安倍政権、熊本地震で窮地に。大失敗の初動で見えた総理の悪い兆候

 

いずれにせよダブル選挙は消えた?

会期延長する場合、ダブル選挙を打つ余地を残すとすれば1週間か2週間である。参議院の改選議員の任期が7月25日までなので、それ以前に参院選を行わなければならないことから、投票日は7月17日か24日に限定される。サミット後にTPPを強行採決して、さらに大型補正予算を通して一気にダブルに突入するというのは、安倍好みの強気策ではある。

しかし第4に、余震が長引いてさらに被害が増えることは確実であり、それが鎮まったとしても、数十万人が苦難の避難生活を続け、住居や道路の復旧もままならないような状況を尻目に、熊本県民ばかりでなく日本国民にとって何の必要性も必然性もない、単に安倍のお遊びにすぎないダブル選挙を強行すれば、「不謹慎呼ばわりされ糾弾されることは目に見えている。

しかも、仮に自民党が北海道で負けて野党が勢いづいて、参院だけでなく衆院でも257小選挙区で選挙協力に踏み込んだ場合、「週刊現代」4月23日号の予測では、自民は65議席を失う大敗で単独過半数さえ割り込んで225議席となるのに対して、民進は74議席を増やして169議席に達する。

もちろん、衆院選での選挙協力は簡単ではなく、民進党内の保守派や連合に根強い抵抗がある。しかし、小沢一郎が志位和夫=共産党委員長との対談(「世界」別冊4月1日号)で言うように、「ともかく子どもでもわかる話です。野党がみんなで力を合わせれば、1人区は勝ちますよ。衆議院の小選挙区も1人区ですから、これも野党が力を合わせたら基本的にとれます。そうしたらいっぺんにひっくり返せる。野党さえ一致協力し、大同団結して選挙に当たることさえできれば、ダブル選挙なんかいつでもどうぞという話です。……この期に及んで共産党が嫌だとか云々と言っている人間は、結局、『共産党と一緒にやるよりは安倍のほうがいい』ということではないか」。

同じ別冊への寄稿で、憲法学者の重鎮=小林節も、確かに安倍は3回の国政選挙で勝ったが「その実態は、選挙制度に助けられて、有権者の20%、投票した者の40%台の得票に支えられて圧倒的多数の議席を獲得した結果にすぎない。だから、野党が協力して統一候補を立てれば、50%に近い得票で政権交代を実現することは十分に可能である」と言い切っている。これが、「15年安保闘争」以後の世間常識だと言って差し支えない。民進党の保守派や連合の反共派がこの常識に従えば、安倍は到底、ダブルに打って出ることはできないし、熊本の後ではなおさらできなくなったのである。

小沢が言うとおり、安保法制は廃止する、今の状況での消費増税には反対する、そしてできればもう1つ原発再稼働に反対するという3点で衆院選でも野党が協力態勢を作り、消費増税ができなくなったというのはアベノミクスが失敗したという意味なのだから内閣総辞職せよしないなら選挙で政権交代してもらう、と迫ればいいのである。本当に、子どもでもわかる話である。

image by: 首相官邸

 

高野孟のTHE JOURNAL』より一部抜粋
著者/高野孟(ジャーナリスト)
早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。
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