日本、いまの大戦略
では、今の日本に「大戦略」はあるのでしょうか? あまり知られていませんが、あるのですね。そう、安倍総理の「アジアの民主主義 セキュリティ・ダイヤモンド」構想です。
私(註、安倍総理)が描く戦略は、オーストラリア、インド、日本、米国ハワイ州によって、インド洋地域から西太平洋に広がる海洋権益を保護するひし形(ダイヤモンド)を形成することにある。
私はこのセキュリティーダイヤモンド(ひし形安全保障)に、出来る限り最大の力を注ぐつもりだ。
(原文、全文はこちら→ ● Asia’s Democratic Security Diamond)
この論文が発表されたのは、2012年12月27日。つまり、首相就任直後に出されている。日本国民はほとんど知りませんが、安倍総理には大戦略がある。
その骨子は、「日本、アメリカ、オーストラリア、インドで、中国を封じ込めよう」です。少なくとも、「日本にとって現実的脅威は中国だけ」と定まっている。この一点だけでも、2次大戦前の指導者たちより立派です。
一方、中国にも「対日戦略」があります。その骨子は、「中国、ロシア、韓国+アメリカで「反日統一共同戦線」を構築すること、です。
(詳細はこちら→ ● 反日統一共同戦線を呼びかける中国)
アメリカ一国頼りの限界
日本、戦略の要は、いまだに「日米同盟を強固に保つこと」です。というのは、日米同盟が強固であれば、中国は尖閣、沖縄を奪えない。
日本では今、「米軍を追い出せばすべてうまくいく!」という、奇妙な論理が支持をひろめています。それを拡散している人たちは、米軍がいなくなったベトナムやフィリピンで何が起こったか知らないのでしょうか?
そう、即座に中国が侵略してきています。
例1)米軍は1973年、南ベトナムから撤退した。翌1974年、中国は南ベトナムが実効支配する西沙諸島に侵攻し、占領した。
例2)米軍は1992年、フィリピンから撤退した。95年1月、中国はフィリピンが実効支配する南沙諸島ミスチーフ環礁に侵攻。勝手に軍事施設を建設してしまった。
ベトナムもフィリピンも、一度米軍を追い出したものの、その後中国からの脅威が増大。今は、逆にアメリカに「戻ってきてください!」と懇願しているのです。こういう事実を完全に無視して、「米軍を追い出せばすべてうまくいく」というのは、どうなのでしょうか?
というわけで、日本、戦略の要は「日米同盟を強固に保つこと」。しかし、将来的には問題も予想されます。というのは、私が10年前から予想していたように、アメリカの衰退が著しい。
05年に「ボロボロになった覇権国家」を出したとき、誰もアメリカの没落を信じていませんでした。ところが今では、全世界の人が「アメリカはもはや唯一のスーパーパワーではない」ことを知っています。
そう、「日米同盟」は大事ですが、それでいつまでも安泰という話ではないのです。
ではどうすればいいのか?
1つは、「自分の国は自分で守れる状態」をつくっていくこと。つまり「軍事の自立」。
しかし、日本が「軍事の自立を目指します!」といえば、米中両国を敵に回します。ですから、「日本はアメリカの負担を軽くします」といいながら、ちゃっかり軍事的自立にむかっていく。これなら、「日本が強くなるのはアメリカさんのため」という名目なので、少なくともアメリカは反対しません。
中国は、日本が何をやっても反対するので、気にする必要はないのです。