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【京都案内】戦国武将や文豪が愛した「美しすぎる桜の名所」5選

もうすぐ巡り来る、桜の季節。無料メルマガ『おもしろい京都案内』では一足先に、選びぬかれた京都の「桜の名所」をご案内。秀吉が花見をするための院まで建てた名勝、ライトアップされた夜桜とコンサートを楽しめるスポット、文豪が絶賛した桜などなど、スケジュールを調整してでも出かけたくなる魅力的な桜の情報が満載です。

京都 別格の桜

3月になりましたのでそろそろ桜をテーマにした内容をお伝えしたいと思います。京都は街全体が桜の名所と言っても過言ではありません。今回はその中でも特に美しく見ているだけで感動する桜を厳選してお伝えいたします。それぞれ有名な場所ばかりなので是非今年訪れてみて下さい!

醍醐寺

image by:京都フリー写真素材

世界文化遺産に登録されている醍醐寺は京都を代表する桜の名所で豊臣秀吉が醍醐の花見」を開いたことでもとても有名です。秀吉が花見をする為に設計したと言われる三宝院の入口を入ってすぐの場所に大きなしだれ桜「太閤しだれ桜」があります。目の前に空からシャワーのように降り注ぐかの如く咲くしだれ桜を目にした時は思わず涙が止まらなくなったのを覚えています。

境内には約1,000本の桜が植えられていて種類の違う桜が順番に花を咲かせるので1か月近く桜を楽しむことが出来ます。

醍醐寺は874年に理源大師・聖宝(しょうぼう)が上醍醐山上で醍醐水の霊泉を得て小さなお堂を建てたことにはじまります。そしてその場所に准胝(じゅんてい)観音像と如意輸観音を安置したことに由来します。その後907年に醍醐天皇の御願により薬師堂が建立され上醍醐の五大堂が完成しました。

応仁の乱後、荒廃していた醍醐寺を80代座主義演(ぎえん)が復興しました。義演は豊臣秀吉と親密なつながりがあり再興を積極的に援助してもらうことが出来たと伝わります。

醍醐寺は秀吉が開催した「醍醐の花見」で有名です。醍醐寺はかつてから桜の名所ではありませんでした。秀吉がこの地で花見をしたいと言い出したためにわずか数か月の間に約700本の桜の木がこの地に移植されたと伝わります。太閤秀吉の強大な権力を伺わせるエピソードですね。この時建物も一緒に増改築されていて、現存する醍醐寺の建物の多く(五重塔は除く)はその当時造られたものと伝わります。

訪れた際は、京都府最古の五重塔と秀吉が手掛けたという三宝院の庭園を堪能してきてください。そしてその中心に置かれている源頼朝を始め数々の武将の手に渡り秀吉の手に収まったと伝わる「藤戸石」を見てきてください。

住所:京都市伏見区醍醐東大路町22
アクセス:京都市営地下鉄東西線「醍醐」駅より徒歩10分
営業時間:9:00~17:00(12月第1日曜日の次の日よりから2月末までの期間は16:00)
電話番号:075-571-0002
参拝料金:
三宝院=大人600円、中高生300円、小学生以下は無料
伽藍=大人600円、中高生300円、小学生以下は無料
URL:https://www.daigoji.or.jp/index.html

平安神宮

image by:京都フリー写真素材

朱色の大鳥居が有名な平安神宮は京都市民の氏神様として明治28年に創建され京都のシンボル的な神社です。境内には1万坪の広大な神苑があります。神苑には美しい紅しだれ桜が咲き誇り見るものを圧倒します。上を見上げると桜のシャワーを浴びている様な華やかで美しい景色を見ることが出来ます。谷崎潤一郎や川端康成の文学作品にも登場する紅しだれ桜は死ぬまでに一度は見ておきたい光景です。

毎年4月第2週の週末には神苑の紅しだれ桜のライットアップの中で「紅しだれコンサート」が開催されます。幻想的な夜桜と神苑での野外コンサートの共演は今までに感じたことのない感動を味わうことが出来ます。

広大な神苑は回遊式になっていて約300本の桜を楽しめる桜ノ苑は見事です。紅しだれ桜が並ぶ華やかな雰囲気に京都らしい光景を堪能することが出来ます。

琵琶湖疏水の水を引き入れた池泉回遊式庭園は、明治初期に造営されたものです。作庭は造園業「植治(うえじ)」7代目の作庭家・小川治兵衛が約20年かけて築いた晩年の最高傑作です。東京遷都で荒廃しかけた京都に活気を取り戻すために建立された平安神宮にしだれ桜を植える作業は人生をかけたものでした。華やかな命を注ぎ込み見る者を圧倒しました。その鮮やかさは今も健在です。「植治」は現在も東山の地で11代目が当主としてその技を引き継いでいます。

平安神宮の桜の美しさは谷崎潤一郎の細雪」、川端康成の古都」の中でも描写されています。細雪の主な舞台は芦屋と大阪で、京都が登場するのは春です。主人公たちは花見だけは毎年京都と決めていて春になると連れ立って行くのが恒例の行事になっています。あちこちの花の名所を回りいつも最後をしめくくるのが平安神宮の神苑のしだれ桜です。

谷崎潤一郎「細雪」

この神苑の花が洛中における最も美しい。

最も見事な花であるからで円山公園の枝垂桜がすでに年老い年々に色あせていく今日では、まことにここの花をおいて京落の春を代表するものはないといってよい。

川端康成「古都」

みごとなのは神苑をいろどる紅しだれ桜の群れである。

今はまことにここの花をおいて京落の春を代表するものはないと言ってよい。

川端康成が書いたこの文章は谷崎が細雪で書いた文章をそのまま引用しているのです。

いずれの文学作品の中でも平安神宮の桜は大絶賛されています。日本の自然美の描写の素晴らしさを評価されノーベル文学賞を受賞した川端康成が絶賛する紅しだれ桜の美しさは今年も健在です。昔よりも美しいものがより身近にある今の世でも、これほど美しいと思えるものは他にないと思わせる平安神宮神苑の紅しだれ桜。是非今年は堪能してみて下さい。自然と涙がにじみ出てくるほと感動的です。

神苑の出口付近には、桜の花びらにちなんで ピンク色の紙でつくられた桜みくじ(はなみくじ)があります。そのおみくじを満開成就の結び木に結んでいくと桜が咲いたように見えるという粋な演出がなされています。ちなみに「大吉」は「満開」と書いてあります。

住所:京都市左京区岡崎西天王町
アクセス:京都市営地下鉄東西線「東山」駅下車より徒歩10分
営業時間:6:00~17:00(神苑拝観受付時間 8:30~16:30)
定休日:無休
電話番号:075-761-0221
拝観料:大人600円、子供300円
URL:http://www.heianjingu.or.jp/index.html

仁和寺

image by:京都フリー写真素材

遅咲きの桜「御室(おむろ)桜」が有名なのは世界文化遺産に登録されている仁和寺です。市内有数の桜の名所で多くの人で賑わいます。境内にはソメイヨシノや枝垂れ桜など御室桜以外にも沢山の桜が咲き乱れます。

有名な「御室桜は遅咲きで有名な桜で通常の桜より背丈が低いことでも知られており、目の前で桜の花を楽しむことが出来ます。仁和寺では桜と五重の塔といういかにも京都らしい風景を見ることが出来ます。

仁和寺は光孝天皇が建立を発願した寺院を、第7皇子・宇多天皇が引き継ぎ888年に造営された寺院です。宇多天皇は31歳で、第一皇子・醍醐天皇に譲位し899年に法皇になりました(法皇は仏門に入った天皇)。仁和寺は宇多法皇が仁和寺に室(むろ)を構え、御所としたことからこの場所が「御室おむろ御所」と呼ばれるようになりました。その後御室は仁和寺一帯を指す地名となりました。体重計や体温計など健康医療機器メーカーとして知られる「オムロン」はこの地が会社設立の発祥です。

宇多天皇が入寺したことで仁和寺は、最初の門跡寺院となりました。宇多法皇が初代の住持になって以降明治時代まで、歴代門跡は皇室出身者が引き継ぐことになります。このため仁和寺は天皇家と縁の深い格式高い寺院になりました。

応仁の乱で全焼し長らく低迷した後は江戸時代になってから3代将軍徳川家光が寄進したことで再建されました。御所からもいくつかの建物が移築され、徐々に伽藍が整備され時間をかけて復興し現在に至っています。宸殿は江戸時代初期の御所の御常御殿を移築した建物です。跳ね上げ式の「蔀戸」(しとみど)など平安時代から続く王朝建築の意匠を見ることが出来ます。建物をつなぐ回廊も源氏物語の王朝絵巻に描かれるような直角に曲がる建築様式が取り入れられています。

江戸時代から仁和寺を桜の名所として有名にしているのが御室桜です。享保年間に活躍した儒学者・貝原益軒(かいはらえきけん)はその景色を「洛中洛外にて第一とすと絶賛しています。

御室の地は地盤が固く、境内に200本ある八重桜は地中深くまで根を下ろすことが出来ないため背丈が低いのが特徴です。花(鼻)が低い(花が咲く位置が低い)ことから「お多福桜」とも呼ばれています。京都では昔から、背が低くて鼻が低い女性のことを「御室の桜のようだ」と表現するようです。花街の芸舞妓さんが謙遜して「わたしゃ お多福 御室の桜 鼻が低くても 人が好く」などと言うことがあるそうです。

住所:京都府京都市右京区御室大内33
アクセス:JR嵯峨野線「花園」駅より徒歩15分、京福電鉄北野線「御室仁和寺」駅より徒歩3分
営業時間:9:00~17:00(12月~2月は16:00)
電話番号:075-461-1155
参拝料金:
御殿=大人500円、小中高生:300円
伽藍特別入山(御室桜開花時期 )=大人・高校生500円、小中学生200円
URL:http://www.ninnaji.or.jp/

毘沙門堂

image by:京都フリー写真素材

山科区にある毘沙門堂は天台宗の5つの門跡寺院(天台宗五箇室門跡)の1つで703年に創建されました。名前の由来は毘沙門天様をお祀りする為付けられたと言われています。境内の宸殿にある狩野益信作のだまし絵動く襖絵」で有名なお寺でもあります。

毘沙門堂には「毘沙門しだれ」「般若桜」と呼ばれる樹齢150年の桜があります。枝張りが約30mもあり見上げると圧倒されます。また勅使門と桜のコラボは絵画の様な美しさです。この枝垂れ桜はJR東海のそうだ京都、行こう。のCMに使われたこともあります。

毘沙門堂に向かう途中に山科疎水があり、疎水両岸にたくさんの桜が咲いています。こちらの桜も名所になっており見応えがあります!

毘沙門堂は奈良時代、行基(ぎょうき)が毘沙門堂の前身となる出雲寺を開山(現在の上京区)したのが起源と伝わります。中世には荒廃しましたが、江戸時代初期、天海(てんがい)が再興し1665年に弟子の公海(こうがい)が現在地に再建しました。その後、後西天皇の皇子・公弁(こうべん)法親王が出家し、隠棲したことから門跡寺院となりました。現在は天台宗五箇室門跡のひとつとしてとても格式の高いお寺です。

境内中央の霊殿は江戸時代に御所の御霊屋から移築された建物で、歴代の天皇と徳川将軍の位牌が安置されています。宸殿は、同じく御所にあった後西天皇の旧殿が移築されたものです。宸殿から勅使門にいたる参道は毘沙門堂の紅葉の名所となっています。弁天堂には秀吉の大政所が大阪城内で念じていた弁才天が安置されています。

住所:京都府京都市山科区安朱稲荷山町18
アクセス:JR東海道本線、地下鉄東西線、京阪電鉄京津線「山科」駅下車より徒歩20分
営業時間:8:30~17:00
定休日:無休
電話番号:075-581-0328
参拝料:大人500円、高校生400円、小中学生300円、小学生以下無料
URL:http://bishamon.or.jp/

勝持寺

花の寺」とも呼ばれる勝持寺は679年創建の大変長い歴史を持つ由緒のあるお寺です。京都洛西の西山連峰にあるためアクセスは不便ですが、そのためあまり混雑しません。境内をゆっくり周れるので京都通の間では非常に人気のあるお寺です。

境内には約100本の桜の木が植えられています。遠くの山を背景とした寺と桜のコントラストが素晴らしくダイナミックな風景を見る事が出来ます。勝持寺は西行が出家したお寺でもあり西行が手植えしたと言われている現在3代目の西行桜があります。毎年4月の初めには咲く早咲きの桜です。

勝持寺は飛鳥時代に修験道の開祖・役小角(えんのおづね)が、天武天皇の勅により創建した古刹です。その後奈良時代後期に最澄が、桓武天皇の勅により再建したと伝えられています。室町時代は足利家の庇護を受け隆盛したものの応仁の乱で荒廃。その後織田信長や豊臣秀吉が保護にあたります。江戸時代に入ってからは徳川5代将軍綱吉の母・桂昌院の援助で多くの伽藍が再建されました。

近くの大原野神社も西京区の紅葉名所なので、一緒に立ち寄ることをおススメします。

住所:京都市西京区大原野南春日町1194
アクセス:阪急電鉄「東向日」駅下車、阪急バスで「南春日町」下車より徒歩20分
営業時間:9:00~17:00
定休日:毎年2月中は拝観休止
電話番号:075-331-0601
参拝料:大人400円、中高生300円、小学生200円
URL:http://www.shoujiji.jp/

以上が代表的な名所の中でも私が個人的におススメしたい場所です。京都の桜は由緒あるものが多く、沢山の言われや言い伝えがあります。その物語を知らずして花見をすることほどもったいないことはありません。知るべくを知って仰ぎ見る桜は生きていることを誇りにすら感じることが出来ます。今月は機会がある限り京都の桜の奥深い魅力や京都以外で咲く桜との違いなどをお伝えしていこうと思いますのでお楽しみに!

image by: Shutterstock

 

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