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なぜ、もう一つの傾きマンションも全棟建て替えを決断したのか?

昨年、大きな問題となったいわゆる「傾きマンション」ですが、三井不動産レジデンシャルが販売した「パークシティLaLa横浜」に関しては正式に全棟建替え方針が決定したとの報道がありました。そこで気になるのは住友不動産が手掛けたもう1つの傾きマンションですが、無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』によれば、これまで一部建替え提案を譲らなかった住友サイドが突如建て替えに合意する姿勢を見せたとのこと。いったいなぜなのでしょうか。

2つの傾いたマンション全棟建て替えへ…

こんにちは! 廣田信子です。

住民からの相談があり、ブログにも書いた経緯があって、ずっと気になっていた横浜の傾いたマンション(三井不動産レジデンシャル)が、問題発覚から4か月で、2月27日に、正式に建替えの方針決定の総会決議がされたとニュースに。関係者の努力に敬意を表したいと思います。

昨年12月~今年1月の住民アンケートで約9割が全棟建替えに賛成したという結果を踏まえたもので、今後、管理組合と三井不動産レジデンシャルとで転居費用などの補償内容を盛り込んだ合意書を締結し、今年9月までには、区分所有法に基づく建替え決議を行い建替え組合を設立し、解体、建替えを実施、完成、入居は2020年秋から冬ごろになる予定だといいます。

そうか…異例の速さで進んだとしても、東京オリンピックの時は、まだ完成していないんですね。

三井側が示した条件が好条件だったことと管理組合の努力で、異例の速さでここまで来たのだと思いますが、4月の新年度を前に、お子さんがいらっしゃる家庭で、引っ越し先、学校や保育園・幼稚園の問題で、どれほどの心労と決断があったのかと思うと、どんな好条件を示そうと、多くの人の人生に与えた影響の大きさを思うと、あってはならないことだったと改めて思います。

子どもの学校問題等は待ったなしですから、子育て世代が多いこのマンションでは、老朽化による建替えと違って、早く方針を決めてどちらかに進まざるを得ないということもこのスピード合意の背景にあると感じました。

でも…絶対に今回の問題で、2人目、3人目の子供を持つのを躊躇した家庭が出たと思います。安心して暮らせる住環境が保障されなければ、絶対に少子化につながる…のですから。

全棟建替える必要があるか…という技術的な面からの指摘があっても、一部建替えでは、2020年に、新築となる棟と築10数年の棟が1つのマンションで混在し、資産価値に大きな差が出てしまうことになります。これでは、公平性が担保されなくなってしまいますので、合意形成は難しかったでしょう。

と思うほどに、横浜のもう1つの傾いたマンション(住友不動産)の行方が心配でした。こちらは、一部建替え提案を住友不動産が譲らなかったからです。

このいきさつは、詳しい現状を訴える方からのメールがありブログにも書きました。

もう1つの横浜・傾きマンションは今。住民から届いた悲痛な叫び

そうしたら、三井のマンションの総会決議の記事の翌日の新聞に、住友不動産の方のマンションでも全棟建替え提案があったとの記事が。その理由は、傾いた棟以外で基礎部分の鉄筋の切断が見つかったからということです。傾いていない棟だって安全とは言えないと頑張った管理組合の成果なのだと思います。

もちろん、もう1つの傾いたマンションでの三井側の対応と、後からの発覚にも関わらず合意形成に至った事実に住友不動産も決断せざるを得なかったという事情もあるでしょう。

とにかく2つのマンションとも一歩前進したということで、本当によかったと思いました。当事者の心労は計り知れないでしょうから。

まったく話は違いますが、何かと、建替え問題がニュースになります。福祉施設や公共施設を含めた再開発という枠組みなら、区分所有者の3分の2以上の賛成で建替えができるように緩和するという都市再生特別措置法改正案が閣議決定されたとニュースになり、また、高経年マンションで建替えしたい願望を刺激しています。

で、先日、かなり郊外で空室が増えていている築40年超の大型団地の方が、3分の2ならうちも建替えできるかもしれない、市に言って高齢者施設をひっぱってきて…長年役員やってきて、最後、建替えやってみたいんだよね…と、一度あきらめた建替えの夢をふくらませているのを聞いて複雑な気持ちに。

マンションの敷地の高度利用が地域全体の価値を生むような場所じゃないと、そもそもこの枠組みに入らないから、土地があまっている郊外では…なんて夢を壊すことはやんわりとしか言えないし…。

決議要件が下がるってことは、たくさんの反対者がいても理屈の上ではできてしまうということで、一部の人が現実的じゃない夢に突っ走ったら、内部の人間関係はどうなるのか…。

建替えに関しては、国の政策が発表になるたび管理組合が揺れて、本当に心配の種はつきません。

image by: Shutterstock.com

 

まんしょんオタクのマンションこぼれ話
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