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米国の財政赤字拡大より、日本の財政赤字がヤバい理由

米国の財政赤字が6年連続の縮小傾向から反転し、拡大傾向にあると報道されています。同じく巨額の財政赤字に苦しむ日本ですが、『毎日5分! 経済英語NEWS!』発行者の八木翼さん曰く、両国の財政赤字は「その質が違う」とのこと。米国の経済学者クルーグマンの著書を例に、日本の財政赤字が米国以上にヤバいのはなぜか、その理由について解説しています。

米財政赤字拡大はヤバくなくて日本の財政赤字はヤバい理由

米の財政赤字が拡大していますね。

日本の財政赤字も拡大していますが、個人的にはアメリカの財政赤字と日本の財政赤字は質が違うと思っています。

まずはニュースを見てみましょう。

(U.S. Budget Deficit Expands In First Half of Fiscal Year)
(米、年度の財政赤字は上半期拡大)

(1)
The U.S. budget deficit expanded during the first half of the fiscal year as spending rose faster than receipts, marking a turnaround after six years of an improving fiscal picture.
(米財政赤字は、収益よりも支出が上回り、上半期に拡大し、6年間の財政の改善の転換点を記録した。)

(2)
The government ran a $461.04 billion deficit from October to March, the Treasury said Tuesday in its monthly report.

(政府は、10月から3月までで4610億ドルの赤字を出したと、財務省は火曜に月間報告で述べた。)

That was up almost 5% from the first half of the 2015 fiscal year, which runs from October through September.
(これは、10月から9月まで運営した2015年度の上半期から約5%の増加した。)

(3)
The U.S. budget deficit exploded to more than $1.4 trillion, about 9.8% of gross domestic product, in 2009 as the U.S. shuddered through the recession.
(米財政赤字は、米が不景気の影響で震える中、2009年にGDP比の9.8%となる、1.4兆ドル拡大した。)

(4)
The figure has fallen steadily since, reaching it is lowest level since 2007 last year.
(この数字は、昨年、2007年以来の最低水準まで達するまで、安定して落ち続けてきた。)

At 2.5% of gross domestic product, the deficit was below the 2.8% average over the prior 50 years.
(国内総生産が2.5%で、赤字は過去50年の平均で、2.8%を下回っていた。)

(5)
Now, it is set to start expanding again.
(今、再び拡大傾向にある。)

(6)
If existing laws remain unchanged, the deficit will continue to rise for the next decade as spending-notably on Social Security, Medicare and interest-outpaces revenue growth.
(既存の法律が変わらなければ、特に、社会保障費、医療費、金利が、収益成長を凌ぐため、赤字は今後10年間伸び続けるだろう。)

(一部引用 REUTERS:By JEFFREY SPARSHOTT
Updated April 12, 2016 2:10 p.m. ET

さて、最近クルーグマンの書いた「さっさと不況を終わらせろ」と言う本を再び読んでいるのですが、これに面白い話が載っていたので、今の日本の状況を考えながら紹介したいと思います。

これは、クルーグマンが考えたわけではなくて1997年にジョーン&リチャード・スウィニーが考えた話です。

金融理論と大キャピトルヒル子守共同組合の危機」という題名です。

これは、議会職員から成る若いカップル150組の話で、ベビーシッター代を節約するために、職員の間で、交代で子どもの面倒を見ようと言うものでした。

そして、共同組合はクーポンの運営で成り立つものとしました。

共同組合に参加した夫婦はまず20枚のクーポンをもらいます。

そして、1枚のクーポンで子守り30分を行ってもらえます。

クーポンを使った夫婦は、子守りをしてくれた夫婦に、クーポンを渡し、今度は子守りをした夫婦が、クーポンを使えます。

150組とかなりの数がいるので、かなりの確率で、好きな時にクーポンを使えます。

しかし、このシステムはやがて困ったことになりました。

多くの夫婦たちは、
「お葬式や、結婚式など、急に用事ができて必要な時に備えて、クーポンを貯めておこう」
と考えだします。

すると、流通するクーポンの数が、激減してしまったのです。

何故こんなことになってしまったのでしょうか?

夫婦たちは、万が一の事態(お葬式や結婚)のために、クーポンを貯めるようになりました。

すると、手持ちのクーポンが安心できる水準まで増えるまでは、外出しなくなってしまったのです。

しかし、外出する人が減ってしまったため、クーポンを得る機会もなくなってしまったのです。

すると、クーポンがない人たちは、ますます外出したがらなくなり、そして、子守りの量自体が激減してしまいました。

これは、いわゆる不況の状態です。

ではどうやって解決したのか

答え:全ての人にクーポンを20枚プレゼントした。

これにより、手持ちのクーポンが増えたため、安心してクーポンが使われるようになり、クーポンを使う機会も、クーポンを得る機会も増えたのです。

さて、この文章、クーポンの部分を全て、「お金に置き換えて読んでみてください。

日本はまさにこの状態だと言えそうです。

もちろん、実際には全ての人にお金をプレゼントしていません。

これは、金利を引き下げると言う形で、借金(ローン)をしやすいように、中央銀行が金利をコントロールしてきました。

今、日本がやっている大規模金融緩和は基本的には「クーポンをみんなにあげること目的です。

そして、なんとなく、景気が回復してきたところでした。

しかしながら、消費税増税でその芽は摘み取られてしまったのです。

当然、夫婦たちは、またクーポンを貯め始めます。

全く逆に働く政策を安倍政権は同時にやっているんですね。

「何がしたいの?」と、クルーグマンに笑われても仕方ありませんね。

ちなみに、クーポンを新しく発行したと言うことは、クーポンの価値が下がったとも言えます。

サービスに対して、流通するクーポンの数が増えてしまったわけですから、この例でいえば、予約がとりにくくなるなどの弊害が出るわけです。

つまり、クーポンを貯めていた人は損をしたと言えます。

逆に、もし、クーポンを借金するという制度があったのであれば、クーポンを借金していた人は得したはずです。

本質的なクーポンの価値が下がったので。

これがインフレです。

逆に、クーポンの価値が上がり続けるのがデフレですね。

米国の財政赤字は、借金クーポンのように、インフレで薄まりますが、日本の場合は過去の財政赤字が濃くなっていきます。。。

image by: Shutterstock.com

 

『毎日5分! 経済英語NEWS!』
著者/八木翼
TOEIC235点だった私が900点を超えるまでの勉強の過程で感じた、「英語のニュースを解説してくれる教材があったらいいのに」という思いを形にしました。全ての英文に和訳、文法解析がついています。
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