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どん兵衛が年越しそば、三が日は本格おせち。獄中の年末年始も悪くない

自身が無実の罪で拘置所に入れられた際のあれこれを執筆している元弁護士・山本至さんが、メルマガ『知らなきゃ損する面白法律講座』で、獄中における年末年始について教えて下さいました。普通の人は、おそらく一生経験することがないであろう貴重な体験談ですよ。

ある弁護士の獄中体験記「年末年始の飲食事情」

警察にいたときの運動時間に、留置係官から「正月にはいつもより格段に良いおせち料理が出て、昼にはカップ麺だけど年越しそばが出るよ」と聞いていた。元日に年越しそばなんだと笑いながら聞いていたが、拘置所に移監されたので真偽は不明であるものの、留置係官の話であったから信憑性は高い。

拘置所での食事は12月30日から特別バージョン入りとなる。30日から1月3日までの5日間は毎日特別支給品がある。5日分それぞれについて何が出たかを羅列してもあまり意味がないから具体的には書かないが、毎日大量のお菓子が支給される。

この特別支給のお菓子は4日の午後までに食べ終わらなければならず、余った場合にはすべて没収となる。普段はお菓子などあまり食べない私であったが、もったいないので完食した。

大晦日には年越しそばが振る舞われる。ちゃんと大晦日である。いつもの夕食が配られるのに先立って居室への差入口に置かれたのは「どん兵衛きつねそば」である。夕食後にお湯が配られるということでとりあえず脇に置いておく。大晦日の夕食は、その後にきつねそばが控えていることもあって、いつもより少なめの麦飯、切り干し大根と人参と豆の煮物、鮭切り身焼き物である。

食後に空下げが行われ、いよいよお湯が配られる。「お湯~」という配膳係の声がするとカップ麺の蓋を開けて待つ。1室から順にお湯が注がれていく。配膳係に付き添っている刑務官に「3分経ったら教えてくれるのですか」と聞いてしまった。ここには時計がないから時間が分からないのだ。ただ何人にも順にお湯を注いでいくのだから3分の経過を教えるなんで土台無理なことで、質問した私が阿呆だった。案の定刑務官からは「そんなことは無理。自分で判断しろ」との答えが返ってきた。

カップ麺といえども麺好きの私には久し振りでおいしかった。でも、備付けの箸が塗り箸で、麺をうまくつかむことができないのがもどかしく、何より1人でこんなところで迎えた大晦日は悲しかった。真実罪を犯したならば別であろうが…。山中の静かな拘置所に除夜の鐘が響いてきた。

三が日の特別料理は、毎朝の3食と元旦の昼食の合計4回供される。元日の朝食から紹介していく。

ご飯、お湯で温められたパック入りのおもち1個、大振りの海老・かまぼこ・伊達巻というおせち料理、柴漬け、これにすまし汁がつく。ラジオからは宮崎のお雑煮はすまし汁だという放送が流れている。

「麦飯」ではなく「ご飯」が出る。「麦飯」ではあるのだが、白米かと見間違うほどに麦の割合が激減していた。もっとも大分刑務所での正月は完全白米であったが。それでも、それまでの麦飯に慣らされつつあった私には感動のご飯だ。

海老の大きさにも驚いた。直径が2~3センチ長さは髭の部分を除いても15センチほどもある。身体拘束をされていながらこのような物を食べることができるとは思わなかった。年末になると寒さしのぎもあるが、そこそこの食事があるということで入所希望の犯罪者が増えるというのも納得できる。

昼食が本格的なおせち料理となる。朝食と同様のご飯、お吸い物に加えて、縦横40センチもあろうかという大きな弁当が配られた。「」と書かれた紅白の和紙に包まれた、見るからに豪華そうな弁当である。

一面では炊場で刑務作業をする受刑者を休ませるという側面もあるのだろうが、それにしても豪華である。中をあければ美しく彩られたいくつかのプラスチック容器が整然とならんでいる。その内容は次回以降に書こう。

著者/山本 至(やまもと いたる)
元弁護士。昭和29年生まれ。昭和51年早稲田大学卒業。金融機関勤務後平成元年司法試験合格、同2年司法研修所入所(修習44期)。平成4年弁護士登録(東京弁護士会)。平成18年に証拠偽造、証人威迫容疑で逮捕。無罪を主張したにもかかわらず、平成24年10月に最高裁判所で懲役1年6月の実刑判決が確定。宮崎刑務所、大分刑務所で服役し、平成26年4月出所。現在は自身の体験談などの執筆活動中。

image by: Shutterstock

 

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