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まるで孔明の罠。習近平が「反日戦略」を方向転換してきたワケ

中国が今度は日本にすりよってきた!? 先日、3000人の日本人訪中団の交流式典で「熱烈歓迎」とも取れる演説を行った習近平国家主席。この「すりより」の意味するものは? 無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』著者で国際関係アナリストの北野幸伯さんはここに、中国の「日米分断戦略」の次なる作戦を見て取ったといいます。

中国は、なぜ日本にすりよりはじめた? どうする、日本

2010年9月の尖閣中国漁船衝突事件

2012年9月の尖閣国有化

これで、「戦後最悪」になってしまった日中関係。ところが、中国側が、日本に「すりよって」きました。

夕刊フジ5月25日。

「朋(とも)あり遠方より来る、また楽しからずや。3000人余りの日本各界の方々が遠路はるばるいらっしゃり、友好交流大会を開催する運びになった。われわれが大変喜びとするところだ」

 

習氏は23日夜、北京の人民大会堂で開かれた交流式典に突然姿を見せ、孔子の言葉を引用しながら笑顔であいさつした。

 

会場では二階氏とも面会し、安倍首相の親書を受け取り、「戦略的互恵関係を進めていけば、日中関係はいい結果になると期待している。安倍首相によろしく伝えてほしい」と語った。

これ、「中国はようやくわかってくれた!これで日中友好は進む!」と考えるのはナイーブすぎます。

個人で考えてみてください。

昨日まで、社内でも社外でもあなたの悪口をいいまくっていた男。彼が、突如豹変し、にっこり微笑んですりよってきたら? 普通は、「なんか裏があるんじゃないか?」と疑うでしょう?

そして、疑ってみるべきなのです。

>>次ページ 中国の本当の「目標」とは?

大国の言動は「戦略」にそっている

皆さん、人生に「戦略」ありますか? 「戦略」はなくても、少なくとも「目標」はありますか? その「目標」を達成する「目的」ははっきりしていますか?

ひょっとしたら、あなたには、「目標」も「目的」も「計画」もないかもしれません。しかし、あなたの「会社」には「目標」があるでしょう? その目標を達成するための「計画」もあるでしょう? なかったら、そうとうヤバいですね。

国家だって同じです。

自分の国を「こうしたい」という目標があって、計画をたて、それにむかって前進していく(日本は、しばしば「行き当たりばったり」なので、他国の行動が理解できない)。

では、中国の目標ってなに?

まずは、日本に勝って「アジアの覇権国」になることでしょう。

こちらをごらんください。

習近平主席:太平洋には米中両大国を受け入れる十分な空間 Bloomberg 5月18日(月)10時54分配信

 

(ブルームバーグ):中国の習近平国家主席は17日、ケリー米国務長官に対し、米中双方は両国の関係に影響しない形で意見の相違を管理する必要があると述べた。

 

米国は中国による南シナ海への進出について自制を促している。

 

国営新華社通信などによれば、習国家主席は人民大会堂でケリー国務長官と会談し、両国の関係は「全体的に安定している」と評価。

 

「両国の新たな関係は初期の成果を得ている」と述べた。

 

さらに、「広い太平洋は中国と米国の両国を受け入れる十分な空間がある」とも語った。

これって、「中国は太平洋の東半分を支配する。アメリカ西半分を支配するってことでどう?」といっているように感じますね?

歴史をみれば、

など、ナンバー1とナンバー2は常に覇権争いをしてきました。だから、中国だけが例外になって、「覇権争いをしない」と考えるのは、「平和ボケ」なのです。

まず、「アジアの覇権」を奪い、そしてアメリカを蹴落として「世界の覇権を狙う」ということでしょう。

アメリカのリベラル派は、「いや、中国はアメリカがつくった世界秩序の中で台頭したいだけ。アメリカの脅威にはならない」といっていた。しかし、「AIIB」を見て、中国は明らかに、「アメリカとは別の世界秩序をつくろうとしている」ことに気がついた。

それで、アメリカのリベラルも、慌ててるのです。

>>次ページ 中国の最重要戦略とは?

中国、最重要戦略は、「日米分断」

では、どうやって、アジアの覇権、ついで世界の覇権を得るのか?

これ、簡単で、まず日本を叩き潰す

日米を分断し、日本が米国債を買わなくなれば、アメリカをつぶすことも容易になるでしょう。それで、2012年11月、中国はモスクワで、ロシアと韓国に「反日統一戦線構築」を提案した。

毎回書いていますが、その骨子は、

  1. 中国、ロシア、韓国で、【反日統一戦線】をつくろう!
  2. 日本には、北方4島、竹島、そして【沖縄】の領有権もない(つまり、沖縄は【中国領】である)
  3. 【アメリカ】を反日統一戦線に引き込もう

どれもすごいですが、特に3番目は重要です。

この戦略に沿って、中国は、全世界、特にアメリカで大々的に「反日プロパガンダ」を展開してきた。安倍総理訪米前に、アメリカ政府から、「議会演説では中韓にきっちり謝罪しろ!」と圧力がかかるほど、プロパガンダは浸透していた。

ところが、3月に(日本以外の親米国が全部アメリカを裏切った)「AIIB事件」が起こった。これで、アメリカは、「わが国最大の脅威は、ロシアではなく中国である」と理解した。そこに安倍総理がやってきて、「希望の同盟」演説をし、日米関係は非常に良好になった。

これで、「反日プロパガンダ」による「日米分断工作」はいったん挫折したのです。

しかし、「戦略」は不変

いままで、アメリカに日本の悪口をいいつづけることで、日米分断をはかってきた。

それがうまくいかなかったらどうするか? 別の方法を考えればいい。

たとえば、日中関係を改善する。

するとどうなります? 実を言うと、結果は同じ「日米分断」になるのです。

たとえば、鳩山ー小沢政権のとき、日中関係はとてもよかった。それで、日米関係はどうなりました? そう、「戦後最悪」になった。

「日本の悪口を、アメリカにいいつづける」

「日本との関係をよくする」

この2つは全然違うように見えますが、「戦略」からみると、「まったく同じこと」なのです。何が違うかというと、戦略を達成するための【作戦】が違う。

>>次ページ 日本が取るべき「対抗策」とは?

では、日本はどうするべきか?

日中関係については最近、アメリカに利用されないよう、「中国を挑発するな」という記事を書きました。 そしたら、今度は中国がすりよってきた。日本はどうすればいいのでしょうか?

これは簡単で、アメリカに、「中国がこんなこといってきましたが、どうしたらいいでしょうか?」ときけばいいのです。

「やはり、北野は『従米主義者だ!!!』」

こんな意見も出ることでしょう。

しかし、私たちの目標は、あくまで「アメリカを中心とする中国包囲網の形成」でしょう? 日本としては、アメリカに利用されて、「日本 対 中国」の対立構造になりたくない。

そのためには、「いつもアメリカが主人公」でいてもらったほうがいいのです。これは日本が主体的に、「アメリカを主人公にする」のですから、まったく「従米」ではありません。

日米関係をさらに「盤石」にするために

それに、日米関係は、AIIB事件と安倍総理の米議会演説でよくなったとはいえ、「強固」「盤石」というには、ほど遠い状況です。

日本は、わずか2年半前まで「反米親中」民主党が政権にあった。

そして、安倍総理も、4月末まで、「右翼」「軍国主義者」「歴史修正主義者」と思われていた。

もし日本が、アメリカを味方につけて中国に圧勝しようとすれば、「日米関係をさらに強化する」言動をとっていく必要があります。

そのために必要なのは、「一貫性」です。

台湾は、1年365日、しかも何十年も「日本が好きです!」といいつづけている。つまり「一貫性」がある。だから、日本人は台湾が好きです。

しかし、中国は、「反日統一戦線をつくろう!」といったり、「仲良くしよう」といったり、全然一貫性がない。だから、信用できない。

日本も、少なくとも中国が沖縄侵略をあきらめるまでは、一貫して「アメリカが好きです」といいつづけなければなりません。安倍総理も、毎日オバマさんに電話して、「報連相」するぐらいでちょうどいいのです。

image by:Wikimedia Commons

『ロシア政治経済ジャーナル』
著者/北野幸伯
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