前としては、あくまでも刑というのは復讐的なもの、復讐というか応報刑ですね。やったことの罪は償いましょうということと同時に、教育的な面もあるというふうに考えるので、全部死刑というわけにはいかないっていうことですかね。

阿部:僕も調査をしていて、結構ひどいことやっちゃってるのがいて、これはもう警察だろうと思ったら、案の定警察が動いてっていうのがたまにいるんですよ。それが例えば6年前の話だとすると、今じゃもう出てきちゃってるのが結構多いんですよ。で、詐欺の調査なんかやってると、使いっぱしりみたいなヤツが調査上に出て来て「またこいつか」みたいな。で、そういう子たちのことをうちのスタッフは「常連さん」って呼んでるんですけど。

谷原:「常連さん」って……(苦笑)。

阿部:ただ、僕らのような小さな探偵社で「常連さん」とか言われるほど名が通っちゃってるような子は、もはや更生は難しいのかな、と。考え方もやっぱり短絡的だし……。例えば少年院にいるときだったら、謝りの手紙を出したりとかするらしいんですよね。ただ外に出ちゃうと、そんなものは一切ないし、謝りに行くこともない。本人からしたら「もう俺は償ったんだからいいだろう」みたいなところがあるようなんですよ。ただ1回少年院に入っちゃうと、レッテルを張られちゃって、まともな就職ができないこともある。それで、悪い仲間もいるしで、結局そっちの方向にいっちゃってるということがあるみたいですけどね。……詐欺師のヤツなんかは、刑務所新しいやり方覚えたって言ってましたよ(笑)。

谷原:教えてもらって?

阿部:はい、仲間で夜話し合ってるみたいなことを言ってましたよ。新しい仕組みを……。なんでそんなところで人脈作ってんだこいつ、って思いましたけど(笑)。結局子供も、少年院だったら少年院、鑑別所だったら鑑別所で、場合によっては変な人脈を作って帰ってくる子はやっぱりいますし。グレードアップして戻って来るというか(笑)。

谷原:修行に行ってきたっていう(笑)

阿部:ただ、まあしょうがないっていえば、それが法律って仕組みならしょうがない、とは思いますけど。

谷原:でも、まったく更生になってないですね。


一部であると信じたいのですが、「少年院でも更生できない」となると暗澹たる気持ちにならざるを得ません。我が子がそのような人間のターゲットになってしまったらどうすればいいのでしょうか。次回はお2人が探偵・弁護士それぞれの立場からいじめ解決のテクニックを伝授してくださいます。

構成:まぐまぐニュース!編集部

 

谷原誠さんメルマガ弁護士谷原誠の【仕事の流儀】
人生で成功するには、論理的思考を身につけること、他人を説得できるようになることが必要です。テレビ朝日「報道ステーション」などテレビ解説でもお馴染みで、「するどい質問力」(10万部)、「弁護士が教える気弱なあなたの交渉術」(アマゾン1位獲得)の著者で現役弁護士の谷原誠が、論理的な思考、説得法、仕事術などをお届け致します。
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