安倍政権、熊本地震で窮地に。大失敗の初動で見えた総理の悪い兆候

 

試される安倍の指揮官ぶり

この深刻な事態に直面して、安倍が組み立てていた政権運営の構想もまた大揺れに揺れている。まず北海道衆院5区補選を勝って参院選1人区での野党協力態勢に水を差し、あわよくばダブル選挙に持ち込んで衆参両方で与党3分の2議席を確保しようという内政上の野望も、4月28日から欧州各国を歴訪し、帰りにロシアに寄ってプーチン大統領との日露首脳会談で北方領土解決の糸口を掴んで5月26日からの伊勢志摩サミットを盛り上げようという外交上の演出も、すべて狂ってしまう可能性がある。

何よりも第1に、3・11の際の菅直人首相の対応ぶりを、あることないこと取り上げてさんざん嘲笑っていた安倍が、今回は自らの指揮官ぶりを問われることになる。

安倍は15日に官邸で開いた非常災害対策本部の会合で、16日に自ら現地入りして「被害状況を視察し、益城町を中心に被災者の声を直接聞いて対策に生かしたい」と述べ、また「16日は天候悪化が予想されるので、屋外に避難している被災者を15日中に安全な屋内避難所に収容するように」と指示した。ところが、この指示を河野太郎防災担当相を通じて伝えられた蒲島郁夫熊本県知事は「避難所が足りなくて皆さんが外に出ているわけではない。余震が怖くて部屋の中にいられないんだ。現場の気持ちが分かっていない」と不快感を示した。

これが一因となって16日の安倍現地入りは中止となったわけで、最初の意気揚々たる指示でコケるという、これは悪い兆候である。

第2に、17日に予定されていた北海道衆院5区の選挙応援も当然中止となった。自分が乗り込めば大接戦と言われている状況を変えられると本人は張り切っていたというのだが、それどころではなくなった。もっとも周辺や官邸では、直近の北海道新聞や自民党自身による調査で数ポイント程度劣勢にあることが明らかになったので、「首相が乗り込んでおいて負けたりするとまずいなあ」という迷いも生まれていて、むしろ渡りに舟だったという説もある。いずれにせよ、大地震は北海道5区の自民党にはマイナスに作用する。

第3に、TPP協定と関連法案の今国会通過は、会期延長しない限り、ますます難しくなった。黒塗り文書や西川公也TPP特別委員長の「暴露本」問題などで紛糾していた同委員会は、ようやく15日再開したが、冒頭で安倍が熊本の被災状況などを説明しただけで事実上、流会した。未だに実質的な審議に入ることが出来ないでいる衆院で4月中に通過させることができなければ、6月1日の会期末までに参院を通過させることは難しい。

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