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たった62人の大富豪の資産が、下位36億人の資産と同じという衝撃データ

「格差社会」という言葉が世間に浸透してから久しく経ちますが、その根底には金儲けを提唱する「新自由主義」という思想があります。無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者、北野幸伯さんは、この新自由主義はもはや力を失い始めており、近い将来、新しい思想が生まれてくるだろうと推測しています。

世界の格差は、本当にすごい

日本も近年は、「格差社会だ!格差社会だ!」といわれます。それでも、世界の現状をみたら、かなりマシですね。先日、本当に驚きの情報をみつけましたので、シェアさせていただきます。

CNN.co.jp1月18日から。貧困問題に取り組むNGOオックスファム・インターナショナルは、最新の報告書を出しました。そこには「驚愕の事実」が明らかにされています。

オックスファムは今週スイスで開かれる世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に向け、米経済誌フォーブスの長者番付やスイスの金融大手クレディ・スイスの資産動向データに基づく2015年版の年次報告書を発表した。

 

それによると、上位62人と下位半数に当たる36億人の資産は、どちらも計1兆7,600億ドル(約206兆円)だった。

どうですか、これ?

上位62人と下位半数に当たる36億人の資産は、どちらも計1兆7,600億ドル(約206兆円)だった。

つまり、トップの金持ち62人の資産は、貧しい方36億人の資産に匹敵する! また、オックスファムの報告書は、「格差が急速に拡大していること」をはっきり示しています。

富裕層の資産は近年、急激に膨れ上がっており、上位グループの資産はこの5年間で計約5,000億ドル増えた。

 

一方、下位半数の資産は計1兆ドル減少した。
(同上)

上位グループの資産は、5年間で60兆円(!)増えた。下位半数の資産は、5年間で120兆円(!)減った。さらに、驚きの事実が出てきます。

また、上位1%の富裕層が握る資産額は、残り99%の資産額を上回る水準にあるという。

(同上)

上位1%の資産は、残り99%の資産額より多い!!!

もう少し広くみてみましょう。

富裕層と貧困層の所得格差も拡大を続けている。

 

1日あたりの生活費が1.90ドル未満という極貧ライン以下の生活を送る下位20%の所得は1988年から2011年までほとんど動きがなかったのに対し、上位10%の所得は46%も増加した。
(同上)

世界には、1日当たり1.9ドル(=228円)、つまり月7,000円以下で暮らしている人が、20%もいる。世界の人口が73億人とすると、14億6,000万人もいる。どうですか、皆さん。私は、かなり驚きました。

2つの思想の「死」で格差は拡大した

なぜ格差は急速に拡大しているのでしょうか? いろいろ理由はあると思いますが、私は「貧富の差を減らそう」という「思想が廃れた」のが主な原因だと思います。

19世紀、資本主義国には、なんの歯止めもありませんでした。子供や女性も、超低賃金で超長時間働かせていた。当時の支配的な思想は、「市場が自由であれば、すべてよし」の古典派。

そんな時、マルクスが、「労働者が革命を起こし資本家を打倒するのは、『歴史的必然』だ!」とする「共産主義思想」を発表します。

当時の労働者は、よほど怒っていたのでしょう。共産主義は、全世界で大流行します。1917年、ロシア革命が起こり、共産主義思想をベースにした国・ソ連が誕生しました。

1929年、アメリカ発の「世界恐慌」が起こった。古典派のフーバー大統領は、この危機をまったく克服できなかった。

「世界恐慌で古典派の欠点が明らかになった」

このこと、はっきり知っておく必要があります。次のルーズベルト大統領は、「ケインズ」の考え方を政策に活かしました。ケインズは、「景気が悪いときは、政府が支出を増やして有効需要(=消費と投資)をつくればいい」と主張した。戦後は、ケインズの考えが世界の主流になっていきます。

ところが、「財政支出を増やして有効需要をつくる」ケインズ式は、「癖」になります。やればすぐ景気がよくなるので歯止めがきかない。それで、ケインズを採用した国では、どこも「財政赤字」が深刻な問題になっていきました。しかし、これは「ケインズの間違い」というよりは、使う側の規律のなさ」の問題でしょう。とにかく、1970年代になると、「もうケインズではダメだ」と思われはじめた。

1980年代になると、アメリカのレーガンさん、イギリスのサッチャーさんが「新自由主義」的政策で、景気をよくすることに成功します。新自由主義は、市場原理主義、経済的自由主義、自由貿易、市場経済、民営化、規制緩和などを主張します。米英の成功で「新自由主義の時代」がやってきました。ケインズは衰退します。

そして1991年末に、共産主義の総本山ソ連が崩壊し、万人平等を唱えた「共産主義は死んだ。「貧富の差解消」を目指した、「ケインズ主義」と「マルクス主義」の死。そして、世界には「新自由主義だけが残りました。

新自由主義の根本的問題

新自由主義的政策を進めていくと、政府の役割は小さくなり、「自由競争」になっていきます。そう、「金儲け競争」です。事実として世界は、「金儲け競争」をしています。

しかし、「金儲け競争」の社会には大きな矛盾があります。1つは、「トップ62人の資産が、下位36億人の資産と同じ」「上位1%の資産は、残り99%の資産を同じ」という事実からもわかるように、「勝ち組より、負け組の方が圧倒的に多い」ということ。月収7,000円以下の人が、世界に14億人以上もいる。こんなシステムが、「正しい」とは、なかなかいえませんね。

「金儲け競争社会」のもう1つの問題。それは、「社会には、金儲け競争に参加できない人がたくさんいる」という事実。たとえば、自衛隊員の皆さんは? 警察官の皆さんは? 消防士の皆さんは? 幼稚園、保育園、学校の先生は? 公務員の皆さんは?

これらの人々は、社会に不可欠でありながら、同時に「金儲け競争」に参加できません。社会を円滑に運営し、発展させていくためには、「金儲け競争に参加できない人々」も、健康で幸せで豊かに暮らしていける環境を整える必要があります。

というわけで、「金儲け競争」と化した今のシステムは、大きな矛盾を抱えているのです。

日本が新しい思想を生み出そう!

というわけで、世界は「マルクス」「ケインズ」「新自由主義」よりもすぐれた「新しい思想」を必要としています。その思想は、米英から出てきそうにありません。フランス人ピケティさんは格差が広がる理由を示しましたが、解決方法は弱いです。中国から新しい思想が出てくる可能性もなさそうです。出てきても、その人は、「共産党の脅威だ!」ということで捕まってしまうでしょう。

可能性があるとしたら、日本なのではないでしょうか? RPEの読者さんは、「世界一優秀」です。是非、世界を救う新しい思想を考えてみてください。

image by: Shutterstock

 

ロシア政治経済ジャーナル
著者/北野幸伯
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