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フィリピン「暴言」大統領に忍び寄る、中国の黒い影

その過激な発言から「フィリピン版トランプ氏」と言われたドゥテルテ新大統領。中国と領有権を争うスカボロー礁についても、「自ら出向いて国旗を立てる」と言い放ち注目されましたが、メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』によると氏は実は親中、そして中国も彼の大統領就任を歓迎しているとしています。さらに文中、これまで親中的な態度を取り「不幸」に見舞われた国々を挙げ、ドゥテルテ氏も「中国に近づくとろくな目に合わないことを早く学ぶべき」と諫言しています。

【フィリピン】華人から支持を集めるフィリピン新大統領の危うさ

比大統領選ドゥテルテ氏当選 南シナ海の対中政策注目

フィリピンのアキノ政権の任期満了により新大統領が選挙で決定しました。過激な発言で人気を集めるダバオ市長のロドリゴ・ドゥテルテ氏(71)です。

この人物は、庶民派を売りにしていますが、彼自身は父が州知事で法律家、母は教師という知的エリート階層の出身です。ダバオ地検の検事を10年勤め、父の後を継いで政界入りし、ダバオ市長に7期当選。途中で下院議員選挙に立候補し当選しているので、中央政界での実績もあります。そして、アキノ氏もそうでしたが、ドゥテルテ氏には華人の血が流れています。母方の祖母が華人だったそうです。

知的エリート階層出身のわりには口が悪く、「犯罪者は皆殺しにする」といった過激発言を繰り返すことで、庶民の不満を吸い上げ、ついには大統領に選出されてしまったのです。着実に政治的手腕を発揮して国内問題や外交問題に取り組んでいたアキノ政権と比べると、どうしても泥臭く素人っぽく見えるのは、彼に外交経験がないからかもしれません

そもそもフィリピンの華人とは、もともと苦力出身の移民は少なく、台湾からの商業移民がほとんどでした。

その名残で今でもフィリピンでは繁体字が使われています。しかし、マルコス政権が、台湾と断交し中国と国交を結んだことで移民の流れが変わりました。マルコス政権は、中国からの移民にもフィリピン人と同等の国民待遇を与える法律を制定するなど、媚中に走っていたのです。

そのような経緯を持ったフィリピンの華人社会は、当然ながら親中政権を望んでいます。その点、アキノ政権は中国に冷たく、南シナ海の領有問題においても、日米をはじめとする国際社会と手を組み、中国とは対決する姿勢を見せていました。

一方のドゥテルテ氏は、中国と領有権を争っているスカボロー礁について、「水上スキーで行って、国旗を立ててくる」などと発言している一方で、中国とは対話を持って問題解決に当たりたいとも言っており、発言の端々には親中の姿勢が明らかです。

中国がインフラ整備などで経済支援を行えば、領有権問題は棚上げするとも発言しており、内実は中国の支援に大いに期待していて、領有問題には目をつぶっても構わないと思っているだろうというのが専らの下馬評です。もちろん、フィリピンの華人社会だけでなく中国政府もこの新大統領の登場を大歓迎しています。

フィリピン次期大統領ドゥテルテ氏、意外に深い華人とのつながり

アメリカが、南シナ海問題でこれまで同様にフィリピンとの連携を深めたいと牽制する一方で、中国外務省の陸慷報道官は、「われわれは、フィリピンの新政権がわれわれと同じほうを向いて立場の違いを適切に処理するよう望む」と述べ、親中的態度を期待しています。

ドゥテルテ氏は、中国の老獪な手腕をまだ知らないのでしょう。インドネシアが中国に鉄道整備を発注してひどい目に遭っていることを知らないのでしょうか。

中国ようやく5キロ区間だけ建設許可 受注のインドネシア高速鉄道 残る区間なお買収めど立たず

インドで日本が中国を破って新幹線事業を受注した際、インドのネットユーザーたちからは「中国の新幹線はいらない」との声が高かったことを知らないのでしょうか。

インド人の反応「新幹線は歓迎だが、中国高速鉄道は要らない」=中国報道

中国への経済依存が高まれば、南シナ海における中国の実効支配を牽制したり、対抗措置を取ることは難しくなります。現在、フィリピンは中国の南シナ海での横暴をオランダ・ハーグの仲裁裁判所に申し立てしていますが、中国側はこれに反発しています。新大統領の誕生で、この申し立てが取り下げられることにならないか心配です。

中国、フィリピンは条約を「乱用」と非難 仲裁手続き「無効」を再び主張

すでにフィリピン政府は今年の3月、アメリカ政府との間で、フィリピンの空軍基地5カ所を米軍拠点とすることで合意していますが、これが骨抜きになる可能性もあります。加えて、南シナ海問題で進展しつつあったベトナムとの共闘関係も、今後は微妙になってくるかもしれません。そうなると、南シナ海をめぐる各国の安全保障体制に大きな変化をもたらすことになりかねません。

最近の中国は、習近平が言論統制を強めたり個人崇拝を煽ったりしていることから文革の再来とまで言われ、経済は下降し、政治は行き詰まる危険な状況です。国内ではアイドルグループに習近平を称える歌を歌わせ国内での波紋を呼んでいます。

中国で「文化大革命」再来とささやかれる背景を取材しました

今月12日に内閣総辞職した台湾の馬英九総統と習近平には、権力の確立が未完成で敵が多いなど、多くの共通点がありますが、彼らの政治環境は大きく違います。少なくとも台湾は民主主義社会であり、選挙で民意を問うシステムがありますが、中国は長い間独裁専制社会であり、民意よりも天意が優先されています。

昔は天意を司っていたのは皇帝でしたが、今は共産党の国家指導者つまり習近平です。そんな時代錯誤な社会にあるからこそ、毛沢東主義に回帰したいなどと勘違いしてしまうのです。

これまで親中的な態度を取った国はろくな目にあっていません。韓国は市場を中国に奪われると同時に対中輸出も激減、オーストラリアは中国人移民で溢れ、資源の対中輸出も急ブレーキです。BRICSの一角であるブラジルも資源輸出に大ダメージを受け、おまけに大統領は汚職疑惑で弾劾裁判が行われることになり、大統領の職務も停止となりました。中国に早くから進出していたドイツなどは、VWが危機的状況となり、ドイツ銀行は経営危機に陥っています。

ドゥテルテ氏も中国と近づくとろくな目に合わないということを、早く学んでいくべきだと思います。

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黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』より一部抜粋

著者/黄文雄
台湾出身の評論家・黄文雄が、歪められた日本の歴史を正し、中国・韓国・台湾などアジアの最新情報を解説。歴史を見る目が変われば、いま日本周辺で何が起きているかがわかる!
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