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医学博士に聞く、猫の健康のためにどんなキャットフードがいいの?

最近ペットを買う人たちの間で広まりつつあるグレインフリー(穀物不使用)フード。『しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」』の著者で、医学博士・しんコロさんもグレインフリーのフードを愛猫にあげているとのことですが、猫に穀物をあげるのはNGなのでしょうか? また、ウェットフードとドライフードのどちらが良いのかについても迷いますよね。そんな質問にしんコロさんが答えてくださいました。

どんなキャットフードをあげるのが一番いいの?

Question

猫のフードについてなのですが、しんコロさんは以前からグレインフリーのウェットタイプだけをあげているということでしたが、「ウェットタイプだけだと歯に歯垢がたまりやすい」と言う意見もネット上で見ます。また、ウェットだとドライよりも保存剤が多く含まれていることもあるので我が家ではウェットとドライ両方あげています。噛むことも歯茎に良いかな、と思って。

私の住んでいる国ではグレインフリーのウェットは手に入りにくいのでたまに肉や魚を煮たものをウェットのかわりにあげています。そして、ウェットをあげた後にはGreeniesの歯磨きドライフードをあげています。ウチの猫達はとてもブラッシングによる歯磨きなどさせてくれないのでこうしていますが、しんころさんはこの「歯垢予防」についてはどのようにお考えですか?

また、グレインフリーに関してなのですが、「手作りごはん」で獣医師に推奨されているレシピや、評判の良い無添加自然ペット食にはオーツや玄米、雑穀、と言ったグレインも使用されていることがあります。野生の肉食獣も捕食した動物の胃からすでに食物繊維を分解された穀物を摂っている、ということから少量で消化しやすく柔らかく加工されていれば摂った方が良いのか、それとも完全グレインフリーが猫にとっては最良なのか、今悩んでいるところなので、もしよろしければご意見をお聞かせ下さい。

しんコロさんの回答

 「ウェットフードはドライよりも歯垢がつきやすい」というのはよく語られますが、実際はどちらを食べても歯垢はつきます。むしろドライフードの方が歯垢がつきやすいという意見の獣医もいます。確かに、実際に想像してみると、我々人間もクッキーのようなドライな食べものの方が、スープやおかゆといった水分の多い食べものよりも歯に食べカスがくっつきやすいですね。

また、「ウェットの方がドライよりも保存料が多い」というのも必ずしも正しくなくて、ウェットの場合は缶詰やパウチになっているので加熱処理をされた後に無菌状態密封することができます。従って保存料などを使う必要がほとんどないのです。一方でドライフードは開封してから消費するまでに時間がかかることが想定されているので、酸化防止剤などを添加することがあります。質問者さんがおっしゃるように、確かに噛むという行為は歯茎にも良いですし、噛む欲求を満たすことができるのでウェットとドライをうまく使い分けるのは良いと思います。歯磨きドライフードなどが市販されていますが、どれだけ効果があるかは疑問視する獣医も多いと思います。やはりベストなのは定期的に歯磨きをしたり歯石を除去してあげながら歯周病を予防することでしょう。

手作りごはんのレシピや一部の自然派キャットフードにも穀物が使用されていることはあります。確かに野生では捕食される動物の消化管内に植物や穀物が含まれていることがあるので、小麦やグルテンにアレルギーがない限りは少量を食べる分には問題はないでしょう。ただし、基本的にねこは穀物などから代謝に必要な栄養素やエネルギーを吸収・産生できないので、主食として穀物を与えることはねこの健康には良くありません。キャットフードメーカーによっては食物繊維としてオーツなどを加えているものもあると思いますが、栄養素の源として加えている訳ではないと思います。また、人間が食べたら健康的なイメージをキャットフードにも反映させているメーカーもあると思います。

結論としては、「穀物はアレルギーがなければ少量は大丈夫でも積極的に与える必要はない」と僕は考えています。そもそもグレインフリーが良いかどうかの議論が、ベースがトウモロコシや小麦のドライフードを与えるか、肉ベースのウェットフードを与えるかという、キャットフードとして大きな差があるものの比較から発しています。従って、少量の穀物をフードに入れるべきかどうかということに関しては、まだ医学的なエビデンスはまだ不足しているのが現状だと思います。ちなみにしおちゃんの場合は小麦にアレルギーがあるので、完全にグレインフリーにしています。

 image by: Shutterstock

 

しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」

著者:しんコロ
ねこブロガー/ダンスインストラクター/起業家/医学博士。免疫学の博士号(Ph.D.)をワシントン大学にて取得。言葉をしゃべる超有名ねこ「しおちゃん」の飼い主の『しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」』ではブログには書かないしおちゃんのエピソードやペットの健康を守るための最新情報を配信。
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