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安倍内閣、支持率低下。総理のジレンマを解決するのはあの女性?

報道各社が行った世論調査で支持率の低下が見られる安倍内閣。無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者で国際関係アナリストの北野幸伯さんはこの原因を「安倍総理が安保関連法案を強引に成立させようとしているところにある」と分析した上で、その解決方法を記しています。

安倍内閣の危機

まず、安倍内閣の現状について知っておきましょう。

支持率が落ちています。

安倍晋三内閣の支持率は46.1%で、前回調査(5月23、24両日実施)より7.6ポイント低下。

 

集団的自衛権の行使を限定容認する憲法解釈変更を閣議決定した平成26年7月(45.6%)に次いで24年12月の第2次安倍内閣発足後、2番目に低い支持率となった。

(2015.6.30 産経新聞)

1か月ちょっとで7.6%低下。わからないものですね。つい最近、アメリカで「歴史的演説」を成功させたばかりですが…。

支持率が下がっている理由は、なんでしょうか?

安保関連法案に関し、衆院憲法審査会で参考人の憲法学者3人が「憲法違反」と表明したことや、自民党若手議員の勉強会で法案に批判的な報道機関に圧力をかけるような発言が相次いだことが影響したようだ。

(同上)

なるほど。「安保関連法がらみ」

国民は、安倍総理が「安保関連法案を今国会で成立させようとしている」ことについて、「必要性がよくわからない」と考えているのでしょう。

成立させるためには、「報道機関に圧力をかけてでも」など、手法が「強引」「独裁的」と警戒されている(安倍総理は、「報道機関への圧力」を否定しています)。

調査では、安保関連法案を今国会で成立させることについて、賛成が31.7%だったのに対し、反対は58.9%だった。

(同上)

民意は、「早急な成立」「強引な成立」反対している。しかし、もっと長期で見れば、話は変わってきます。

産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が27、28両日に実施した合同世論調査によると、今国会で審議中の安全保障関連法案に関し、「必要」とする回答は49.0%で「必要ない」の43.8%を上回った。

(同上)

長期的視点で見ると、約半数(49%)が、「安保関連法」は「必要」と考えている。要するに、国民が反対しているのは、「急いで」「強引」に成立させること。つまり、安倍内閣の「手法に問題がある」と考えられている。

ところで、安倍総理は、なぜそんなに「今国会での成立」にこだわっているのでしょうか?

>>次ページ 安倍総理が焦る理由とは?

総理、「自縄自縛」

4月29日の「希望の同盟演説」は、とてもすばらしく、まさに「歴史的」でした。しかし、この演説のワンフレーズが、総理の「大きなストレス」の原因になっています。なんでしょうか? 演説から引用します。

日本はいま、安保法制の充実に取り組んでいます。

 

実現のあかつき、日本は、危機の程度に応じ、切れ目のない対応が、はるかによくできるようになります。

 

この法整備によって、自衛隊と米軍の協力関係は強化され、日米同盟は、より一層堅固になります。

 

それは地域の平和のため、確かな抑止力をもたらすでしょう。

 

戦後、初めての大改革です。

 

この夏までに、成就させます。

この夏までに、成就させます」。

これは、アメリカへの約束です。総理自らがした約束です。誰にも頼まれなかったのに、自ら約束してしまった。だから、「今国会で成立させなければならない!」とあせる。あせるから、国民への説明とか、野党への対応がイイカゲンになる。野党や国民は、「手法が独裁的だ!」と怒る。

とまあ、こういう悪循環。

要するに、「約束」なんかしなければよかったのですね。

>>次ページ アメリカとの約束を破った政治家に待つものとは?

総理のジレンマ

ところで、安倍総理がアメリカとの約束を破る、つまり「安保関連法案を今国会で成立させることができなかった」らどうなるのでしょうか?

歴史は、

「アメリカのいうことを聞いた総理の内閣は『長期』になり、アメリカに逆らった総理の内閣は、『短期』になること」

を教えています。

外務省国際情報局局長・孫崎 享さんの著書「アメリカに潰された政治家たち」は、こんな印象深いフレーズからはじまります。

皆さんは、「日本の総理大臣」は誰が決めているのか、ご存知でしょうか?

「アメリカに潰された政治家たち」 8p)

国民の与り知らぬところで何かが起き、いつのまにか総理の首がすげ替えられることは日本ではよくあります。

 

しかも、政権が代わるたびに、日本におけるアメリカのプレゼンスが増大しているのです。(中略)

 

そして、そのときに失脚した政治家は、おしなべてアメリカを激怒させる「虎の尾」を踏んでいました。

(同上 10p)

孫崎さんは、要するに「日本の総理大臣を決めているのはアメリカだ!」と主張している。これ、市井の「陰謀論者」ではなく、元外務省国際情報局局長の言葉であることが重要です。興味がある方は、是非ご一読ください。

安倍総理は、「アメリカとの約束をはたせなければ、『お払い箱になるかも』」と恐れているのではないでしょうか?

つまり、安倍総理のジレンマはこうです。

  1. アメリカとの約束を果たさなければ「首」になるかもしれない
  2. しかし、民意を無視して強行採決すれば、支持率がさらに下がり政権崩壊の危機につながるかもしれない

「強行採決しなければ」アメリカのパワーで政権が崩壊するかもしれない。

「強行採決すれば」民意で、政権が崩壊するかもしれない。

「どっちにいっても政権崩壊??」

のこる道は、国民に「安保関連法の重要性」を納得してもらうこと。

ところが、みんなあせっているので、「報道機関に圧力をかけて」「憲法学者が何いっても関係ない」などなど、むしろ「国民の信頼を失う方向」にむかっている。

安倍総理は、この危機をどう超えることができるのでしょうか?

>>次ページ ピンチを乗り越えるためには?

安倍─ケネディ会談シミュレーション

要するに、「約束を守れなくても『続投』」ということで、アメリカの了解をとりつければいいのです。

どうやって?

たとえば、総理は、ケネディさんを食事に誘います。

ケネディ「最近、どうですか?」

総理「安保関連法案で大変です」

ケネディ「今国会で成立できそうですか?」

総理「……強行採決も可能ですが、それをやると、支持率が急落して政権崩壊につながりかねません。国民は、この法案の意義を十分理解していないのです。」

ケネディ「こんなこと聞くのは失礼かと思いますが。政権が崩壊したら、次は誰が総理になるのかしら?」

安倍二階俊博総務会長が最有力候補といわれています」

ケネディ「……3,000人を率いて最近訪中された方ね」

安倍「二階さんは、『自民党の小沢一郎』と呼ばれています。オフレコでお願いしますよ!」

ケネディ「…小沢さんて、あの『私は、人民解放軍の野戦軍司令官です!』と宣言された方ね。そんな人が、総理になったら、日米関係はメチャクチャになるわねえ」

安倍「実際、今自分が去ったら、親中派が政権を乗っ取って、日米同盟そのものが破壊される可能性があります。鳩山さん、小沢さん時代の悪夢が再現されます」

ケネディ「・・・・それは困るわね。では、安倍さんはこれからどうしたいの?」

安倍「これからがんばって『安保関連法案』の国民理解が深まるよう努力します。しかし、それでも法案への支持が上がらなかったら、今国会での成立ではなく、もう少し時間がほしいのです。強行採決をすれば、私は『独裁者』『軍国主義者』のレッテルをはられ政権は崩壊します。そうなれば、親中派・二階さんが総理になり、日米関係は大変なことになりますから。」

ケネディ「…わかりました。大統領と話してみるわ。『親中派の勢力が増していて安倍さんがピンチに陥っている。安倍さんが去ったら親中派内閣が誕生する可能性が高いから、少し時間をください』と。そういうことよね?」

安倍「トラスト ミー」

ケネディ「……そのフレーズは、縁起が悪いわ。でも私は安倍さんを信頼しているから、がんばってくださいね!」

>>次ページ アメリカに「安倍続投のほうがマシ」と思わせられれば…

安倍総理、アメリカ、国民によい解決策

この会話はなんだったのでしょうか?

つまり、「今年の夏に成立させる」というアメリカとの約束を破っても『安倍続投の方がマシ』ということをアメリカに納得してもらう。

そのために、「親中派の二階さんが力を増している」という「事実」を伝えるのです。アメリカは、小鳩政権の「悪夢再現」を恐れるでしょうから、「今国会でダメでも仕方ない。それでも安倍続投の方がマシ」と考えることでしょう。

すると、どうなるか?

安倍総理は、あせって、急いで、無理して、独裁的手法で、報道機関に圧力をかけて「安保関連法」成立をする必要がなくなります。

時間を得た安倍内閣は、じっくり時間をかけて「安保関連法案」の重要性を説明したらいい(実際、「安保関連法案」を成立させようという時期に、中国との関係改善に乗り出したのは、軽率でした。国民が中国の脅威を感じなければ、「安保理関連法」の意義も理解できないでしょう)。

さきほどデータをあげましたが、長期的にみれば49%が「安保関連法=必要」と考えている。ですから、時間をかければ、過半数の理解を得ることは、それほど難しいことではないでしょう。

国民は時間を与えられ、じっくりこの問題を考えることができます。それで、「安倍は独裁者、軍国主義者だ」などという批判もなくなるでしょう。

以上、「安倍総理が現在の危機を克服する方法」でした。

「役に立ちそうだ」と思われた方は、ぜひ安倍総理にお伝えください。

image by:Wikipedia

『ロシア政治経済ジャーナル』
著者/北野幸伯
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アメリカに潰された政治家たち

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