2.単品アパレルが装飾過多になる理由
単品アパレルメーカーの製品は装飾過多になる傾向が強い。
その第一の理由は、変わったシルエットの製品は売れないので、べーシックなシルエットに集約されてしまうこと。
第二の理由は、素材の選択はコストに直結するため、小売価格が設定されると選べる素材の範囲も決まってしまうことだ。
シルエットと素材が決まってしまえば、差別化を図る要素は装飾的なデザインしか残らない。そのため、ディティールデザインの変化ばかりが強調されるのである。言い換えれば、店頭の商品はどれも同じシルエットで、同じような素材、ディティールだけが異なるということになる。
トータルアイテムを展開するブランドは、コーディネートにより差別化が可能であり、単品だけで差別化する必要はない。無用な装飾はコストを上げるだけと判断されるし、装飾過多のデザインはブランドイメージを下げることが多い。
結果的に、量販店向けの安物商品ほど、無駄な装飾が目立つ。無駄なファスナーやボタン、無駄な切り換えやデザイン線は安物であることの証明だ。
逆に高級ブランドは、高い原料を使った上質なテキスタイルをベーシックなデザインで表現する。無駄なデザインは必要なく、純粋にシルエットを追求することが可能で、それが差別化要因にもなっている。
高級ブランドのデザインは、微妙なシルエットの変化、テキスタイルやカラーの変化によってなされる。また、限定された顧客を対象としているため、ベーシックなデザインだけでなく、遊び心のある変わったデザインやディティールを選ぶこともできる。限定された顧客は、多くの人が着ないようなデザインを好むのである。
安物のデザインは、視覚的に判断しやすいプリント、刺繍、装飾物、切り換え等による変化が中心である。高級ブランドはリピート顧客を大切にしているため、耐久性や着心地が重視されるのである。
3.単品アパレルが目指すべき二つの戦略
単品アパレルのメリットは、生産設備が絞り込めることだ。メーカーとしてのアパレル企業であれば、単品の方が対応しやすい。
トータルアイテム展開では、一つの工場だけで対応することはできない。そのため、生産はOEMアパレルに委託することになり、アパレル企業は小売店の性格を強めていく。
単品アパレル企業は、メーカーとして生き残るのか、小売店の性格を強めながらブランド企業を目指すのかを選択しなければならない。
また、単品メーカーがブランド企業を目指す場合も、どうしたらソフトランディングできるかが問題になる。
ある意味でメーカー機能を弱めながら、小売り機能を強めていくには、微妙なバランス感覚が必要になる。
もう一つの課題は、現在はアパレル不況の時代であり、慢性的な供給過剰に陥っていることだ。その中で、新たなブランドを訴求するには、既存のアパレルとは異なるコンセプトが必要になる。








